鷹匠になる方法とは
民間団体で試験に合格する
アメリカでは、鷹を扱う国家資格を設けていますが、日本では、まず国内に複数ある民間団体の認定試験の合格を目指します。たとえば、「諏訪流放鷹術保存会」では、3段階の試験を実施しています。まず、鷹匠補認定試験です。「放鷹文化の歴史~諏訪流鷹匠と鷹の特徴~」「鷹の飼育と調教方法」「調教の段階的理解と実践」「狩のマナーと狩場の歩き方」などの8講座を受け、基本的な技を体得してから、受験します。次に鷹匠認定試験(一般公開)です。3年以上、自分の鷹を調教して、基本的な技を体得した場合に、年に1度の「冬季放鷹術公開」の場で鷹匠認定試験を受けられます。そして、最終段階の師範鷹匠試験は、オオタカやハヤブサの調教法をマスターして、実際に獲物を取れる技術を体得して受験できます。実猟試験と面接で、人格的・技術的に優れて後輩の指導にも適していると認定されれば、師範鷹匠としての独立を許可されます。鷹匠の認定方法は、各団体により異なります。
師匠に弟子入り
必ずしも、資格を取得しなければ鷹匠を名乗れず、鷹匠の仕事をできないわけではありません。鷹匠には、複数の流派が存在します。その流派に入り、訓練を受ける師匠に弟子入りして鷹匠の基本を身につけ、鷹の飼育や狩猟に慣れていく方法もあります。
鷹匠を目指すのであれば、環境面も整えておく必要があります。つまり、鷹の飼育用の鳥小屋の設置、餌の確保を維持できる経済状況を確保しておくことです。野兎を捕獲しても、一匹の販売価格は2,000円程度。鷹匠で生計を立てることは難しく、メインの仕事で経済状況を安定させることが必要でしょう。
鷹匠に求められる能力
地道な努力
鷹匠は、鷹を自由に操る華やかな仕事に見えるかもしれません。しかし、その技術の裏で不断の努力を行っています。一人前になるまでの約3年間、毎日のように訓練します。それに耐える精神力を持つことは最低条件でしょう。
鷹は生き物なので、鷹に振り回される状況もあり得ます。鷹匠の思いどおりに動いてもらえないこともあります。自分の生活より鷹を優先して、責任を持って飼育していくことも必要です。たとえば、鷹は満腹になると飼い主の元に戻ってきません。その間に事故で死んでしまうこともあるようです。満腹状態にはせず、確実に戻るようにしつけておくことが大切です。このように細部にまでこだわっていくことも、鷹匠として必要な努力です。
信頼関係
鷹との信頼関係を築くことは、最も重要でしょう。鷹は神経質な動物で、明るい部屋では中を飛び回ります。一方で、鷹を暗い部屋に入れるとだんだんと落ち着きます。暗い部屋のなかで、ろうそくを少しずつ灯して明るさに慣れさせ、夜に鷹を腕に止めたまま外を歩き回る訓練をします。これを「夜据え(よづえ)」と呼びます。
夜据えには、約2ヶ月間かかると言われます。この2ヶ月間、鷹匠は食事と風呂以外、ほぼ全ての時間を鷹と一緒に過ごします。そのため、この期間中に鷹匠はほかの仕事をほとんどすることができません。さらに、鷹は警戒心が強いため、鷹匠を襲うことも珍しくありません。鋭い爪やクチバシで顔面や腕をつかまれて、失明しかける場面も実際にあるようです。危険を犯しながらも、鷹との信頼関係を築いていくのです。