身近な「差別」をテーマに人権作文を書こう!書き方3つのステップ - cocoiro(ココイロ)

作文の宿題はなかなか取りかかりにくいものです。しかもそれが「人権作文」となると、なおさら何を書けばいいのか分からないのではないでしょうか。人権作文は、身の周りで起こった差別を題材にするのが最も書きやすいでしょう。今回は、全国中学生人権作文コンテスト受賞作の題材の例と、書き方の3つのステップを紹介します。

人権作文とは?

そもそも、人権とは?

人権作文とは何かを考える前に、まず全国中学生人権作文コンテストの主催者でもある法務省の「人権」の定義を見てみましょう。

「人権」とは「すべての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」あるいは「人間が人間らしく生きる権利で、生まれながらに持つ権利」であり、だれにとっても身近で大切なもの、日常の思いやりの心によって守られるものだと私たちは考えています。

(引用元:主な人権課題|法務省

基本的人権の尊重は、日本国憲法第十一条にも明記されています。

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

(引用元:日本国憲法|衆議院

つまり、人権とは人間が人間らしく生きる権利で、誰もが生まれながら持っており、侵すことのできない永久のものです。

全国中学生人権作文コンテスト

しかし現実の社会では、日々の生活の中で人権が守られないことが多々あります。いじめ、虐待、性差別、障害者や病気に対する差別、外国人に対する差別など、周囲を見渡せば差別に苦しむ人は少なくありません。そのため、法務省と全国人権擁護委員連合会は、1981年より次世代を担う中学生を対象に全国中学生人権作文コンテストを実施しています。身の周りで起きている差別を題材に作文を書くことで、人権問題に対する理解を深め、高度な人権意識を養うことを目指しています。

法務省のこの活動に連動し、近年では全国の中学校で人権作文を宿題にするところが増えています。せっかく書くのであれば、全国中学生人権作文コンテストの予備選である地区大会への応募を目指しましょう。

身近に感じた「差別」を書いた受賞例

人権作文に何を書くかについて、全国中学生人権作文コンテストの応募規定にはこう書かれています。

日常の家庭生活,学校生活,グループ活動あるいは地域社会との関わりなどの中で得た体験等を通じて,基本的人権の重要性,必要性について考えたことなどを題材としたものとする。

(引用元:第39回全国中学生人権作文コンテストを実施します|法務省

つまり、日常生活の中で体験したことで、人権の大切さを感じたことを書けば良いのです。実際に、全国中学生人権作文コンテストの受賞作の多くは、自分の身の周りで起こった差別体験を書いています。受賞作の中から題材のヒントを探してみましょう。

障害者に対する差別

  • 脳性まひの障害がある作者と障害のないクラスメイトが、互いのことを「知らない」ため、相手を傷つけてしまったり、心に壁を作ってしまったりした。
  • 「人の幸せは人に必要とされること」という考えに基づき、障害者を積極採用している会社に感銘を受けた作者が、障害のあるクラスメイトとの関わりを通して、私たちの社会は障害者や健常者などさまざまな個性のある人で成り立っていることに気づいた。
  • ダウン症の弟との生活が、家族それぞれに対してプラスの効果を上げたことを元に、障害のない「完璧」な人間を望む風潮に異議を唱える。
  • 母親が学生時代にアルバイトをしていた店に、障害者がトイレを借りに来た。店長は店の規定を理由に、来店客以外のトイレの使用に利用料を課そうとする。介助者が「障害者なのに」と反発する中、態度を貫いた店長の方こそ障害者を対等に扱ったのだと気づいた。
  • 自閉症の弟を持つ作者が、災害時の避難について学び、知的障害者の避難がいかに難しいかについて論じた。

病気に対する差別

  • ハンセン病患者のインタビュービデオを見て、今までハンセン病患者に同情はしても理解していなかったことを痛感した。
  • 病気のため特別支援学校に転校。充実した学校生活を送っているにもかかわらず、「特別支援学校=かわいそう」と言われて違和感を覚えた。
  • 小児がんを患う子供たちの脱毛による精神的苦痛は、病気と同じくらい辛いことと知り、髪を伸ばしてヘアドネーションをした。

外国人に対する差別

  • 父親の海外赴任に付き添い、自分が外国人となり、人種差別を身をもって体験。帰国後、日本国内にもさまざまな人種差別があることに気づいた。
  • 外国にルーツを持つ子供が、異文化理解を深める活動を行っていた両親に感銘を受け、「地球人」としての自覚に芽生える。
  • 国際交流事業で韓国を訪れた作者が、ホストファミリーとの関わりを通して互いの偏見を取り除き、理解し合えた。

高齢者に対する差別

  • 年老いた祖母との生活の中で、人によって物事の処理のスピードが異なることに気づき、「待つ」ことの大切さを知った。

性別による差別

  • 小さいころ盆踊りの太鼓たたきに興味を持ちやぐらに上がったところ、「おなごはやぐらに上がるもんじゃない」と叱責された。その経験が障害となり、憧れを抱きつつも長い間再びやぐらに上がる勇気のなかった作者が、中学になってやぐらに上がり、盆踊りの音頭をとった。

性同一障害(LGBT)に対する差別

  • いつも「女の子らしさ」を求められることに生きづらさを感じていた作者が、男性にも女性にも当てはまらない「Xジェンダー」の考え方に出会い、やっと自分の「種類」を見つけた。