もしパントテン酸欠乏症になったらどのような症状が出る?
現代日本の平均的な食生活ではパントテン酸欠乏はほとんど起こらないと考えられています。しかしもしパントテン酸が欠乏した場合、人体にはどのような影響が及ぶのでしょうか。
成長停止
子供の場合、考えられる症状として成長停止が挙げられます。しかしこれはパントテン酸欠乏状態が続き、症状が進行した場合です。初期症状としては下に挙げるような症状がまず見られるそうです。
副腎などが機能不全に陥る
副腎皮質や消化管などの臓器が機能不全に陥ります。これも進行したときに見られる症状です。
疲労感・食欲不振など
パントテン酸は糖質・タンパク質・脂質を代謝させるときに、必要となるビタミンです。そのため不足するとまず体内でのエネルギー産生が滞るようになります。十分なエネルギーが作れずに体が疲れやすくなります。消化吸収にも悪影響が出るので食欲不振にも陥るようです。
疼痛
疲労感などに続いて見られる症状は頭痛や体内の疼痛です。また知覚が異常になり、不眠などの症状も出てきます。
参考
実際みんなのパントテン酸摂取状況はどうなっている?
「普通に食事をしていれば大丈夫」と言われても、もしかしたら不足しているかもしれない……と心配になる人もいるかもしれません。実際の統計データがどうなっているか見てみましょう。
日本国内の摂取量平均は目安量を満たしている
2015年に実施された「国民健康・栄養調査」の結果によると日本人が1日に摂取するパントテン酸の平均量は5.50mgでした。同じく2015年に作られた「日本人の食事摂取基準」では、成人のパントテン酸の摂取目安量を1日5mg程度としています。
一方、子供は成人よりも少し多めの摂取を心がけた方がいいとされています。以下に年齢別の目安を示します。
目安量(㎎/日) | ||
年齢等 | 男性 | 女性 |
0~5(月) | 4 | 4 |
6~11(月) | 3 | 3 |
1~2(歳) | 3 | 3 |
3~5(歳) | 4 | 4 |
6~7(歳) | 5 | 5 |
8~9(歳) | 5 | 5 |
10~11(歳) | 6 | 6 |
12~14(歳) | 7 | 6 |
15~17(歳) | 7 | 5 |
(パントテン酸の働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット より筆者作成)
MSDマニュアルでも、パントテン酸の1日摂取推奨量は判明していないものの5mgを目安としています。日本国内の平均摂取量はどちらの数値も上回っています。
MSDマニュアルにある「パントテン酸の1日摂取推奨量が判明していない」という記述に不安になる人もいるかもしれません。判明していないのはなぜかというと「先進国では欠乏状態を実験的に再現することができない」からです。
つまり実際にパントテン酸が欠乏している人がいないので、どのくらい摂取量が減ると欠乏状態になるかが分かっていないのです。このことからも国内の平均摂取量を満たしていれば欠乏症になる心配はないことが分かります。
参考
日本人の食事摂取基準(2015 年版)総論 ビタミン(水溶性ビタミン) | 厚生労働省
日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要 | 厚生労働省
ビタミンの概要 – 11. 栄養障害 | MSDマニュアル家庭版
心配であればマルチビタミンなどのサプリを摂取しよう
職業柄、子供の食生活が乱れやすく、親が不在の日に子供がちゃんと食事をしているかどうか心配だと感じる人もいるでしょう。その場合はマルチビタミンなどのサプリメントを活用しましょう。
ただし、食事によらないビタミンをたくさん摂取すると吐き気や腹部不快感などの症状が出ることがあるという報告もあります。複数のサプリメントを摂取している人は量に注意してください。
参考
まとめ
日本の平均的な食生活ではパントテン酸欠乏はほぼ起こり得ないと考えられています。パントテン酸欠乏症に該当するような体調不良が発生した場合、ほかに疾患がある可能性が考えられます。自己判断せず、必要に応じて医療機関を受診するようにしてください。
参考
ビオチンおよびパントテン酸 – 09. 栄養障害 | MSDマニュアル プロフェッショナル版