まさかの私立中学退学。退学の理由と退学後の進路

人気の私立中学の入試倍率は6倍、7倍に上ることもざらにあります。大変な中学受験を耐え抜き、ようやく合格を果たし、意気揚々と中学生活をスタート……ところが、なかには苦労して勝ち取った私立中学を中退してしまう人がいます。私立中学の中退者数に関する公式データはありませんが、中退率は1割に上るともささやかれます。なぜそれだけ多くの人が中退してしまうのでしょうか。私立中学を中退したら、その後はどうなるのでしょうか。

私立中学退学の理由

公立の小中学校は、義務教育であるため児童や生徒を退学にすることはできませんが、私立は退学にすることができます。学校教育法施行規則第二十六条によると、校長の判断で、次の項目のいずれかに該当する児童・生徒を退学にすることができるとされています。

一 性行不良で改善の見込がないと認められる者

二 学力劣等で成業の見込がないと認められる者

三 正当の理由がなくて出席常でない者

四 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者

(引用元:昭和二十二年文部省令第十一号 学校教育法施行規則|e-Gov電子政府の総合窓口

 成績不振による退学

私立中学の利点の1つは、中学高校6年間のカリキュラムを5年間で修了し、最後の1年を大学受験の準備に充てられるため、難関大学への合格を狙いやすいことです。そのため、私立中学は授業の進度がはやく、内容が濃密です。サポート体制は充実していますが、6年間分の内容を5年間に凝縮しているので、どうしてもついていけない生徒が出てきてしまいます。

学校のサポート体制の枠組みで学力を上げられない子供に対し、私立中学は時に冷酷な態度をとります。進級時に一定水準をクリアできないと進級させない、それとなく退学をほのめかすなど、学校に居づらい環境を作って自主退学を促します。

私立中学は良質の教育を扱うビジネスです。難関大学への合格実績を上げることで良質の生徒を集め、それにより学校のクオリティを上げ、さらに良い生徒が集まるというビジネスモデルです。私立のビジネスモデルにとって足かせになる生徒は、切り捨てられる恐れがあります。

問題行動による退学

公立中学なら校則違反を重ねても叱責を受ける程度ですが、私立中学の場合は自主退学に追い込まれることがあります。中学生は多感な時期で、ときには間違いも起こします。長い人生から見れば大したミスではなくても、私立中学では許容されないこともあります。また、不登校気味の生徒が退学を迫られることもあります。

私立はある教育理念に基づいた教育を行っており、それに同意して入学している以上、学校の理念に背く態度が許容されないのはある程度致し方のないことです。子供には結果の重大さをしっかりと理解させ、軽はずみな行動をとらないよう念を押しておきましょう。

いじめによる退学

文部科学省のいじめに関する調査によると、公立中学のいじめ認知件数は77,137件、私立中学は2,513件でした。それぞれの認知件数を公立中学校数と私立中学校数で割った「1校当たりのいじめ認知件数」は、公立中学の8.1件に対し、私立中学は3.2件でした。

私立中学は、公立中学よりいじめが少ないことは事実ですが、いじめが発生した場合の対応は公立中学に劣ることがあります。表面を取り繕って「解決済み」とし、実際にはいじめが続いているために学校へ行けなくなる例、反対にいじめた子供を即退学へ追いやってしまう例などを耳にすることがあります。

参考

平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果1|文部科学省

部活など人間関係による退学

スポーツ推薦で特待生として入学したものの、練習が厳しい上に拘束時間が長く、しかも硬直的な人間関係で、心身ともに疲れ果て退部してしまう例もあります。部活が中学生活のほとんどを占めていたため、部活をやめてしまうと学校での居場所もなくなってしまい、結局は退学せざるを得なくなります。

思春期による自我の芽生え

中学受験がそもそも本人の意思ではなく、親の強い意向によるもので、入学と同時に燃え尽きてしまう子供もいます。目的を失いやる気が起きず、さらに思春期に突入し自我が芽生え、親の言うことに片っ端から反抗します。親がいさめればいさめるほど反発し、勉強せずゲームに没頭したり、校則違反を繰り返したりして、ついには退学してしまうことがあります。

経済的理由による退学

私立中高一貫校は、充実した授業内容と学習サポートで、塾に通わなくても難関大学を突破できることを売りにしているところもあります。そのつもりで学費分しか資金を用意していないと、計算が狂うことがあります。

私立校は公立校が6年間かけて学習する内容を5年間に凝縮しているため、進度がはやく、授業内容も高度です。それについていけなくなると、学校に居づらい状況になるので、結局は学校の授業についていくために塾通いをする必要が出てきます。私立の授業の進度は公立中学とまったく異なるため、塾に通うにしても一般向けの塾には行けません。少人数制の塾や家庭教師に頼らざるを得ず、思わぬ出費を迫られる可能性があります。