こんな資料はどうやって引用する?
続いては引用の方法に迷う資料について解説します。引用で最も迷いがちな出典の書き方を中心に紹介します。
雑誌や新聞など本以外の出版物
雑誌については先ほども英文のものを見ました。
(3) Eric Hobsbawm, “Some Reflections on ‘The Break-up of Britain ‘, “ New Left Review, 105 (September – October 1977), p.13.
(引用元:ベネディクト・アンダーソン(1997)『想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』(NTT出版) p.27)
前から順に「著者、論文名、掲載誌、巻号(出版年)、ページ数」です。日本語の雑誌でもこれだけの情報がそろっていれば問題ありません。
学術雑誌だけでなく、商業誌や新聞の場合も同様です。これらの出版物は著者(ライター・記者)の署名があることもあれば、ないこともあります。署名記事でない場合は著者の部分だけ省き、残りの情報を記載するようにしてください。
論文
論文を引用する場合、「その論文がどこに収録されていたか」によって出典の書き方が変わります。学術誌に掲載された雑誌論文の場合は、上記で紹介した方法で大丈夫です。
複数の著者が書いた論考を一冊の本にまとめたものもあります。その場合は下記のように著者と編者の情報を全て載せるようにします。
中谷文美 1999「<子育てする男>としての父親?—九〇年代日本の父親像と性別役割分業」西川祐子・荻野美穂編『共同研究 男性論』人文書院。
(引用元:中谷文美(2003)『「女の仕事」のエスノグラフィ バリ島の布・儀礼・ジェンダー』(世界思想社) 269ページ)
一般的に論文は何かの雑誌や書籍に収録されています。しかしごくまれに「論文単体で存在するもの」があります。学生がアクセスできるものとしては、在籍する大学で発表された博士論文などがあります。この場合は「著者、発表年、論文名、大学名、学位(博士)」を明記します。下記は一例です。
西郷 和彦(1976)「金属塩を活用する有機合成反応および2-ハロピリジニウム塩を用いる縮合反応の研究」東京大学(博士論文)
参考
金属塩を活用する有機合成反応および2-ハロピリジニウム塩を用いる縮合反応の研究 | UTokyo Repository – 東京大学学術機関リポジトリ
ウェブサイトやダウンロードした資料を使う場合
レポートで利用する可能性が高いネット上の資料は、PDF化された論文です。これらの多くは、当初掲載された論文誌の一部としてまとめられています。そのため、ウェブ上でしか閲覧していなくとも、紙の論文誌と同じように「著者、論文名、掲載誌、巻号(出版年)、ページ数」を明記してください。博士論文も紙のものと同様にしてください。
また、専門家が専門分野について自分のウェブサイトで公開する文章も利用頻度が高いでしょう。例を取り上げます。
高橋祥吾(2014/08/20)「文献引用の作法」『高橋 祥吾 – 資料公開 – researchmap』 (最終アクセス2019年11月12日20:20) https://researchmap.jp/muvad5cb1-1849043/?action=multidatabase_action_main_filedownload&download_flag=1&upload_id=71068&metadata_id=73369
「著者、公開日、ページタイトル、ウェブサイトの名前、引用者の最終閲覧日、URL」があればいいでしょう。公開日については、時間まで分かればそれも掲載しましょう。
参考
文献引用の作法 | 高橋 祥吾 – 資料公開 – researchmap
インタビューの文字起こし
どこかに調査に行ってインタビューをするような課題もあります。自分でしたインタビューであっても自分自身の発言ではない以上、出典を明記するほうが信頼性が高まります。
インタビューの出典は著者によって書き方が異なりますが、理想的な項目を挙げておきましょう。「インタビューした年月日、インタビュイー、インタビュアー」です。「2019年11月12日に筆者がAにインタビューした」という文章の形でもいいでしょう。
参考
自分の言葉で言い換える要約
インタビューであっても印刷物からであっても、そのまま引用するのではなく要約するという作業が発生することがあります。特に卒論などでは先行研究をまとめ、どういうことが研究されていて、どのような成果があるか。これまでに研究されていないことは何か、などを説明しなくてはなりません。
前述した例で言うと「〜だからである。なぜならば○○が『××××』と言っているからである。」の二重かっこを外してしまう状態です。引用しようとすると長くなりすぎる場合や、何ページにもわたる論考を簡単にまとめたい場合などには有効です。ただし、要約した場合も脚注などで、「どの文献の何ページあたりを要約したのか」が分かるように出典を明記しておきましょう。
毎回迷わないために。レポートの書き方本を読もう
さまざまなケースについて紹介してきました。レポートを書くたびに検索するのも方法の一つですが、きちんと書籍化された「レポートの書き方」を一冊手元に置いておくことをおすすめします。
毎回迷って信頼できるウェブサイトを探すより、手元の本を読み直す方が時間を短縮できます。ご紹介した本以外にも複数の信頼できる書籍が刊行されています。大学図書館に蔵書されているものも多いので、ぜひ一度手に取ってみてください。
まとめ
子供に説明しようとすると意外と難しい引用とその方法。学生のレポートに求められるものについて、代表的なケースを解説しました。「この場合はどうするの?」という疑問はしばしば出てきますが、先生や手元の専門書を見習って自分に合ったやり方を探ってみてください。
参考
ベネディクト・アンダーソン(1997)『想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』(NTT出版)
中谷文美(2003)『「女の仕事」のエスノグラフィ バリ島の布・儀礼・ジェンダー』(世界思想社)
フランシス・ウェストリー他(2008)『誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる』(英治出版)