ビオチンとは「ビタミンB7」、また「ビタミンH、補酵素R」とも呼ばれたビタミンB群の一つ。マルチビタミンや、髪、肌、爪の健康に効果があるとされるサプリメントなどにも含まれているので、利用したことがある方もいるでしょう。
今回は、ビオチンの基本情報と、過剰摂取によるリスクや欠乏症についてみていきます。
もくじ
ビオチンとは
まずは「ビオチン」の働きや吸収、ビオチンが含まれる食物など、基本情報について確認しましょう。
ビオチンの働き
ビオチンは、水溶性ビタミンの一種で、全ての生物種に必須とされています。哺乳類では生合成できず、腸内細菌でも合成できるといわれていますが、それでは必要量を維持できません。食べ物で摂取する必要がありますが、幅広い食物に含まれており、通常の食生活では欠乏症は起こらないといわれています。
基本的にタンパク質と結合して存在するので、分解されにくく、加熱にも強く丈夫です。体内で「ピルビン酸カルボキシラーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、3-メチルクロトノイルCoAカルボキシラーゼ」の4種類に変わり、糖や脂肪酸、アミノ酸の代謝に関与しています。
また、ビオチンは皮膚や粘膜、爪や髪の健康にかかわるビタミンとしても有名で、「お肌のビタミン」ともいわれます。アトピー性皮膚炎や、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症(手や足の裏に湿疹ができかゆくなる病気)が改善される効能もあります。
ビオチンが不足すると、アトピー性皮膚炎、脱毛、粘膜症状、食欲不振、うつ、筋緊張低下、舌炎、蒼白、筋肉痛、結膜炎などの症状が起こるといわれています。
ビオチンが多く含まれる食べ物
ビオチンは、主にキノコ類、レバー、ナッツ類、卵黄、ししゃもやアサリなどの魚介類、納豆、玄米などに多く含まれています。詳しい含有量を見てみましょう。
鶏レバー は焼きとり串 2 本(60g)でビオチン 139.4µg、豚レバー80g で 63.7µg です。鶏卵 1 個(50g)で12.7µgのうち、卵黄1個分(16g)中に 10.4µg 含まれており卵黄に多いことが分かります
(中略)
落花生15粒(10g)で9.2µg、糸ひき納豆 1 パック(45g)で 8.2µgです。また、穀類でも玄米などの未精製のものには比較的多く精白米のめし100g(コンビニのおにぎり1個分)で0.5µgに対して玄米のめし100gでは2.5µgと4 倍です
(引用元:ビオチンとは|東北大学病院)
このようにレバーや卵黄に多く含まれています。一方で果物や野菜などにも含まれていますが、その量は少ないようです。
大量の生卵白に注意
注意したいのは、生の卵白を大量に、長期間食べ続けること。生の卵白に含まれる「アヒジン」はビオチンと結合するため、消化管でのビオチンの吸収が阻害されてしまい、欠乏症が起こるリスクが高まります。ちなみに、加熱された卵白の場合は、悪影響を起こしません。
ビオチン過剰摂取のリスク
気になるのが、ビオチンを過剰に摂取することで起こるリスクです。どのようなリスクがあるのか確認しておきましょう。
一般的には過剰症は見られない
ビオチンは水溶性ビタミンの一種なので、過剰に摂取したとしてもすみやかに尿中に排出されます。そのため一般的に過剰症は見られません。
妊娠中のリスク
一般的に過剰症はないといわれるビオチンですが、哺乳動物の実験では、妊娠中に多量のビオチンを投与すると、妊娠初期の胚死亡や胎盤、卵巣の委縮が起こるともいわれています。
胎児に影響が出る場合も
厚生労働省によると、妊娠中のビオチン摂取量は50μgとしています。ビオチンの摂取上限量は定められておらず、過剰摂取による胎児へのリスクは研究が少ないですが、マウスによる研究では以下のような結果が出ています。
母体と胎児の肝臓中ビオチン濃度の比較により、ビオチン添加群において胎児に多量のビオチンが供給されたことが明らかとなった。(中略)ビオチン1%添加群の胎児で、主に短肢症、小顎症および浮腫が高頻度で見られた。過剰摂取の影響は、母体に比べ胎児が顕著であり、胎児発育に影響があることが示された
(引用元:ビオチンサプリメントの過剰摂取による胎児発育への影響|兵庫県立大学環境人間学部食環境解析学教室 P89)
この研究では、妊娠中のビオチンの含有量には上限量を設定する必要性を説いています。
大量摂取で検査に影響が出る場合も
ビオチンを毎日大量に摂取していると、検査に影響が出る場合もあります。量に影響が出るのは甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン、フェリチン、エストロゲンなど多様にわたります。