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数ある文学賞の中でも、話題作が選ばれることで知られている吉川英治文学賞。吉川英治文学賞はどんな賞なのか? 吉川英治の生い立ちや代表作に触れつつ、2019年の受賞作品、過去の受賞作品を紹介します。
もくじ
吉川英治文学賞とは?
吉川英治文学賞の前身は1962年創設の「吉川英治賞」です。1966年に後援が毎日新聞社から講談社に代わったことを機に「吉川英治文学賞」となりました。吉川英治文学賞には「吉川英治文学賞」「吉川英治文化賞」「吉川英治文学新人賞」「吉川英治文庫賞」の4つの賞があります。
世の中に数ある文学賞の中でも、大衆文学に特化している吉川英治文学賞の内容と過去の受賞作品を見てみましょう。
吉川英治文学賞
吉川英治文学賞は、大衆文学の優秀な作品に贈られる賞です。吉川英治国民文化振興会の主催で毎年発表されています。広く読まれ、親しまれてきた大衆文学の父、吉川英治の偉業を讃えて1967年に設立された賞です。第1回吉川英治文学賞では、松本清張が選ばれています。
1月1日から12月31日までの間に、新聞、雑誌、書籍単行本などで発表された小説や評論作品の中から選定。出版社やテレビ、ラジオ、映画関係者のほか、画家や批評家といった文化人の推薦を得た作家がノミネートされます。
講談社が後援しており、例年講談社のホームページ上で受賞作品が紹介されます。選考委員には、過去に受賞経験のある作家や著名な作家が名を連ねます。
2019年受賞作品
2019年3月4日に、2019年の吉川英治文学賞が発表されました。
浅田次郎、北方謙三、五木寛之、林真理子、平岩弓枝、宮城谷昌光といった著名人が選考にあたり、第53回吉川英治文学賞の受賞作品は、篠田節子の『鏡の背面』(集英社)に決まりました。
以下、内容説明です。
薬物依存症患者やDV被害者の女性たちが暮らすシェルターで発生した火災。「先生」こと小野尚子が入居者を救い、死亡。
盛大な「お別れの会」が催された後、警察から衝撃の事実が告げられる。「小野尚子」として死んだ遺体は、別人のものだった。
ライターの山崎知佳は、過去を調べるうちに、かつて「女」を追っていた記者にたどり着く。一方、指導者を失ったシェルター内では、じわじわと不協和音が…。傑作長編サスペンス。
(引用元:篠田節子著(2018年7月)『鏡の背面』集英社|Amazon )
著者の篠田節子は、小説新人すばる賞や山本周五郎賞、直木賞など数々の賞を受賞する実力派作家です。
過去受賞作品
過去の受賞作品を紹介します。
回/年 | 受賞作品名 | 作者 | 出版社 |
第52回/2018年 | 「守教(上・下)」 | 帚木蓬生 | 新潮社 |
第51回/2017年 | 「大雪物語」 | 藤田宜永 | 講談社 |
第50回/2016年 | 「東京零年」 | 赤川次郎 | 集英社 |
第49回/2015年 | 「平蔵狩り」 | 逢坂 剛 | 文藝春秋 |
第48回/2014年 | 「海と月の迷路」 | 大沢在昌 | 毎日新聞社 |
第48回/2014年 | 「祈りの幕が下りる時」 | 東野圭吾 | 講談社 |
(引用元:吉川英治文学賞|講談社)
吉川英治文学新人賞
昭和55年から創設された「吉川英治文学新人賞」は、毎年1月1日から12月31日までの間に、優秀な小説を発表した将来性のある作家に贈られる賞です。
2019年受賞作品
伊集院静、大沢在昌、恩田陸、京極夏彦、重松清が第40回吉川英治文学新人賞の選考委員を務め、塩田武士の『歪んだ波紋』(講談社)と、藤井太洋の『ハロー・ワールド』(講談社)の2作品が吉川英治文学新人賞を受賞しました。
以下、内容説明です。
「誤報」にまつわる5つの物語。新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディア―昭和が終わり、平成も終わる。気づけば私たちは、リアルもフェイクも混じった膨大な情報に囲まれていた。
その混沌につけ込み、真実を歪ませて「革命」を企む“わるいやつら”が、この国で蠢いている。松本清張は「戦争」を背負って昭和を描いた。塩田武士は「情報」を背負い、平成と未来を描く。全日本人必読。背筋も凍る世界が見えてくる。
(引用元:塩田武士著(2018年8月)『歪んだ波紋』講談社|Amazon)
専門を持たない「何でも屋」エンジニアの文椎の武器は、ささやかなITテクニックと仕事仲間と正義感。郭瀬と汪の3人でチーム開発した、広告ブロッカーアプリ“ブランケン”が、突然インドネシア方面で爆発的に売れ出した。“ブランケン”だけが消せる広告は政府広報だ。東南アジアの島国で何が起こっているのか―。果たして彼らはとんでもない情報を掴んでしまった。文椎は、第二のエドワード・スノーデンなるか?
