人権作文は3部構成にすると書きやすい!
人権作文の趣旨を踏まえると、人権作文は「人を思いやる心が成長していく様子」を3段階で書くのがおすすめです。
ただし、全国中学生人権作文コンテストの応募原稿枚数は、学校名・氏名・題名を除いて400字詰原稿用紙5枚以内と指定されていますので、自分の思いの丈を語りたくとも制限枚数を超えないよう注意する必要があります。
そこで、原稿用紙の分量を踏まえて、内容を次の3段階に分けて構成してみましょう。
【原稿用紙1枚程度】書き出し~人権問題の発見
書き出しは文章全体の15~20%で書くと良いので、原稿用紙1枚程度に収めましょう。
書き出しは、文章全体の印象を決める大事な役割を果たしますので、読者にインパクトを残すことが大切です。そのため、人権問題のテーマを明確に書いた上で、人権侵害だと感じた自分の実体験や、ニュースで見るような人権問題への疑問点などを書きましょう。
【原稿用紙3枚程度】本文~人権問題からの学び
本文は、人権作文の肝になる部分なので、文章全体の60~70%で書きましょう。原稿用紙では、3枚程度が目安です。
人権問題に関わることで気がついたことや学んだこと、ほかの人権問題との比較や派生して起きる問題などを書きます。
人権問題について調べた知識を書く場合は、信頼性の高い文献を使いましょう。参考にした文献から引用する場合は、著作権法に抵触しないよう、引用元を必ず記載します。
【原稿用紙1枚程度】まとめ~将来にむけた問題解決策
まとめは文章全体の15~20%で書くと締まりが良いので、原稿用紙1枚程度が目安になります。
人権侵害は絶対に許さない行為だという視点を持ち、将来的な問題解決策を提案してみましょう。
読み手の心を動かす「良い人権作文」の3条件
良い文章は読み手に強い印象を残し、心を動かします。人権作文に当てはめると、読み手に人権問題について考えるきっかけを作り、人権侵害をなくすために自分にできることはないかと行動を起こさせるような文章が「良い人権作文」と言えるでしょう。
良い人権作文を書くために、次の3つの条件を意識して書きましょう。
【独自の体験】自分にしか書けない経験を書く
人権作文で最も大切なのは、自分にしか書けない文章を書くことです。そのためには、まず自分が体験した場面や深く心が動いた事柄をテーマに選びましょう。
次に、テーマに対する自分の意見や感情を、自分の言葉で表現します。話すことはできても書くことができない人は、この「翻訳作業」ができていない場合が多く見受けられます。
翻訳作業の質を上げるためには、語彙力を増やしたり、他人の文章表現を参考にすると良いでしょう。しかし、それをまるで自分のオリジナルの意見や感情のように書いてはいけません。
【共感を得る】多くの人の心に響く考えを書く
読み手の心を動かすためには、多くの人の共感を得る文章を書くことが大切です。読み手の興味を引くために個性を発揮する必要はありません。奇をてらった論理展開は読み手を驚かせる効果はあっても、共鳴させることができないからです。
人権侵害を目の当たりにして考えたこと、人権を無視する社会や個人の問題点、そして人権問題を解決したいという自分の思いを素直に書きましょう。
【具体的で簡潔明瞭】どんな読み手でも分かるように書く
人権作文の読み手は、学校の先生や友達です。コンテストに出す場合は選考委員、それが表彰されると全国の人に読まれることになります。
作文を書くときは、原稿用紙の向こう側にいる読み手の存在を意識して書くことが非常に重要です。どんな人にでも分かる文章を書くためには、まず人権問題のテーマをはっきりと書きましょう。
次に、読み手が思考を深められるような論理展開をします。このときにおすすめなのが、下記の7W1Hです。
場面を想像させる質問
4W1H |
創造的な質問
3W |
When(いつ)
Where(どこで) Who(だれが) What(なにを) How(どうした) |
Why(なぜ)
Why not(なぜそうしない) What if(もし、そうしたら) |
(5W1Hはもう古い?これからは7W1H!|Magic Hour Blogより筆者作成)
最後に、言葉を正しく使い、具体的なエピソードを正確に伝えることを心がけましょう。
書き出しで世界観を魅せる!読者を惹きつける6つの工夫
書き出しは、文章全体の印象を決める大切な部分です。つまり、本文で読者を思考の世界に誘うには、書き出しで世界観を魅せる必要があります。
文章にインパクトを持たせるためには、短文で簡潔にまとめるのが効果的です。テーマやタイトルを何度も繰り返し書くと、文章が単調になるので避けましょう。
では、読者に印象を強く残す6つの書き出しテクニックをご紹介します。書き出しの例文は、多くの子供たちが人権問題のテーマに選ぶ「いじめ問題」を1つと、そのほかの人権課題を1つ挙げていますので、ご参考にしてください。
