乳児期に発生しうる「関係性障害」
乳児期の子供はまだ言葉を発することができず、うまくコミュニケーションをとれません。懸命に愛情を注いでいてもなかなか育児がうまくいかない、と悩んでしまうこともあるでしょう。
その際に起こり得る問題の1つに、関係性障害が挙げられます。生まれたばかりの乳児は無力な状態ではあるものの、それぞれ個性を持っています。泣く、喃語を発する、動くなどの自己表現がうまくできる子もいれば、できない子もいます。後者の場合は、保護者も赤ちゃんの欲求を汲み取りづらく、結果として良い関係を築きづらくなることもあります。
要因は子供だけでなく、保護者側にある可能性もあります。出産直後のお母さんは産後うつなどを発症することもあり、心身ともに疲れを感じやすい時期です。また、人によっては幼いころに虐待を受けていたなどの問題を抱えている場合もあります。これらの要因によっても、乳児との良い関係性を保てなくなってしまうことがあります。
発達段階「乳児期」の親の対応は?
ご紹介したように、乳児期には2つの発達課題をクリアして「希望」を獲得することが必要になります。子供が希望を獲得するために、親はどのような対応をすればいいのでしょうか? 今回は、4つの対応についてご紹介します。
1歳までは願いをたくさん叶えること
肯定的な発達課題の「基本的信頼感」を得るためには、赤ちゃんの欲求を満たしてあげることが大切です。そのため、特に1歳になるころくらいまでには、できるだけ多くの望みを叶えてあげましょう。
乳児が望んでいることには、自分が不快に思っていることを取り除いてほしいという願いも多く含まれています。不快感を解消してもらうことで、自分は大切にされているという信頼感を感じられるようになるでしょう。
温かいまなざしで見守ること
基本的信頼感を得るためには、親や関わる人々が子供に対して温かなまなざしを向けることも大切です。具体的には笑いかけてあげたり、優しい言葉をかけてあげたりするといいでしょう。
赤ちゃんの時期は、言葉は理解できていないかもしれません。ですが、相手が自分に向けている感情が温かなものであれば、安心することができます。この安心感によって、周りの人々や社会に対して信頼を持てるようになっていくのです。
スキンシップを十分にとること
そのほかに、スキンシップをたくさんとることも基本的信頼感を育むためには大切なことです。言葉だけではなく実際にふれあうことで、より確かな愛情を子供に伝えることができます。温かなぬくもりと愛情で包まれた赤ちゃんは、周りに身を委ねることに大きな安堵の気持ちを持つことができます。
時にはあえて満たさないこと
ご紹介したように、発達課題には否定的なものもあります。否定的な課題である「基本的不信感」も時にはあえて感じさせることで、より信頼感を強めたり、人を信じすぎたりすることを防ぐことができるようになります。
しかし、オムツを長いこと替えないままでいる、ご飯を与えないなどの行為をしていいというわけではありません。乳児の欲求をすべて満たすのはそもそもとても難しいことなので、積極的に不快感を与える必要はないのです。
赤ちゃんは言葉を発することができないため、何に対して不快感を抱いているのかを確実に把握することはできません。そのため、「すべてをなんとかしてあげなくては!」と自分を追い込まないことが大切です。多少不完全であることによって、子供は基本的不信感を得ることができます。結果として基本的信頼感が不信感を上回れば、希望を獲得することができるのです。
おわりに
生まれたばかりの我が子はかわいいものの、お世話をすることは容易ではありません。しかし、保護者や関わる人々の温かな愛情はきちんと子供に伝わります。そして時には不信感を感じながらも、やがて希望を獲得していくのです。
基本的信頼感や不信感、そして希望は今後の人生の土台となっていきます。目の前の我が子に対して懸命に愛情を注ぐことが、子供の人生を良くするものになるということを忘れずに接してあげましょう。
参考
エリクソンの「発達段階」を知ろう。年齢別「発達課題」はクリアできてる?|こどもまなび☆ラボ