幼稚園無償化の所得制限とは?0~2歳児と3~5歳児での要件の違い ( 2 )

無償化対象の所得制限について知る

所得制限があるのは0~2歳児のクラス

無償化といっても、すべてのケースで完全無償になるわけではありません。世帯の所得制限が課されるのは、次の場合です。

  • 保育所・認定こども園などの0~2歳児クラス(※幼稚園への入園は満3歳から)
  • 認可外保育施設などの0~2歳児クラス

所得制限と無償化範囲①:保育所・認定こども園では

保育所や認定こども園などの場合は、次のような所得制限が課せられます。

所得制限 無償化の内容
住民税非課税世帯 無料
年収360万円未満相当世帯 第2子は半額、第3子以降は無料

2人以上の子供を持つ家庭では、住民税非課税世帯でなくても、子供の人数によって利用料が減額されます。原則として保育所などに通う子供が2人以上いる場合となりますが、年収360万円未満相当世帯のみ、一番年上の子供が小学生以上であっても、第2子以降の減額を受けられます。

所得制限と無償化範囲②:認可外保育施設では

認可外保育施設などの場合は、次のような所得制限が課せられています。「保育の必要性」の認定も必要です。

所得制限 無償化の内容
住民税非課税世帯 月額4.2万円まで無償

参考

幼児教育・保育の無償化|内閣府

幼児教育・保育の無償化はじまります。|内閣府特設サイト

なぜ年齢で無償化の内容に違いがあるのか?

財源に限りがあるなど所得制限を設ける必要性があるとしても、3歳以上は原則全世帯が無償で、0~2歳は経済的に苦しい家庭のみを対象としているのは、なぜなのでしょう。

経済支援は幼い子供を持つ保護者の必要度が高いから?

ひとつ考えられるのは、0~2歳など幼い子供を持つ保護者の方が経済支援の必要度が高いため、優先的に対象とされている、というものです。経済産業研究所の研究員、周燕飛氏のレポート『専業主婦世帯の貧困:その実態と要因』は、次のような指摘をしています。

貧困専業主婦の約半数は、3歳未満の児童を抱えていることから、保育待機児童がとくに多い0-2歳児向けの保育サービスを拡充させることが必要不可欠と考えられる。

(引用元:周燕飛(2015年)『専業主婦世帯の貧困:その実態と要因』独立行政法人経済産業研究所ディスカッション・ペーパー 15-J-034

0~2歳児の保育サービスが経済支援のポイントになることが分かりましたが、無償化制度の所得制限はむしろ、0~2歳児向けサービスに制限を設ける規定。拡充とは言いがたい施策です。利用しやすくなれば希望者が増加して競争率が上るため経済条件で限定した、と考えられなくもありませんが、「保育の必要性の認定」というハードルも残っているため、働きたいのに働くことができないでいる人たちにとっては、優遇策とも言えません。

3歳児未満は家庭で世話をすべきだから?

もうひとつ考えられるのは、保育制度の根底に「3歳までは家庭で育児をすべき」という考えが存在する可能性です。論文『乳児保育研究に示された課題についての検討』は、1947年の児童福祉法制定から1990年代の終わりまで、3歳未満児の保育を取り巻く状況についてまとめています。

1947年の児童福祉法から始まった認可保育所での3歳未満児保育は、女性の就労増加とともに拡大してきました。1998年には乳児保育指定保育所制度が廃止され、すべての保育所で3歳未満児の保育が行われるようになります。その一方で、中央児童福祉審議会保育制度特別部会は1963年、母親を中心とする家庭保育とそれを守る公的補助を原則とした「保育7原則」を発表。最近では2013年、政府が「3年間抱っこし放題での職場復帰支援」「3年育休」の考えを打ち出しました。

当事者を含めた各方面からの批判を受け、制度化されるには至りませんでしたが、無償化制度の設計には、この「3歳までは家庭で」の片りんがうかがえるのではないでしょうか。

とはいえ「0~2歳には所得制限つき」という無償化制度は、3歳未満児の家庭育児支援というより施設保育の制限と考えるのが妥当であり、経済支援策としては疑問が残ります。また「3歳までは家庭育児」という考え方には賛否両論あり、保護者のニーズだけではない乳児保育のポジティブな意義を示す研究報告も発表されています。

参考

西村真実(2015年)『乳児保育研究に示された課題についての検討』帝塚山大学現代生活学部紀要 No.11

池本美香(2013年)『企業と子育てを考える~3年育休は評価できるか~』ビジネス法務

「育休3年」って誰のため?安倍首相の子育て支援策に批判噴出|ハフポスト日本版

「専業主婦」には女性をめぐる社会問題が集約されている|WEZZY

保護者と子供の現状は年齢や保育施設の種類で区分できない

保育制度は細かく施設区分され、無償化制度もその区分に従いますが、利用実態は一様ではありません。不規則な働き方で収入の低い家庭の方が認可保育所に入園しにくかったり、幼稚園の多くが「預かり保育」で時間延長を行っていたりと、区分の設定を越えるような現状があります。子供が幼いうちから働く母親も増え、待機児童の保育ニーズが最も高いのは3歳未満児です。

幼児教育無償化には、教育格差の是正や母親の就労支援などさまざまなねらいがあります。そのため単純に評価することは難しいのですが、「家庭の経済的な負担を軽減する」という面を考えるなら、子供の年齢や保育施設の種類は、無償化の対象や額を区切るには現状を反映していない区分であると言えるのではないでしょうか。

参考

大石亜希子(2018年)『日本の保育制度』千葉大学グローバル関係融合研究センター・ワーキングペーパー

西村真実(2015年)『乳児保育研究に示された課題についての検討』帝塚山大学現代生活学部紀要 No.11

おわりに

幼児教育・保育の無償化制度については、批判的な見解も多く、評価の定まった制度であるとは言えません。始まって数ヶ月、すでに事前の試算に狂いが生じているとの報道もあります。これまでの保育制度の経緯を見ていると、無償化についても、制度の改訂を重ねていくのではないかと思われます。現制度を賢く利用しながら、よりよい制度を手に入れるために、当事者の実感を声として上げていきましょう。

この記事をかいた人

菊池とおこ

北海道大学文学部行動科学科卒。行政系広告代理店、医薬系広告代理店、地方自治体の結婚支援事業担当などを経て独立、ライターに。女性のライフイベントと生き方、働き方、ジェンダー教育などが主な関心分野。大学院進学を視野に入れて地元大学のゼミ(ジェンダー・スタディ)に参加中。趣味は音楽、中学より本格的に合唱を始め、現在も合唱団に所属。ネコのおかあさん。子供と接する時は、自由人の叔父ポジション。