第二新卒なら未経験の転職でも問題ない?
即戦力じゃないから教育は新卒と同様?
ポテンシャル採用には、入社後の教育育成が不可欠です。第二新卒で就職した場合、即戦力を見込まれた採用ではないのだから、新卒と同様の教育が受けられると考えてよいのでしょうか。
次に示す図表は、独立行政法人労働政策研究・研修機構『若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ』が明らかにした、新卒者と既卒者の受けた教育訓練の違いです。新卒者の方が既卒者より多様な教育訓練を受けていること、特に業務をせず研修に専念する「Off the Job Training」の機会は新卒者が圧倒的に多く、既卒者では即戦力扱いや指示があいまいなまま放置される割合が高まることが分かります。
<入職3ヶ月間に受けた教育訓練>
(参照元:独立行政法人労働政策研究・研修機構(2019年)調査シリーズNo.191『若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ(第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)』第4章、P74 図表3-6② )
大企業の方が転職後の研修が充実している?
大企業に比べ中途採用の多い中小企業では、社員育成の手間をあまりかけず即戦力人材を求めるようなイメージがあります。実際のところはどうなのでしょうか。独立行政法人労働政策研究・研修機構『中小企業における採用と定着』は、中小企業における中途採用の実態を調査した研究です。中途採用の方針と採用後の能力開発に注目した分析からは、次のようなことが分かりました。
- 調査対象とした企業の1/4がポテンシャルを重視した採用を行っており、5割強が採用後の能力開発責任は企業側にあると考えている
- 即戦力を求めるか、ポテンシャル重視で社内育成を行うかといった傾向には、企業規模や歴史の古さなどとの関係はない
- 自分の勤務先を「新採用に注力しており社員の能力開発も長期的視野で行っている」と認識している従業員の方が、会社との関係もポジティブに捉えている
参考
独立行政法人労働政策研究・研修機構(2017年)労働政策研究報告書No.195『中小企業における採用と定着』 第3章
おわりに:企業も採用もこれから多様化していく
労働政策研究・研修機構と厚生労働省が2017年に開催した検討会では、働く人と企業の双方のニーズに応え、多様な選考や採用の機会を拡大すべきと提言されています。具体的に示されたのは、新卒採用時の画一的な募集スケジュールの緩和や、勤務地・勤務内容・勤務時間などに限定のある働き方の整備、労働条件や期待する人材像、企業文化などミスマッチを起こさない情報開示の必要性などでした。中途採用の増加を含め、企業の在り方も採用も今後多様化が進んでいくと予想されます。
とはいえ、新卒市場を中心とした日本の雇用・採用慣行が、急激にすたれていくとは考えにくいもの。国や企業の制度・環境整備の取り組みに注視する一方で、働くわたしたちとしては、新卒のメリットや企業の教育育成を十分活用しつつ、変化に対応する力を蓄え、長いキャリアを渡るしたたかさも必要なのかもしれません。
参考
独立行政法人労働政策研究・研修機構(2017年)『多様な選考・採用機会の拡大に向けた検討会報告書』