流動性知能とは何か?流動性知能を鍛える5つの方法 - cocoiro(ココイロ) - Page 2

流動性知能を鍛える5つの方法

流動性知能を鍛える方法として有名なものに、Nバック課題があります。代表的なNバック課題を1つご紹介しましょう。

アルファベットがランダムに読まれ、3つ前のアルファベットと同じアルファベットが読まれたときにボタンを押します。

例:C J L M N L A I A H K A N O S N T

上の課題の場合は、下線の引かれたアルファベットは、3つ前に読まれたアルファベットと同じなのでボタンを押します。

このように「覚える」と「聞いた情報を処理する」という2つの動作を一緒にすることで、ワーキングメモリーのキャパシティをある程度広げられることが分かっています。Nバック課題は脳トレゲームとしてアプリなども開発されています。

しかし、決められた範囲内では効果が見られるNバック課題も、生活の中の多様な問題解決能力にどれほど効果があるのかははっきりしません。また、単調なゲームを日々こなすのもあまり現実的ではないでしょう。

したがって、ここでは、認知科学者でセラピストのアンドレア・クシェウスキが提唱する、日常生活の心がけで流動性知能を鍛えられる5つの方法をご紹介します。この中から1つ実践してみるだけでも脳にいい刺激を与えますが、流動性知能を鍛えるには5つすべて実践しましょう。それも、たくさん実践すればするほど効果が大きいといいます。

新しいことに取り組む

常に新しい情報に触れ、新しいことに取り組みましょう。新しい経験をすると、新しいシナプスが形成され、脳細胞が活性化されます。脳には可塑性(かそせい)があります。可塑性とは、脳が環境に対して最適なシステムを作り上げるためによく使われる神経細胞の回路の効率を高め、使わない神経細胞の回路の効率を下げる現象です。つまり使われない神経細胞は退化してしまいます。したがって、新しいことにどんどんチャレンジし、まだ使っていない脳神経を覚醒させることが効果的だと考えられています。

難しいことにチャレンジする

難しい脳トレゲームに挑戦すると、劇的な効果があらわれることがあります。しかし、残念ながら、それは長続きしません。脳トレゲームが、本当に脳のトレーニングとして役立つのは、ゲームのやり方がよく分からず試行錯誤している間のみです。ゲームのやり方をいったんマスターしてしまうと、後は効率を上げるだけなので、脳は使わなくてもよくなります。本当の脳トレは、何か1つやり遂げたら、次にもっと難しい問題にチャレンジすることです。

クリエイティブに考える

クリエイティブと言っても、芸術や音楽を創作するということではありません。クリエイティブに考えるとは、枠をはめずに自由に考えをめぐらすことを指します。例えば、さまざまな分野のトピックについて考える、常識にとらわれない新しいアイデアについて考える、一見まったく関係ないように思える事柄を結び付けて考えるなどです。

便利なテクノロジーをあえて使わない

世の中にはさまざまな便利なツールがあふれかえっています。かつては多大な労力と時間を使ってしていたことを、現在は、便利なツールを使っていとも簡単に瞬時にやってのけられます。しかし、「便利」は脳の敵です。

携帯電話が普及する前、友達が約束の時間までに待ち合わせ場所に現れないと、私たちは友達が電車に乗り遅れた可能性や、待ち合わせ場所を間違えた可能性など、さまざまな可能性に思いを巡らし対処しました。GPSが普及する前は、初めて訪れる場所に行く場合、何度も地図を確認し、地図で見る鳥瞰図を現実に見える風景に当てはめて考えていました。脳をフル回転させて問題解決に当たっていたため、それらの苦労が空間把握能力や推理力の向上に大きく貢献していたことは間違いありません。

便利なデジタルツールは、人間の代わりに問題を処理してくれるため、私たちは脳を使う必要がなくなってしまいます。便利なデジタルツールをあえて使わない日を設け、脳を活性化させましょう。

いろいろな人と付き合う

自分と違う年齢、性別、学校または職業、趣味、国籍のさまざまな人と付き合いましょう。いろいろな人と付き合えば、先に述べた4つのポイントを実行しやすくなります。

違う趣味の人と付き合えば、今まで自分の興味なかった事柄にも興味を持ち、新しいことを始めるきっかけになるかもしれません。まったく違う考え方の人に出会えば、「こんな考え方もあったのか」と自分の常識を打ち破ることができます。新しい人に会えば、新しい所へ行く機会もできるでしょう。時間に余裕を持って出かけ、GPSなしで訪れてみましょう。

終わりに「よく食べ、よく寝て、よく遊べ」

流動性知能を鍛える5つの方法の前に、脳を育てる基本の「き」が、「よく食べ、よく寝て、よく遊べ」です。1日3回栄養のバランスの取れた食事を心がけましょう。脳は夜寝ている間に昼間の出来事をおさらいし、定着させています。脳が育つ夜に、良質で十分な睡眠を取りましょう。脳の発達には、適度な運動も欠かせません。外で思いっきり体を動かして遊ぶことは、元気な体だけでなく、元気な脳も作ります。

 

参考

You Can Increase Your Intelligence: 5 Ways to Maximize Your Cognitive Potential|Scientific American

高齢期における知能の加齢変化|健康長寿ネット

経験を活かすのも難しい?|労働政策研究・研修機構

大人になっても頭は良くなるの?|ヘルスUP|NIKKEI STYLE

流動性知能と結晶性知能とは? 知能を鍛えるために2種類の知能とトレーニング方法を知ろう|LearnTern(ラン・タン)

知能を高める5つの方法|GIGAZINE

発達障害の僕がN-back課題を続けて現れた効果|カワウソは考える。

この記事をかいた人

Sachiko

海外在住20余年、子育て・教育ライター。明治大学政治経済学部卒業。中国へ2年間留学。中国北京の日系広告会社で営業マネージャー。 結婚・出産後、北京で専業主婦。夫の転勤に同伴したフィジーで、アジアの女性のためのソーシャルグループ代表を務め、文化交流イベントを企画運営。2018年より、インド・デリー在住。ライターとして活動を始める。中国語HSK6級。TOEIC945点。中国生まれ、フィジー育ち、デリーで思春期を迎えた1人息子の母。 中国時代から共に過ごす老犬の介護中。