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毎年秋頃から発表され始め、世界的に注目を集めるノーベル賞。2018年の受賞も発表され、ニュースなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか。ノーベル賞には、いくつもの賞がありますが、ノーベル化学賞はこれまでに多くの日本人が受賞してきました。今回は、そんなノーベル化学賞について詳しく学んでいきましょう。
ノーベル賞とは?
ノーベル化学賞について、詳しく学んでいく前に、まず、ノーベル賞がどのようなものかおさえておきましょう。
アルフレッド・ノーベルの遺言で創設された
ノーベル賞は、ダイナマイトの発明で知られ、「ダイナマイト王」とも呼ばれるスウェーデンの科学者アルフレッド・ノーベルの遺言により創設された世界的に権威ある賞です。
ノーベル賞には6つの分野があり、ノーベル化学賞は創設時からある賞の1つです。ノーベル化学賞は、化学の分野で最も重要な発見、あるいは改良を成し遂げた人に贈られます。
スウェーデン王立科学アカデミーにより選考される
ノーベル化学賞を含むこれらの賞は、スウェーデンのストックホルムにある「ノーベル財団」という基金が運営しています。ノーベル財団は、ノーベル賞が安定的に運営されるようにするための運営資金や賞金の確保など運営面での役割を担い、賞の選考には関与していません。
ノーベル賞の選考は賞により異なり、ノーベル化学賞の選考は「スウェーデン王立化学アカデミー」により行われ、毎年10月から発表、12月に授賞式が行われます。
2018年ノーベル化学賞を受賞した研究
2018年10月3日に、2018年のノーベル化学賞を受賞した2つの研究と3名の研究者が発表されました。
1人目は、「酵素の指向性進化法」について研究を行った、米カリフォルニア工科大学で教授を務めるフランシス・アーノルド(Frances H. Arnold)博士です。そして、「ペプチドと抗体のファージディスプレイ法」について研究を行った、ミズーリ大学の英MRC分子生物学研究所に所属するジョージ・スミス (George P. Smith)博士とグレゴリー・ウィンター (Sir Gregory P. Winter)博士は共同で受賞となりました。
では、2018年のノーベル化学賞を受賞した研究は、どのような研究なのでしょうか。受賞理由となった2つの研究について見ていきましょう。
酵素の指向性進化法
酵素とは化学反応をお手伝いするタンパク質の総称です。化学反応というと実験をイメージするかと思いますが、私たちの体の中でエネルギーを生成したり、食品の発酵、植物が光合成をしたりすることも化学反応の一つで、私たちの生活には酵素が欠かせません。
酵素はDNAから作られ、DNAを改造することで酵素を生み出すことができます。今回受賞理由となった「酵素の指向性進化法」は、このような私たちの生活に欠かせない酵素を人工的に生み出したり、見つけるための新しい手法です。バクテリアのDNAを次々と突然変異させ、好きな化学反応を起こせる酵素を作る方法を開発しました。
酵素の指向性進化法により生み出された酵素により、自然界では考えられない化学反応が報告されています。これからも、この手法を用いて、新しい酵素や化学反応が生み出され、私たちの生活を豊かにしてくれることが期待されます。
ペプチドと抗体のファージディスプレイ法
「抗体」は、細胞そのものは傷つけずに、ウイルスなどの外敵だけを狙い、私たちの体を守ってくれるタンパク質の一種です。この特定のものだけを狙う抗体の性質を使うことで、病気の原因となるものを狙い、病気の治療に役立てることができます。
しかし、このように特定のものだけを狙う抗体を作ることは簡単ではありません。
そこで、タンパク質の一種である抗体を「進化」させるという考え方で、「ファージディスプレイ法」を開発しました。ファージというウイルスの一種を使ってタンパク質を「進化」させ、特定のものを狙うタンパク質を作り出すための基礎となる手法です。
この手法を用いて、抗体の特定のものとだけくっつく強みを生かした「抗体医薬品」が開発され、医学の分野を中心に研究が進められ、期待されています。