大学無償化制度3つの制限
無償化制度にはさまざまな制限が設けられています。その制限が不公平感を募らせている要因でもあり、不満や危惧を解消するための対策でもあります。
所得制限
無償化制度の対象者は、「住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生」に限定されています。一定の算式で算出された基準額に基づき、第Ⅰ~Ⅲ区分に分け、第Ⅰ区分は支援上限額の全額まで、第Ⅱ区分は支援上限額の3分の2まで、第Ⅲ区分は支援上限額の3分の1まで支給されます。支援対象となる第Ⅰ~Ⅲ区分とは、どれくらいの年収の世帯なのか、文部科学省が目安を発表しています。それによると、両親と子供2人の4人家族の場合、第Ⅰ区分は年収約270万円未満、第Ⅱ区分は年収約300万円未満、第Ⅲ区分は年収約380万円で、年収約380万円を超える世帯は、制度の対象から外れます。
(参照元:高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)における所得に関する要件|文部科学省)
大学など教育機関に対する制限
大学無償化制度の最終目的は、低所得者層の子供が高等教育を受けることにより、社会で活躍できる実力を養い、「貧困の連鎖」から脱却することです。そのためには良質な教育を確保する必要があり、制度の対象となる大学には以下のような要件を求めています。
- 実務経験のある教員による授業科目が標準単位数の1割以上配置されていること
- 法人の「理事」に外部人材を複数任命していること
- 授業計画の作成、成績評価の客観的指標の設定、卒業の認定に関する方針の策定などにより、厳格かつ適正な成績管理を実施・公表していること
- 財務諸表や定員充足状況、進学・就職の状況などの情報を開示していること
その一方で、次の項目がすべてあてはまる教育機関は対象から外されます。
- 貸借対照表の「運用資産-外部負債」が直近の決算でマイナス
- 経常収支が直近3年連続マイナス
- 在籍する学生数が直近3年連続で収容定員の8割未満
参考
学生の意欲や成績に関する制限
意欲のない学生を公費でサポートすることになると危惧する声に応じ、無償化制度では学生の成績や意欲も条件に入れています。例えば、高校3年生が無償化支援の予約採用を申請する場合、高校での成績の平均値が3.5以上であるか、レポートか面談で学修意欲を確認できることが条件です。
支援対象に認定されても、以下のような場合は大学から警告を受け、改められなければ支援打ち切りとなります。
- 修得単位数が標準の6割以下
- 成績平均値が下位4分の1以下
- 出席率が8割以下で、意欲が認められない
また、以下のような場合は即支援打ち切りとなるだけでなく、場合によってはすでに受けた支援分も返済を求められます。
- 退学・停学
- 修業年限で卒業できない
- 修得単位数が標準の5割以下
- 出席率が5割以下で、意欲が著しく低い
参考
大学無償化のメリット~低所得者も大学に進学できる
論議が噴出している大学無償化ですが、最大のメリットは、貧困層の学生が学費の心配なしに高等教育を受けられることです。低所得世帯の子供は大学などへの進学率が低く、生涯賃金も低い傾向があります。このような「貧困の連鎖」を断ち切るためには、低所得世帯の子供に高等教育の機会を与えることが重要です。高等教育を受けることにより、機会も広がり、問題解決能力も養われ、生活保護など公的支援に頼らず自立できる能力を培います。
まとめ
今回の制度は、高等教育無償化に向けた「最初の第一歩」とも言える制度です。Fラン大学延命問題や中所得者層を置き去りにしている問題など、今後、制度の改定を通じて解決していかなくてはならない課題はたくさんあります。まずは、2020年4月以降の制度の開始を見守りましょう。
参考
学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度|文部科学省
高等教育の修学支援新制度に係る質問と回答(Q&A)|文部科学省
大学無償化は言い過ぎ?ウソ?不公平と言われる理由とは? | Netbusiness
中身のない議論で可決された大学無償化法案 | ベターワールドのつぶやきブログ
大学無償化のメリットとデメリット!問題点は?現在抱える課題も