「いじめ」を題材にした人権作文の書き方~受賞作からヒントを得よう - cocoiro(ココイロ) - Page 2

「いじめ」を題材にした人権作文の書き方3つのポイント

自らの体験を書く

体験を書くと言っても、岐阜市の中学生のようなひどいいじめは、体験したことも見たこともない、と思っていませんか? いじめであるかどうかの判断は、表面的な行為の深刻さによって判断されるものではありません。文部科学省のいじめに関する定義を見てみましょう。

個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。「いじめ」とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。

(引用元:いじめの定義(「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」における定義)|文部科学省

つまり、いじめとは「このような行為がいじめに当たる」と判断されるべきではなく、いじめられた人がどんな気持ちになったかで判断されます。「心理的、物理的な攻撃」とは、暴力をともなうもの以外にも、「仲間外れ」や「集団による無視」、または「金品をたかられる」「ものを隠される」なども含みます。

この定義を見ると、かなりの人が実際にいじめを経験したり、目撃したりしたことがあるでしょう。人権作文では、自分のいじめ体験やいじめ目撃体験をつづることから始めます。その際、「いつ、どこで、だれが、何を、どのように」したのかをしっかりと押さえましょう。体験談で5W1Hが抜けていると、実際に体験をしていない他人には状況がつかめず、そのため説得力の弱い作文となってしまいます。

体験について自分が感じたことを書く

次に、いじめの体験やいじめの目撃体験について、自分が感じたことを書きます。先に述べたように、いじめで大切なのは、いじめられた人の気持ちです。表面的には軽微に思える行為でも、いじめられた人が屈辱的な気持ちになったり、悲しい気持ちになったりすれば、立派ないじめです。いじめられたときにこう感じた、いじめを目撃してこんな気持ちになった、もしくは、いじめられた人はきっとこんな気持ちだったに違いない、と自分の気持ちを盛り込むことで、より共感を呼ぶ作文となります。

どうすればよい社会になるかを書く

最後に、どうすればいじめのない社会になるかを書きます。全国中学生人権コンテストの応募規定にある「基本的人権の重要性、必要性について考えたこと」の部分です。社会への提言と、いじめのない社会を実現するためには今の自分に何ができるかを書いて締めくくります。

受賞作に見る書き方のヒント

実際にいじめを題材にした作品が、全国中学生人権作文コンテストで入賞しています。いじめをどのように取り上げればいいのか、受賞作の例を参考にしてみましょう。

第38回全国受賞作『「良い学校」って?」

岐阜県恵那市の中学3年生の作品『「良い学校」って?』は、第38回全国中学生人権作文コンテストで法務事務次官賞を受賞しています。この生徒は、中学2年生のときに、数名の女子から悪口を聞こえるように言われるなどの嫌がらせを受けました。本人はとてもつらかったのですが、単なる軽い嫌がらせと自分を言い聞かせてきました。ある日、道徳の授業でいじめを苦に自殺した生徒の遺書を読み、自殺した生徒が受けていたいじめが、自分の受けている嫌がらせと重なり、ショックを受けました。ところが、先生は「この学校はいじめのない良い学校」と発言し、生徒は違和感を覚えます。表立ったいじめの行為が見当たらないからといって、「いじめのない」と決めつけるのではなく、生徒一人ひとりの気持ちに向き合うことが必要だと訴えています。

参考

第38回全国中学生人権作文コンテスト受賞作文集、P46~49

第36回全国受賞作『日本のいじめ対策は間違っている』

北海道旭川市の中学2年生の作品『日本のいじめ対策は間違っている』は、第36回全国中学生人権作文コンテストで内閣総理大臣賞を受賞しています。この生徒はドイツに住んだ経験があり、ドイツと日本のいじめの違いとその原因を探っています。ドイツでのいじめは暴力的である代わりにその場で解決されることが多いのに対し、日本は集団無視など精神的な嫌がらせで長期化する傾向があると分析しています。

日本ではいじめの当事者以外の周囲の人が、ドイツのようにいじめの「ストッパー」の役割を果たさず、いじめられている生徒に同情はしても手を貸すことはないと述べています。その原因として、自分の意見を持つことを避ける風潮を挙げています。そのうえで、日本のいじめ対策はいじめの当事者に対するものが多いが、もっと周囲の人に目を向けるべきと主張しています。

参考

第36回全国中学生人権作文コンテスト受賞作文集、P10~13

第35回全国受賞作『いじめを通して』

第35回全国中学生人権作文コンテストで法務事務次官賞を受賞した兵庫県多可町の中学3年生の作品『いじめを通して』は、今いじめられてつらい思いをしている人への応援歌とも言える作文です。学校で行われる「いじめについてのアンケート」をただの紙切れだと思っていた生徒にとって、それが唯一の命綱に変わった経験をつづっています。いじめを受けSOSを出しながらも救済されず、自殺した生徒のニュースに心を痛めながらも、いつかは救ってくれる人が現れるので、命だけは落とすなと強力なメッセージを発しています。

参考

第35回全国中学生人権作文コンテスト受賞作文集、P50~53

まとめにかえて:パクリはバレる

人権作文の宿題提出期限を目前に、すがる思いでインターネットを検索する人もいるでしょう。インターネット上には作文の構成を考えるのに役立つ情報がたくさんあります。作文を書くための事前調査は大いにするべきですが、中にはそっくりそのままコピーしたくなる内容もあるかもしれません。しかし、剽窃チェックのソフトにかければ、盗作はすぐに検出できます。パクリはいつか必ずバレると心得ましょう。自分の身の周りや自分の体験を注意深く思い返せば、作文の題材は見つかるはずです。

参考

第39回全国中学生人権作文コンテストを実施します|法務省

人権作文を応募いただく生徒の皆さんへ~人権作文の書き方~|法務省

日本国憲法|衆議院

いじめの定義(「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」における定義)|文部科学省

中学生の人権作文!簡単な書き方の例は?いじめのテーマ攻略法! | 流行ニュース速報発信局

人権作文の書き方 全国中学生人権作文の例文/書き方/テーマを紹介 | 人権作文の書き方についての情報を掲載しております。

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Sachiko

海外在住20余年、子育て・教育ライター。明治大学政治経済学部卒業。中国へ2年間留学。中国北京の日系広告会社で営業マネージャー。 結婚・出産後、北京で専業主婦。夫の転勤に同伴したフィジーで、アジアの女性のためのソーシャルグループ代表を務め、文化交流イベントを企画運営。2018年より、インド・デリー在住。ライターとして活動を始める。中国語HSK6級。TOEIC945点。中国生まれ、フィジー育ち、デリーで思春期を迎えた1人息子の母。 中国時代から共に過ごす老犬の介護中。