過剰?不足?ビタミンAの影響と適切な量を摂取するための基礎知識 - cocoiro(ココイロ)

ビタミンというと体に良い働きをするため、積極的に摂取したいと考える人も多いでしょう。しかし、実は過剰に摂取すれば健康を損なう危険性もあるのです。今回は、レバーやにんじん、ほうれん草などにも含まれる身近な存在であるビタミンAについて、過剰摂取の危険性やどの程度摂取すれば良いのかを解説します。

とりすぎ禁物!ビタミンAの過剰摂取がもたらす影響

まずは、ビタミンAを過剰摂取した場合に起こり得る症状をご紹介します。

頭痛や吐き気など体の不調

ビタミンには水に溶ける水溶性のものと、油に溶ける脂溶性のものがあります。水溶性のビタミンは体内に取り込まれたあと、尿などで体外に排出されるため、一度に多くとっても健康を損なうリスクは低いといわれています。

一方で、脂溶性のビタミンは尿で排出されないため注意が必要です。ビタミンAはこの脂溶性のビタミンの1つで、一度に過剰摂取すると頭痛や吐き気、ものが二重に見えるといった変調が起きる可能性があります。

手足のむくみなどの発症

ビタミンAの過剰摂取を続けると、頭痛や吐き気といった症状だけではなく、手足が腫れてむくむ、毛が抜ける、皮膚が赤くなって発疹が出るといった症状も現れます。社団法人沖縄県薬剤師会によると、このような症状はビタミンAを過剰に摂取し続ければ1ヶ月ほどで発症するそうです。

参考

おくすりQ&A 副作用編 |  沖縄県薬剤師会

骨折のリスク増加

ビタミンAの過剰摂取によって骨折のリスクが上昇するという指摘もあります。総合医療情報発信サイトには、以下のように記載されています。

既成ビタミンAの過剰摂取(1,500 µgを超える量を毎日——これはRDAよりわずかに多い)により骨量が減少し、骨折のリスクが上昇することが、観察研究により示唆されている

(引用元:ビタミンA  |「 総合医療」情報発信サイト

ただし、骨折のリスクに関する研究結果には矛盾も見られ、不明点があるとされています。

また、2003年に、神戸薬科大学衛生化学研究室と成人病診療研究所の研究グループが長野県在住の健常女性464人を対象に行った研究結果が報告されました。ここでは、血中のビタミンAの濃度が高いほど骨密度を維持させる効果が確認できた一方で、一定水準を越えると骨折リスクが高まるという結果が出ています。

これらのことから、少なくとも健康な骨を維持するためにビタミンAが必要ではあるものの、過剰摂取は逆に骨の健康を損なうと考えられます。

参考

ビタミンA |「 総合医療」情報発信サイト

【日本骨粗鬆症学会速報】 ビタミンAの取り過ぎは骨折のリスク? 日本人女性でも相関 | 日経メディカル

妊婦は赤ちゃんの先天異常のリスクが増加

妊婦が過剰にビタミンAを摂取すると、赤ちゃんに先天異常が発生する可能性があるといわれています。先天異常には、眼球、頭蓋、肺および心臓の奇形などがあります。しかし一方で、ビタミンAは胎児の成長に必要なものであり、胎児が自ら体内で合成することができない栄養素でもあります。

妊婦は過剰摂取することはもちろん、不足することも危険であると認識した上で、バランスの良い食事を心がける必要があるでしょう。

喫煙者のガン発生リスクを増加

ビタミンAに変換されて作用するものとしてβ-カロテンがありますが、このβ-カロテンが喫煙者の肺癌や新血管系疾患のリスクを増加させるといった研究報告もあります。総合医療情報発信サイトには、以下のように記載されています。

喫煙歴を有する、または現在喫煙している男性および女性ならびに職業上アスベストに暴露された男性にβ-カロテン(パルミチン酸レチニルの併用の有無に関わらず)を5〜8年間補充した結果、肺癌や新血管系疾患のリスクが増加することが明らかになった

(引用元:ビタミンA  |「 総合医療」情報発信サイト

ビタミンAは不足すると問題があるか

ビタミンAは過剰に摂取すると健康を損なう恐れがあります。しかし、不足することもまた危険があることに注意しましょう。

ビタミンAの働き

ビタミンAの働きについて、公益財団法人長寿科学振興財団のホームページには、以下のように記載されています。

ビタミンAの主要な成分であるレチノールには、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあります。また、レチノールは、視細胞での光刺激反応に関与するロドプシンという物資の合成に必要なため、薄暗いところで視力を保つ働きもあります。最近ではレチノールが上皮細胞で発癌物質の効果を軽減するとわれています

(引用元:ビタミンAの働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット

つまり、健康な体を維持するためには必要不可欠な栄養素といえるでしょう。

ビタミンAの欠乏が引き起こす影響

それでは、このビタミンAが不足するとどのような症状を発症するのでしょうか。

暗順応障害の発症

ビタミンAの不足による症状の一つに暗順応障害があります。これは、暗いところでものが見えにくくなる症状です。これが進行すると、暗いところでは著しく視力が衰える夜盲症に進行するといわれています。

皮膚や粘膜などの角質化や乾燥

ビタミンAには、皮膚や粘膜を健康に保つ働きがあります。そのため、これが不足すると皮膚や粘膜の乾燥、肥厚、角質化といった症状が現れる恐れがあります。

子供の成長が停止

子供の場合、ビタミンAが不足した状態が続くと、成長が阻害される恐れがあるそうです。子供を健康に育てるためにも、ビタミンAは重要な栄養素の1つといえます。