レポートで引用はどうやってすればいいの?実例や資料ごとの引用方法 - cocoiro career (ココイロ・キャリア) - Page 2

引用をすることに必然性がある

特に理由もなく他人の文章を使用することは引用とは認められません。先ほどの例でいうなら、「〜だからである。なぜならば○○が『××××』と言っているからである。」というように「〜だからである」という自分の意見を専門家が補完していることを示すために『××××』を利用する必要があります。

「本当はあまり引用する必要がないのだけど、レポートの文字数に足らないから引用を増やそう」ということは避けてください。引用のルールの観点で問題があるだけでなく、レポートの内容が水増しされたことになってしまいます。採点する先生側の心証を悪くする恐れがあります。

地の文が「主」、引用が「従」になっていることが重要

文章の主従関係にも注意しましょう。引用の必然性でも触れましたが、レポートのメインはあくまでも地の文です。地の文を補完する専門的な見解として引用を利用することが望まれます。

このことを文章の主従関係と呼びます。地の文が「主」であり、引用はあくまでも「従」となります。

転載との違い

引用と同様に他人の著作物を利用する行為に「転載」があります。転載とは他人の著作物を自分の著作物の中で使用すること。その中で上記の引用の要件を満たしているものが引用として認められると考えておくといいでしょう。

著作権者の了解を取らないで転載した場合、著作権侵害で訴えられる可能性があるということを認識している人は多いでしょう。しかし可能性だけで言うと、きちんと引用の条件を満たしているにもかかわらず著作権侵害として訴えられることもないとは言えません。著作権法に引用の要件が明記されていない以上、何が転載なのか、もしくは引用であるのかという問題について厳密に考えるには、司法の場に持ち込むしか方法がないというのが日本の現状です。

しかしこれは可能性だけの問題です。一般的には引用の要件を守っていて法的責任に問われることは考えにくいと言っていいでしょう。引用する際はきちんとルールを守り、転載にならないようにしてください。

本によって出典の書き方が違う!どうすればいいの?

ここまでは抽象的な考え方を紹介してきました。続いては実際にレポートを書くときに「どうすればいいの?」と迷いがちなケースを解説していきます。まずは「出典の書き方」です。

必要な項目がそろっていればOK

学術的な文章の脚注を読んでいて、このような表現に出会ったことはないでしょうか。

<1>たとえば鷲田[1996]、今村[1998]、清水[1992]など。

(引用元:中谷文美(2003)『「女の仕事」のエスノグラフィ バリ島の布・儀礼・ジェンダー』(世界思想社) 235ページ)

これは「書籍や論文の著者」、「出版年」だけを取り出して書いているパターンです。このような出典の表記の場合は、巻末に文献リストがまとめられています。そちらを見るとこの「鷲田[1996]」とは以下の書籍であることが分かります。

鷲田清一 1996『だれのための仕事』岩波書店

(引用元:中谷文美(2003)『「女の仕事」のエスノグラフィ バリ島の布・儀礼・ジェンダー』(世界思想社) 265ページ)

このようなやり方も出典を表示する方法の一つです。一方、脚注ごとにていねいにリストをつけていく方法もあります。

3. W. B. Yeats, “Dialogue of Self and Soul, ” in The Collected Works of W. B. Yeats, Volume 1: The Poems (New York: Scribner ),240. [邦訳は『イェーツ詩集』(思潮社)所収「自我と魂との対話」]

(引用元:フランシス・ウェストリー他(2008)『誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる』(英治出版) 277ページ)

こちらは原作者がつけた出典に、翻訳者が日本語で読める文献を付け加えた例です。英語の出典は前から順に「著者、詩のタイトル、書籍名、巻号、(出版社と所在地)、ページ数」です。

ここで不思議に思った方もいるかもしれません。先ほど紹介した書籍で使われていた英語の出典表記と順番が異なるからです。もう一度見てみましょう。

(3) Eric Hobsbawm, “Some Reflections on ‘The Break-up of Britain ‘, “ New Left Review, 105 (September – October 1977), p.13.

(引用元:ベネディクト・アンダーソン(1997)『想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』(NTT出版) p.27)

こちらは前から順に「著者、論文名、掲載誌、巻号(出版年)、ページ数」です。書籍と雑誌という違いはありつつも、出版年・出版社の所在地・ページ数を表す「p」などがあったり、なかったりしますし、書かれている順番も違います。このような例を複数見ていると、混乱してしまう人もいるかもしれません。

結論から言うと、これらの順番に特に決まりはありません。引用の要件として成立させるためには、すべての情報がきちんと明示されていれば良いのです。また、かっこの代わりにピリオド「.」 やカンマ「,」 を使うこともあります。これらもローカルルールのようなもので、どちらが正しいといったものではありません。

大学のレポートは先生の分野に合わせておけば無難

ただし、学術的な文章を書く際には別に注意しておく必要があることがあります。それは「学会のルール」です。法律的には出典の書き方にしばりはないのですが、学術界では学会ごとに出典の書き方が決まっていることがほとんどです。

学部生に、そのレベルまで求められることはあまりないでしょうが、書いたものが論文誌に掲載されることもあります。その場合には出典を書き直す必要が生じます。

また、厳格な先生だと出典の書き方にも厳しい基準を持っていることがあります。そのような先生は授業中に出典の書き方についてレクチャーしてくれるので、それに従いましょう。

また、「特に何も言われていないけれど、なんとなく気を遣いたい」と思うのであれば、先生の所属しているメインの学会に合わせておきましょう。学会誌は図書館に蔵書として収録されており、学校の端末からもアクセスできます。専門分野を知るためにも一度確認してみるといいでしょう。