法科大学院は失敗だったのか?その理由や課題について紹介 - cocoiro career (ココイロ・キャリア)

「将来は司法試験に合格して法曹になりたい」という方は、法科大学院への進学を検討するのではないでしょうか。司法試験を受けるためには法科大学院の修了が1つの条件となっており、法学部を卒業して法科大学院へ進学する学生も少なくありません。

しかし、新司法試験制度が施行されたことで、法科大学院への進学者が減り、法科大学院制度について国が見直しを検討しているといいます。今回は法科大学院制度が抱える問題や課題についてご紹介します。

法科大学院が失敗といわれている理由について

法科大学院制度について、文部科学省は以下のように制度の意義について提言しています。

司法が21世紀の我が国社会で期待される役割を十全に果たすための人的基盤を確立するためには、司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備することが不可欠であり、その中核をなすものとして、法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクールである法科大学院が構想されました。

(引用元:法科大学院制度について|文部科学省

法曹養成に特化した教育を受けることができる法科大学院ですが、一部では法科大学院制度は失敗という声も出ているといいます。その主な理由としては、以下の3点が挙げられます。

法科大学院に進学しても司法試験に合格できない?

法科大学院は、前述したとおり法曹養成に特化した学校となっており、修了すると司法試験を受ける資格が与えられます。しかし、法科大学院に進学した場合の司法試験の合格率は年々減少傾向にあるといい、法科大学院の在り方が問われているのです。

例えば、法務省が発表した、令和元年司法試験の調査結果「法科大学院等別合格者数等」によると、法科大学院の受験者4,081名のうち、合格者は1,187名であり、合格率が低いという結果に。「法科大学院に進学しても司法試験に合格することができない」という考えが広まるようになり、法科大学院制度は失敗なのではとの懸念の声が出るようになったといいます。

参考

令和元年司法試験法科大学院等別合格者数等,p1|法務省

法科大学院は既修者が多く、多様性が失われた?

2004年4月に創設された法科大学院制度ですが、もともとはさまざまなバックグラウンドを持った人を法科大学院に入学させることで、理想の法律家養成を目指していました。しかし、法学をまったく学んだことがない人でも、適性試験・小論文・面接などに合格することで入学することができるとしながらも、3年間の未修者コースを修了しても司法試験に合格するための力がつきにくく、合格率の悪化でコースの人気自体がなくなってしまったといいます。

法科大学院側は法学部を卒業している既習者をコースの対象とするようになり、多くの法学部出身者が大学卒業後にストレートで入学するようになったことから、多様性が失われ、法曹職に就く人材が定型化される傾向が強くなったといいます。創設の理想像として掲げていた多様性が失われたことも、法科大学院制度が失敗といわれる原因につながったといえるでしょう。

司法試験予備試験により、予備校合格率が増加

法科大学院制度にとって大きな影響を与えたのが、司法試験予備試験です。司法試験予備試験とは、法科大学院に進まずに予備試験を受けることで司法試験の受験資格が得られる制度で、近年は法科大学院修了者よりも、予備試験受験者の方が司法試験合格率が上昇傾向にあるといいます。前述した法務省の同調査では、予備試験合格者385名のうち、315名が司法試験に合格しており、高い合格率を誇っていることが分かります。

法科大学院には進まず、予備試験ルートで法曹を目指す人が増えたことも、法科大学院制度の見直しが検討される大きな要因となっています。

法曹養成制度の課題

もともと、前述した予備試験は、経済的な事情などで法科大学院で学ぶことができない人への「救済措置」として設けられました。しかし、当初の理念とは違い、飛び級制度的に活用されている現状があります。法科大学院に進学しても、司法試験に合格できなければ意味がありません。現在の法曹養成制度が抱える課題について解説します。

司法試験合格のためのカリキュラムの充実

法科大学院では、膨大な学習量を前に途方に暮れてしまうことも多いといいます。そのため、司法試験合格のために重点的に学ぶ領域を判断しづらいという現状があります。一方で、予備試験の場合は、司法試験と予備試験に共通問題が多く、予備試験対策をすることが司法試験合格へとつながり、結果的に法科大学院卒修了者よりも司法試験合格者が多いという結果につながっています。

法科大学院制度の見直しのためには、大学院での教育カリキュラムの見直しや、学生1人ひとりの習熟度の違いを見越したサポート体制などが必要になるでしょう。予備校のような手厚いサポートは難しいかもしれませんが、合格者が少ない理由を明らかにし、教育内容について見直すことも大切なポイントとなりそうです。