日本で新卒採用といえば、みなが同じ時期に一斉に選考をスタートするのが一般的。ところがそんな新卒の「一括採用」を改めようという動きが大きくなっています。当記事では再度「新卒一括採用」とは何かを確認した上で、学生や企業へのメリットやデメリットをご紹介していきます。
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もくじ
新卒一括採用とは?
そもそも、「新卒一括採用」とはどのような制度なのでしょうか? なんとなくは分かっていても、詳細やいつから始まったのかなど歴史については知らないという方も多いでしょう。まずは新卒一括採用とはどのようなものなのか、その制度についてご説明します。
どんな制度か
「新卒一括採用」とはその名前のとおり、新卒として就職する学生の採用を一括して行うという制度です。具体的には選考や内定、入社の時期などが一括で定められています。
例えば、2020年卒業の新卒採用の時期は、内閣官房内閣審議官や文部科学省高等教育局長などによって、以下のように定められています。
学生が学修時間を確保しながら安心して就職活動に取り組むことができるよう、就職・採用活動の日程については、次のとおりとしていただくようお願いいたします。
- 広報活動開始 : 卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動開始 : 卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日 : 卒業・修了年度の 10 月1日以降
(引用元:2020 年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請事項(別紙P1)|日本経済団体連合会)
しかしこれは、日本経済団体連合会、通称「経団連」に加盟している企業が当てはまるルールです。加盟していない外資系やITベンチャーなどの中には、各時期を前倒しにする企業も多くあります。そのため、完全に一括採用とは呼べないのが現状です。
いつから始まったのか
今では日本で馴染みのある新卒の一括採用制度ですが、いつから行われているのかをご存じでしょうか? そもそも新卒採用は、明治時代から一部の企業や大学で行われていたとされています。代表される企業は、当時の日本郵船である三菱と、三井銀行の2社です。
2社では主に、旧帝大の学生などを対象とした新卒の一括採用を行っていたそうです。動きが拡大したのは関東大震災が起こった1920年代のこと。第一次世界大戦の後ということもあり、不況が続いていました。
その結果、就職を希望する学生が後を絶たなくなりました。企業側も採用試験の制度を整えるなど、徐々に現在の新卒一括採用のスタイルを確立していったのです。
新卒一括採用|学生へのメリット
意外にも歴史ある新卒の一括採用。もはや当たり前の慣行となっているものの、あらためて考えると、どのようなメリットがあって続けられているのでしょうか? まずは学生側へのメリットについてご紹介していきます。
(1)具体的なスキルは求められない
新卒一括採用が学生にもたらすメリットの1つ目は、「具体的なスキルは求められない」ということです。学生が就職面接でアピールするのは、ずばり「ポテンシャルがあるかどうか」。学生時代にどんなことを頑張ってきたのか、これからどうなりたいのかなどを企業側にアピールし、可能性を見出してもらえれば採用される可能性があります。
もちろんスキルや経験を求められたり、経験を持っている人が有利になったりすることはあるでしょう。しかし多くの場合、スキルがなくても選考を受けることは可能なのです。
(2)大企業に就職できる
新卒一括採用が学生にもたらすメリットの2つ目は、「大企業に就職できる」ということです。「新卒カード」という言葉が聞かれるように、特にスキルを持っていなくても有名企業や大企業に就職することが可能です。
なかには学歴や経験に制限を設けている企業もあるため、誰もが必ずしも大企業に就職できるというわけではありません。それでも新卒カードを使うことで、大きな会社への就職のチャンスが訪れやすいという特徴が見られます。
新卒一括採用|学生へのデメリット
反対に、新卒一括採用にはデメリットもあります。特に近年では経団連による新卒採用の通年化を目指す動きが強まっており、一括採用の良くない点を改善しようとしています。それでは新卒の一括採用は、学生にどのようなデメリットをもたらしているのでしょうか?
(1)自分のペースで就職活動ができない
新卒一括採用の学生へのデメリットとして、「自分のペースで就職活動をすることができない」という点が挙げられます。就職活動中とはいえ、その時点では学生です。学業や留学など自分のやりたいことと就活の時期が重なってしまうこともあるでしょう。
また留学を希望する学生の場合、帰国してからの就職活動期間が限られてしまいます。自分のやりたいことと就活のバランスがうまくとれず、苦しい思いをしてしまう学生もいるでしょう。
(2)周囲からのプレッシャーが強い
新卒一括採用によって学生にもたらされるデメリットには、「周囲からのプレッシャーが強い」という点も挙げられます。新卒としての就職は、一生に一度しかできません。先述の「新卒カード」のような大チャンスも、これを逃せば訪れないのです。一括で採用されることから、周りの友達と自分の就職活動の状況を比べてしまうこともあるでしょう。
特に家族からのプレッシャーは大きな負担となりやすいものです。「大企業に就職しなさい」「上場企業に就職しなさい」「絶対に公務員になりなさい」など、親からさまざまなことを言いつけられる就活生もいるでしょう。その結果、家族の期待とうまくいかない現実との間で、どうすればいいのか分からなくなるほど悩んでしまう人もいるのです。