(引用元:藤井太洋著(2018年10月)『ハロー・ワールド』講談社|Amazon)
過去受賞作品
過去の受賞作品を紹介します。
回/年 | 受賞作品名 | 作者名 | 出版社 |
第39回/2018年 | 「Ank: a mirroring ape」 | 佐藤 究 | 講談社 |
第38回/2017年 | 「ミッドナイト・ジャーナル」 | 本城雅人 | 講談社 |
第38回/2017年 | 「彼女がエスパーだったころ 」 | 宮内悠介 | 講談社 |
第37回/2016年 | 「Aではない君と」 | 薬丸 岳 | 講談社 |
第36回/2015年 | 「まるまるの毬」 | 西條 奈加 | 講談社 |
第35回/2014年 | 「村上海賊の娘(上・下)」 | 和田 竜 | 新潮社 |
(引用元:吉川英治文学新人賞|講談社)
吉川英治文庫賞
毎年12月1日から11月30日の間に文庫の最新刊が発表された作品で、5巻以上文庫を刊行している優秀な大衆文学作品と作家に贈られる賞です。過去に吉川英治文学賞を受賞した作家は対象外となっています。
吉川英治文庫賞は、書評家や各出版社の代表、出版流通関係者など50名で構成される選考委員会の2回の投票によって決められます。2016年に創設されたばかりの新しい賞です。
2019年受賞作品
2019年は西村京太郎の『十津川警部」シリーズが受賞しました。
以下、内容説明です。
十津川省三は警視庁捜査一課の警部。初登場は1973年発表の『赤い帆船(クルーザー)』で、当時は30歳の警部補だった。その後、警部に昇進し、1979年発表の『夜間飛行殺人事件』で40歳に。それ以降の作品では40歳という設定でほぼ変化はない。鉄道に関わるものを中心に、数多くの難事件を解決してきた日本を代表する刑事である。
(引用元:西村京太郎著『十津川警部』シリーズ|Amazon)
過去受賞作品
2016年からスタートした吉川英治文庫賞ですが、過去に受賞した作品を紹介します。
回/年 | 受賞作品名 | 作者名 | 出版社 |
第3回/2018年 | 「火村英生」シリーズ | 有栖川有栖 | 角川文庫・幻冬舎文庫・ほか各社刊 |
第2回/2017年 | 「隠蔽捜査」シリーズ | 今野 敏 | 新潮文庫 |
第1回/2016年 | 「しゃばけ」シリーズ | 畠中 恵 | 新潮文庫 |
(引用元:吉川英治文庫賞|講談社)
吉川英治文化賞
吉川英治文化賞は、日本の文化向上に貢献しながらも、世間に知られる機会がない活動を対象に評価します。吉川英治文学賞と同時に創設されました。
第51回2018年の吉川英治文化賞には、スポーツ義足の第一人者である臼井二美男(東京都)、家庭環境に恵まれない子供たちと食卓を囲む活動を40年続けてきた中本忠子(広島県)、大桶を作り続ける日本唯一の町工場藤井製桶所(大阪府)が選ばれました。