登場人物を紹介する
人権侵害を受けている登場人物を文頭で紹介します。これにより読者は、登場人物が受けている人権侵害をイメージしやすくなり、話を受け入れる態勢を整えることができます。
人権問題 | 書き出し例 |
いじめ | 長縄をいつも回す係の子がいる。決して飛べないのではない。飛ばせてもらえないのだ。 |
女性差別 | 私は小さなときから少年野球チームに所属している。チームに女の子はほかにいない。チームの仲間との絆は深く、楽しく参加しているが、周囲からは「女の子が野球?」という声をよくかけられる。 |
場面を描写する
小説の入りでよく使われるのが、情景を読者に浮かばせる方法です。これは映像的な手法で、読者の過去の記憶から視覚的なイメージを抱いてもらうのに効果があります。
人権問題 | 書き出し例 |
いじめ | 授業中、隣の子から折りたたまれた小さな紙を机に押し込まれた。何かと思って見てみると、クラスの友達の名前と一言「ゴミ」という文字が書かれていた。 |
インターネットによる人権侵害 | 休日、友達から相談があると呼び出された。待ち合わせ場所に向かうと、友達は深刻な表情でスマートフォンを握りしめていた。見せてくれたのはインスタグラム。アップされていたのは、友達の部活中の写真だった。 |
主張する
人権課題を明確に主張する方法です。読者の視点を一気に人権問題に向けるのに非常に効果的です。ただし、この方法は「まとめ」で再度同じことを書いてしまう可能性があるため、文章の言い回しには注意が必要です。
人権問題 | 書き出し例 |
いじめ | いじめは、加害者にいじめの意識がないのが問題だ。 |
人種差別 | 人種差別は日本でも起きている。 |
セリフを書く
人権侵害を受けた登場人物の会話を「かぎかっこ」で書き始めましょう。会話は読者に臨場感を与えることができ、話に引き込む効果があります。
人権問題 | 書き出し例 |
いじめ | 「学校に行きたくない」友達が涙声でそう呟いた。 |
外見差別 | 「みんなと何が違うの?」自分の姿を鏡で見ていつも思う。 |
きっかけを書く
自分の体験談ではない場合、人権作文のテーマと自分との関わりを説明する方法を使うと良いでしょう。この方法ならば、人権侵害の現場にいたわけではなくとも、さまざまな人権問題をテーマに作文を書くことができます。
人権問題 | 書き出し例 |
いじめ | 隣のクラスの子が転校した。原因はSNSでのいじめだった。 |
同和問題 | 私の祖父は被差別部落の出身で、祖母との結婚を猛反対されていたと話してくれた。私は同和問題が身近にあることを知り、驚いた。 |
ニュースを要約する
身近にない人権問題をテーマに選ぶのも良いでしょう。この場合、書き出しに事件の背景を要約し、読み手の記憶を蘇らせましょう。ただし、こうした社会問題は数字や内容を具体的、かつ正確に書く必要があります。事実誤認がないよう確実な情報元を使い、綿密に下調べをしましょう。
人権問題 | 書き出し例 |
いじめ | 2019年、神戸市立東須磨小学校で教員間の暴力事件が発覚した。悪質な嫌がらせを受けた男性教員は、再三嫌がらせの事実を上司である当時の校長に訴えたが、相手にされなかった。そればかりか、高圧的に事実を揉み消されたのだ。実はこの前校長は、加害教員たちと親しかったと言われている。
これは本来、児童に正しく生きる教育を行うはずの人間が行ったいじめだ。 参考 |
児童虐待 | 千葉で小学校4年生の女の子、東京では5歳の女の子が親からの虐待で死亡した。2人の女の子の名前には共に「愛」の文字がつけられていた。愛すべき我が子に「躾」と称して暴力を正当化し、果てに殺してしまう親が後を絶たない。
参考 |
語彙の言い換えを学び、文章に「彩り」を加えよう
読み手の心を強く動かすのは、書き手の情景描写が感情豊かに、そして論理矛盾がなく伝えられている文章です。人権作文に限らず、文章を書く上では言葉を適材適所で使いこなす力も必要です。そこでおすすめしたいのが、類語辞典です。
例えば、感動という表現は「心を打たれる」「胸に響く」などさまざまに言い表すことができ、それぞれで読み手に与える印象も微妙に異なります。また、類語を知っていると作文内で同じ言葉を繰り返すことがなくなるため、彩り豊かな文章に仕上げることができます。
まとめ
読み手に情景を思い浮かべてもらうためには、まず自分が頭の中にしっかりと映像を思い起こすことが大切です。
書き出しが決まれば、本文・まとめがスムーズに浮かんでくるでしょう。人権作文の趣旨は人権感覚を育てることにありますので、人権問題を通して自分が成長する様を書いてみましょう。
参考