裁判官になるためのルート
ここまで、裁判官の仕事内容や裁判官に向いている人の特徴を見てきました。裁判官という仕事の難しさや大変さを知ることができたのではないかと思います。ここからは、裁判官になるにはどうしたらいいのか一般的なルートをご紹介します。
司法試験に合格する
まずは、裁判官になるための登竜門である司法試験についてご紹介します。司法試験の内容と合格率から司法試験とはどのような試験なのか見ていきましょう。
司法試験の内容
司法試験は、短答式の筆記試験と論文式の筆記試験の2つから構成されています。試験内容は、下記のとおりです。
【短答式】
- 憲法
- 民法
- 刑法
【論文式】
- 公法系科目(憲法及び行政法に関する分野)
- 民事系科目(民法、商法及び民事訴訟法関する分野)
- 刑事系科目(刑法及び刑事訴訟法に関する分野)
- 選択科目
※選択科目は、知的財産法、労働法、租税法、倒産法、経済法、国際関係法(公法系と私法系)、環境法の中から1科目を選択します。
参考
司法試験の合格率
司法試験の合格者数や合格者に関する情報は、法務省から公開されています。過去5年分の受験者数と短答式試験の合格者数、最終的な合格者数をご紹介します。
実施年 | 受験者数 | 短答式合格者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成30年 | 5,238人 | 3,669人 | 1,525人 | 29.1% |
平成29年 | 5,967人 | 3,937人 | 1,543人 | 25.8% |
平成28年 | 6,899人 | 4,621人 | 1,583人 | 22.9% |
平成27年 | 8,016人 | 5,308人 | 1,850人 | 23.0% |
平成26年 | 8,015人 | 5,080人 | 1,810人 | 22.5% |
(平成30年司法試験の採点結果|法務省、平成28年司法試験の採点結果|法務省、平成26年司法試験の採点結果|法務省より筆者作成)
実際に受験をした人数に対して、合格率は約20~26%ほどです。短答式の筆記試験で合格ラインを超えていないものが1つでもあると論文式の筆記試験は採点してもらえません。上記の表を見ると、短答式の筆記試験の時点で約40%の受験者が脱落していることが分かります。法科大学院で2年間ないしは3年間学んだ人たちで、この合格率は非常に低いといえるのではないでしょうか。
司法修習を終えて司法修習生考試に合格
司法試験に合格した後は、1年間の研修である司法修習を受けます。そして、司法修習の最終試験である司法修習生考試に合格する必要があります。司法修習生考試は、司法試験を1回目の試験と考えると2回目の試験に当たるので「二回試験」と呼ばれることがあります。
民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目から1科目を選んで1日かけて行われる試験です。ここでは、90%以上の司法修習生が合格しますが、毎年数パーセントは不合格者も出る試験です。
弁護士から裁判官になる
司法試験、司法修習生を経てから裁判官になる一般的なルートよりも人数は少なく、担当する案件も調停になりますが、弁護士から裁判官になるルートもあります。
これは、「非常勤裁判官」といわれる制度で、弁護士としての身分を持ったまま週1日裁判所に行って民事調停や家事調停に関して裁判官と同じ権限を持って調停をするというものです。また、非常勤裁判官から、常勤裁判官に任用されるケースもあります。
裁判官の年収・平均給与について
最後は、裁判官の年収と平均給与についてご紹介します。等級ごとの給与と役職者の給与に分けてご紹介します。また、裁判官の昇給は基本的に経験年数によって上がっていきます。
等級ごとの給与
判事
区分 | 月額報酬 |
一号 | 1,301,000円 |
二号 | 1,146,000円 |
三号 | 1,069,000円 |
四号 | 906,000円 |
五号 | 783,000円 |
六号 | 704,000円 |
七号 | 636,000円 |
八号 | 573,000円 |
判事補
区分 | 月額報酬 |
一号 | 459,900円 |
二号 | 422,700円 |
三号 | 393,400円 |
四号 | 368,000円 |
五号 | 342,200円 |
六号 | 324,300円 |
七号 | 303,500円 |
八号 | 292,200円 |
九号 | 265,800円 |
十号 | 256,300円 |
十一号 | 241,000円 |
十二号 | 232,000円 |
簡易裁判所判事
区分 | 月額報酬 |
一号 | 906,000円 |
二号 | 783,000円 |
三号 | 704,000円 |
四号 | 636,000円 |
五号 | 479,000円 |
六号 | 459,900円 |
七号 | 422,700円 |
八号 | 393,400円 |
九号 | 368,000円 |
十号 | 342,200円 |
十一号 | 324,300円 |
十二号 | 303,500円 |
十三号 | 292,200円 |
十四号 | 265,800円 |
十五号 | 256,300円 |
十六号 | 241,000円 |
十七号 | 232,000円 |
(裁判官の報酬等に関する法律|首相官邸より筆者作成)
裁判官としての最初の月額報酬は約23万円なので大手企業とあまり変わりませんが、等級が上がっていくと給料も高くなり、簡易裁判所の判事一号で約90万円、判事の一号になると130万円以上になります。
役職者の給与
最高裁判所長官は月収が約220万円で、高等裁判所の長官では月収が140万円以上になります。責任が重い分、給与も高いことが分かります。
区分 | 月額報酬 |
最高裁判所長官 | 2,227,000円 |
最高裁判所判事 | 1,626,000円 |
東京高等裁判所長官 | 1,557,000円 |
その他の高等裁判所長官 | 1,442,000円 |
(裁判官の報酬等に関する法律|首相官邸より筆者作成)
まとめ
裁判官になるには法科大学院で法律について学び、司法試験資格を取得して、超難関国家試験である司法試験に合格し、司法修習生となり司法修習生考試に合格する必要があります。気の長くなるような道のりですが、それは裁判官という仕事の社会的な責任の重さを考えると当然かもしれません。この記事が、裁判官を目指す方の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
参考
裁判官になるには?司法試験合格者の中でどんな人が裁判官になれるの?|スタディング