ビタミンB1欠乏症になる原因
ビタミンB1の不足は食生活だけが原因ではありません。ここでは、その他のビタミンB1が不足する理由をご紹介します。
アルコールによる影響
職場や大学では歓迎会や懇親会などでアルコールを飲む機会もあるでしょう。このアルコールはビタミンB1を大量に消費してしまいます。
アリナミンはアルコールがビタミンB1を消費する仕組みを以下のように説明しています。
アルコールを分解し、最終的にエネルギーを作り出すときにビタミンB1が消費されるのに加えて、大量にお酒を飲んだときにはさらにビタミンB1が必要になるとされています。
先ほどアセトアルデヒドはALDH2によって分解されると説明しましたが、お酒を大量に飲んだときはALDH2だけでは分解が追いつかなくなり、違う方法で分解されます。この反応で、ビタミンB1が大量に消費されてしまうのです。
(引用元:お酒を飲む人はビタミンB1不足にご注意!(2)|アリナミン)
また、アルコールは大量にビタミンB1を消費するだけではなく、ビタミンB1を吸収しにくくする効果もあります。そのため、余計にビタミンB1の不足につながる可能性があるのでしょう。
吸収不良症候群の症状
吸収不良症候群とは、消化や吸収の働きが低下してしまい、食事をとっても十分に栄養を吸収できなくなる症状のことをいいます。栄養素を吸収できなくなると、ビタミンB1だけではなく、他の栄養素が欠乏したことによる症状も発生します。
この吸収不良症候群は、さまざまな何らかの事情で小腸を大幅に切除した場合や小腸粘膜に異常が発生する病気にかかった場合など、栄養を吸収する小腸に関連することが多いそうです。
参考
高カロリー血液の輸血
ビタミンB1を投与せずに高カロリー血液の輸血を行ったため、ウェルニッケ脳症が発症するといった医療ミスについて、1999年に裁判で争われた事例があります。
このように、高カロリー血液の輸血は大量のビタミンB1を消費するため、適切な処置を行わなければ、ビタミンB1の欠乏により病気を発症してしまう可能性があります。
参考
仙台地方裁判所平成11年9月27日判決 判例タイムズ1044号161頁 | Med safe.Net
妊娠時による一時的な食欲不振の影響
妊娠中のつわりが悪化すると、頻繁に吐いてしまったり食べ物をまったく食べられなくなってしまったりすることがあります。これにより、体重が減少するだけではなく、栄養障害や脱水など深刻な症状につながることもあります。このような状態は「つわり」とは分けて「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と呼ばれます。
妊娠悪阻 になると、食事ができないために、ビタミンB1が欠乏し、ウェルニッケ脳症などの病気を発症してしまう恐れもあります。
参考
1日に必要なビタミンB1の量とビタミンB1を多く含む食品
ビタミンB1不足の原因の1つは偏った食生活
ビタミンB1が不足する原因の1つは、言うまでもなく偏った食生活です。バランスの悪い食事になっているだけではなく、ビタミンB1を多く消費するようなものを食べているといったことが考えられます。
このビタミンB1を多く消費するものとは、すでに説明したアルコールや清涼飲料水、インスタント食品など糖質を多く含む飲食物をさします。なぜならば、この糖質を分解するにはビタミンB1が必要不可欠だからです。
1日に必要なビタミンB1の量
健康長寿ネットによると、ビタミンB1の1日の摂取目安は以下の通りであるそうです。基本的にはビタミンB1は体外に排出されやすく、取りすぎに注意する必要性は低いでしょう。しかし、ビタミンB1をサプリメントで補給した場合、多く接種し過ぎると頭痛、いらだち、不眠、接触皮膚炎などの症状がでたという報告もあります。そのため、基本的には食事でビタミンB1をとり、補助的にサプリメントを使用した方が良いでしょう。
ビタミンB1の食事摂取基準(㎎/日)a
性別 | 男性 | 女性 | ||||
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 |
0~5(月) | - | - | 0.1 | - | - | 0.1 |
6~11(月) | - | - | 0.2 | - | - | 0.2 |
1~2(歳) | 0.4 | 0.5 | - | 0.4 | 0.5 | - |
