過度激動とはギフテッド・HSPの人などに見られる特徴。事例紹介 - cocoiro(ココイロ) - Page 2

過度激動の概要

続いては過度激動のある人がどのような反応を見せるのかを解説します。これまでの研究で、大まかに5つのタイプに分けられることが判明しています。

感情性OE

喜怒哀楽の全ての感情が、平均的な人よりも強い状態です。感情性OEがある人は、周囲から見るとヒステリックに映ることもあるかもしれません。

ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情も激しいのが特徴です。そのため進学・進級・就職などの大きな環境の変化に激しい恐怖を抱く人もいます。

想像性OE

想像力がとても豊かな状態で、人によってはそれを創作などに生かすこともできます。一方、自分の想像に浸り「心ここにあらず」の状態になったり、現実と想像の区別が分からないまま人に話して聞かせるために、周囲を混乱させてしまったりすることもあるようです。

知性OE

知性OEは他と比べるとポジティブに感じる人もいるかもしれません。知的好奇心があふれて止まらない状態です。

鉄道や恐竜など、子供たちが何かに関心を抱くと大人が驚くほどのスピードで知識を吸収していくことがあります。知性OEはその度合いがさらに激しい状態を想像してみると分かりやすいでしょう。知的好奇心があることはいいことですが、「どうして?」「なんで?」を繰り返されたり、「本を買ってくれ」「図書館に連れて行ってくれ」などという要求を繰り返されると周りの大人も疲れてしまいます。

精神運動性OE

心の状態の激しさが動作にも表れます。興奮すると体が動いてしまうのはどんな人にもあることですが、OEの場合はその動きがとても激しく、日常的に出現するようです。

平均的な人から見れば「そんなに慌てることないのに」「そんなにイライラしなくても」と思うような状況で精神運動性OEが出るため、周囲は目ざわりに感じたり戸惑ったりすることもあるようです。

知覚性OE

照明器具の明かりが苦手、チャイムの音が嫌い、化学繊維の洋服やタグの部分がチクチクして着られないなど、五感が研ぎ澄まされているために不快感を感じやすいのが知覚性OEです。一方で食事がおいしい、風景がきれいといった快感も強く感じます。

過度激動によって被る可能性のある不利益

ここまで過度激動の特徴について解説してきました。過度激動があるゆえに日常生活で不利益を被ることもあります。どのようなことでしょうか。

他の精神障害への誤診

これまでに解説してきた過度激動のような特徴は、他の精神疾患や発達障害のある人にもみられることがあります。そのため、簡単な診察・問診だけで疾患・障害と誤診されてしまうことがあるようです。

上越教育大学の角谷詩織准教授は、特にADHDとアスペルガー症候群と誤診されることが多いと指摘しています。海外では誤診を避けるためのチェックリストなどが作られているそうです。2019年より日本でも科研費での研究が始まっているため、これから過度激動に対する理解が深まっていくことを期待したいところです。

参考

ギフティッド児の誤診を防ぐ:その理解と,適した環境の必要性 (3) | CRN 子どもは未来である

高い知能をもつ人が示す過度激動特性(刺激への感受性の強さ)に関する尺度開発 (KAKENHI-PROJECT-19K02935)  | KAKEN — 研究課題をさがす

いじめなど周囲からの不理解

過度激動を持つ人は、言動や感性に周りの人と違う面があります。この違いからいじめを受けたり、「もっと落ち着きなさい」「それは自分でどうにかできる問題だ」などと理解されないことがあります。

いじめは心身に危害を与えますし、周りの理解がないと本人は孤立してしまいます。社会生活を営む上で、周囲が過度激動に対して適切な理解をすることが求められています。

本人の特性が生かせない環境に置かれる

落ち着きがないから成績が悪いのだ、静かに作業できないからこの仕事に向いていない、と周囲に判断され、せっかく本人が特性を持つのに、それを生かせないことがあります。

特にギフテッドの人は非常に高いIQと能力を持ちますので、それが生かせない生活を送ることは苦痛です。また社会的な損失も大きいと言えるでしょう。

まとめ

日本ではまだまだ資料も少なく、認知度も低い過度激動について紹介しました。少しずつ研究が進んできてはいますが、特に過度激動のある子供を育てている人にはまだまだ情報も周囲の理解も足りていないのが現状です。「そういう特性を持っている人もいるんだな」という知識だけでも周囲が持てば、生きづらさが少しなくなる人もいるかもしれません。

参考

Overexcitabilitiesとの共存。Mai C.|note

アメリカのギフテッド教育事情 | 論文・レポート

ギフテッドの概念と日本における教育の可能性 | 滋賀大学学術情報リポジトリ

日本のギフテッド当事者に対する特別な教育的ニーズに関する聞き取り調査 第三報 | 高知大学学術情報リポジトリ

ギフテッドの情緒社会面・行動面・感覚面における特別なニーズと対応 | 高知大学学術情報リポジトリ

認知機能にアンバランスを抱えるこどもの「生きづらさ」と教育 : WISC-Ⅳで高い一般知的能力指標を示す知的ギフティッド群 | HUSCAP

過度激動(OE)について | ユア子育ちスタジオ

この記事をかいた人

akahoshitomoka

piggiesagogoクロシェター・ライター。 オリジナルの編み物作品の作り方を販売しながらライターもしています。守備範囲はハンドメイドから不動産まで。三浦半島が好きです。