不足は危険?ビタミンK不足の影響とは
ビタミンKが不足する原因は、ビタミンKの摂取不足だけでなく、長期間の抗生物質投与の影響によって体内でうまくビタミンKが生成されなくなる、慢性の胆道閉塞症、脂肪吸収不全、肝臓病などがあります。では、ビタミンKが不足すると、どのような症状が現れるのでしょうか。
ビタミンKが不足すると血液凝固機能が低下する
例えば転んで血が出た、包丁で指を切った、歯磨きをしていたら歯茎から出血したというように、日々の生活の中で出血する場面はいくつもあります。ビタミンKが不足すると、このようなときに、血液が凝固するまでの時間が遅れることがあります。
ビタミンK不足により起こる乳児の病気
乳児はビタミンKを食品から十分にとる機会が少ない上に、体内でビタミンKを作り出す腸内細菌が未発達なことから、ビタミンKが不足する可能性があります。ビタミンKが不足することによって引き起こされる可能性のある2つの病気を見ていきましょう。
新生児メレナ
新生児に見られる、ビタミンKの欠乏により引き起こされる症状です。主に消化管からの出血によって血を吐いたり、便に血が混じるといった症状が現れます。この新生児メレナに類似した病気として、胃・十二指腸潰瘍や、母親の血液を飲み込んだ仮性メレナがというものがあります。ビタミンKの欠乏によるものかどうかは、血液検査などで明確になるようです。
乳児ビタミンK欠乏症
乳児に見られるビタミンKの欠乏症です。乳児ビタミンK欠乏症においては脳内出血につながることも多く、なんらかの後遺症が残ったり、最悪のケースでは亡くなってしまうこともあります。生命の危機に関わる、赤ちゃんにとって危険な病気の1つです。
ビタミンKを不足させないためには
それでは、ビタミンKを不足させないためにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは、1日のビタミンKの推奨摂取量や、ビタミンKが多く含まれている食品をご紹介します。
1日にビタミンKを摂取する目安
ビタミンKの摂取基準目安は、成人で150㎍といわれています。ただし、必要量は年齢によって異なります。個々の年齢で必要な目安は、公益財団法人長寿科学振興財団が運営する健康長寿ネットで公開されています。これらはあくまで摂取目安であるため、基準以上に摂取してはいけないという上限基準ではありません。
- ビタミンKの食事摂取基準(㎍/日)
性別 | 男性 | 女性 |
年齢等 | 目安量 | 目安量 |
0~5(月) | 4 | 4 |
6~11(月) | 7 | 7 |
1~2(歳) | 60 | 60 |
3~5(歳) | 70 | 70 |
6~7(歳) | 85 | 85 |
8~9(歳) | 100 | 100 |
10~11(歳) | 120 | 120 |
12~14(歳) | 150 | 150 |
15~17(歳) | 160 | 160 |
18~29(歳) | 150 | 150 |
30~49(歳) | 150 | 150 |
50~69(歳) | 150 | 150 |
70以上(歳) | 150 | 150 |
妊婦 | 150 | |
授乳婦 | 150 |
(参照元:ビタミンKの働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット)
ビタミンKを多く含む食品
ビタミンKは、緑黄色野菜や納豆などの発酵食品、緑茶や海藻類に多く含まれています。以下は、ビタミンKが多く含まれる食品例です。このような食品例を参考にして、日々の食生活に取り入れると良いでしょう。
- ビタミンKを多く含む食品
順位 | 食品名 | 成分量100gあたり㎍ |
1 | し好飲料類/(緑茶類)/玉露/茶 | 4000 |
2 | し好飲料類/(緑茶類)/抹茶 | 2900 |
3 | 藻類/あまのり/ほしのり | 2600 |
4 | 藻類/わかめ/乾燥わかめ/板わかめ | 1800 |
5 | 藻類/いわのり/素干し | 1700 |
6 | 藻類/わかめ/カットわかめ | 1600 |
7 | し好飲料類/青汁/ケール | 1500 |
7 | し好飲料類/(発酵茶類)/紅茶/茶 | 1500 |
9 | し好飲料類/(緑茶類)/せん茶/茶 | 1400 |
10 | 調味料及び香辛料類/パセリ/乾 | 1300 |
11 | 藻類/まつも/素干し | 1100 |
12 | 豆類/だいず/[納豆類]/挽きわり納豆 | 930 |
13 | 野菜類/パセリ/葉、生 | 850 |
14 | 調味料及び香辛料類/バジル/粉 | 820 |
15 | 藻類/てんぐさ/素干し | 730 |
16 | 野菜類/しそ/葉、生 | 690 |
17 | 藻類/わかめ/乾燥わかめ/素干し | 660 |
18 | 藻類/あまのり/味付けのり | 650 |
19 | 野菜類/モロヘイヤ/茎葉、生 | 640 |
20 | 豆類/だいず/[納豆類]/糸引き納豆 | 600 |
(参照元:ビタミンKの働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット)
乳児はビタミンKをどうやって補給するの?
乳児は食品を食べることができないため、外からビタミンKを摂取することが難しいです。そのため、「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)」では、以下のようにビタミンK2シロップの経口投与が推奨されています。ただし、赤ちゃんの状況によって対処方法は異なるため、これはあくまで目安と考えましょう。
<合併症をもたない正期産新生児への予防投与>
わが国で推奨されている 3 回投与は以下のとおりである。
① 第 1 回目:出生後、数回の哺乳によりその確立したことを確かめてから、ビタミン K2シ
ロップ1ml(2 mg)を経口的に 1 回投与する。なお、ビタミン K2シロップは高浸透圧の
ため、滅菌水で 10 倍に薄めて投与するのもひとつの方法である。
② 第 2 回目:生後 1 週または産科退院時のいずれかの早い時期に、ビタミン K2シロップを
前回と同様に投与する。
③ 第 3 回目:1 か月健診時にビタミン K2シロップを前回と同様に投与する。
(引用元:新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版) | 日本小児科学会 , P8)
まとめ
今回は、ビタミンKの過剰摂取や不足が引き起こす影響を中心にご紹介させて頂きました。健康な成人であれば、通常の食事でビタミンKの過剰摂取や不足は起こりにくいですが、日ごろの食事には気をつけたいものです。
また、特に生まれて間もない赤ちゃんがビタミンKの欠乏によって引き起こす新生児メレナや乳児ビタミンK欠乏症は、危険な病気です。疑わしい症状があれば、一度医師に相談してみると良いでしょう。
参考
新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版) | 日本小児科学会
赤ちゃんにビタミンK投与は必要? 止血に大切な役割 | 朝日新聞デジタル
ビタミンK欠乏症〔びたみんKけつぼうしょう〕 | 時事メディカル