3~5(歳) | 0.6 | 0.7 | - | 0.6 | 0.7 | - |
6~7(歳) | 0.7 | 0.8 | - | 0.7 | 0.8 | - |
8~9(歳) | 0.8 | 1.0 | - | 0.8 | 0.9 | - |
10~11(歳) | 1.0 | 1.2 | - | 0.9 | 1.1 | - |
12~14(歳) | 1.2 | 1.4 | - | 1.1 | 1.3 | - |
15~17(歳) | 1.3 | 1.5 | - | 1.0 | 1.2 | - |
18~29(歳) | 1.2 | 1.4 | - | 0.9 | 1.1 | - |
30~49(歳) | 1.2 | 1.4 | - | 0.9 | 1.1 | - |
50~69(歳) | 1.1 | 1.3 | - | 0.9 | 1.0 | - |
70以上(歳) | 1.0 | 1.2 | - | 0.8 | 0.9 | - |
妊婦(付加量) | +0.2 | +0.2 | - | |||
授乳婦(付加量) | +0.2 | +0.2 |
a.身体活動レベル2の推定エネルギー必要量を用いて算定した。
特記事項:推定平均必要量は、ビタミンB1の欠乏症である脚気を予防するに足る最小必要量からではなく、尿中にビタミンB1の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)から算定。
- 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量。
- 推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量。
- 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
(ビタミンB1の働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネットより筆者作成)
ビタミンB1を多く含む食品
ビタミンB1を多く含む食品としては、豚肉や米や小麦などがあります。ただし、米や小麦といった雑穀は米ぬかや小麦はいがに多いため精製するとビタミンB1も減ってしまいます。
ビタミンB1を多く含む食品の目安としては以下が参考となるでしょう。
順位 | 食品名 | 成分量100gあたり㎎ |
1 | 調味料及び香辛料類/酵母/パン酵母、乾燥 | 8.81 |
2 | 穀類/こめ/[その他]/米ぬか | 3.12 |
3 | 調味料及び香辛料類/<その他>/酵母/パン酵母、圧搾 | 2.21 |
4 | 肉類/ぶた/[大型種肉]/ヒレ、赤肉、焼き | 2.09 |
5 | 穀類/こむぎ/[その他]/小麦はいが | 1.82 |
6 | 種実類/ひまわり/フライ、味付け | 1.72 |
7 | 種実類/けし/乾 | 1.61 |
8 | 穀類/こむぎ/[即席めん類]/即席中華めん/油揚げ味付け | 1.46 |
9 | 肉類/ぶた/[大型種肉]/ヒレ/赤肉、生 | 1.32 |
10 | 種実類/ごま/むき | 1.25 |
(ビタミンB1の働きと1日の摂取量|健康長寿ネットより筆者作成)
ビタミンB1を効率よく吸収するポイント
ビタミンB1を効率よくとるためには、ビタミンB1を多く含む食品を食べるだけではなく、吸収効率の良い食べ方など、工夫をしてみると良いでしょう。
ビタミンB1の損失率が少ない調理法を選ぶ
ビタミンB1を効率よくとる為には、損失率が少ない調理法を選ぶことも重要です。
西山医院の院長である西山医師によるとそれぞれの調理法の欠損率は、蒸す(16%)、煮る(19%)、焼く(26%)、揚げる(31%)であるそうです。また、電子レンジでの調理はこれらの調理法よりもさらに損失率は小さくなるそうです。
参考
西山順博先生に訊きました 『ケアに活かせる栄養療法の豆知識』第5回|ナースの星Q&Aオンライン
アリシンを一緒にとる
ビタミンB1の吸収効率をあげる食べ合わせも重要です。例えば、ニンニクやネギ、ニラなどに多く含まれるアリシンをビタミンB1と一緒にとると、アリチアミンという成分になり、ビタミンB1が体に吸収されるのを助けるそうです。
まとめ
今回はビタミンB1についてご紹介しました。ビタミンB1不足による病気を予防するためにも、バランスの良い、健康的な食生活を心がけましょう。
参考