ビタミンは人の体を健康に維持するために必須の栄養素です。今回は、全13種類あるビタミンの中からビタミンKをピックアップして、その効果や働きを解説します。1日に必要な摂取量やビタミンKを豊富に含む食品についても紹介しますので、参考にしてください。
もくじ
ビタミンKの効果と働き
ビタミンKの持つ効果や働き、欠乏症や過剰摂取した場合の体への影響について解説していきます。
ビタミンKは脂溶性のビタミン
ビタミンは、水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンに大別されます。前者は水に溶けやすく、後者は油に溶けやすい性質を持っています。
ビタミンKは脂溶性のビタミンです。脂溶性のビタミンは油を使って調理することで吸収率が高まります。そのため、ビタミンKを効率的に摂取するには、炒めたりドレッシングをかけたりして油と一緒に摂るのがおすすめです。
血液を固める作用を助ける効果がある
ビタミンKには、怪我をしたときなどに出血を止める血液凝固作用を助ける働きがあります。血液凝固作用は、血液凝固因子と呼ばれるタンパク質の一群が起こします。ビタミンKは、その一つであるプロトロンビンというタンパク質の生成に大きく関わっています。
血液凝固作用は、出血したときだけでなく、内出血した場合にも必要不可欠な機能です。
骨を丈夫に保つ
ビタミンKは骨の形成や保護にも関わっています。
骨に含まれるタンパク質で最も多いのはコラーゲンですが、次いで多いのがオステオカルシンという物質です。オステオカルシンはカルシウムの骨への沈着を促進します。また、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ働きもしています。
ビタミンKはこのオステオカルシンを活性化することで、骨の形成を助け、丈夫に保つという人の身体にとって大切な役割を果たしているのです。
ビタミンKの摂取量と骨折発生率の関係
上述したように、ビタミンKは骨の形成や保護に大きく関わっています。
骨を丈夫に保つには骨代謝が重要です。骨代謝とは、古い骨の細胞が新しい細胞に生まれ変わるメカニズムのことを言います。この骨代謝のバランスが崩れてしまうと、古い骨の破壊されるペースが新しい骨の生成されるペースを上回り、骨粗鬆症などに繋がります。
ビタミンK(主に納豆菌によって産生されるメナキノン-7)には、この骨代謝を適切に保つ機能があります。日本や欧米の研究において、ビタミンKの摂取量が多いほど大腿骨の骨折発生率が低くなるという報告も多数なされています。このことから、食生活の中でビタミンK摂取量を増やすことは、骨粗鬆症の発症リスクの低減につながるものと示唆されています。
参考
ビタミン K の健康栄養機能に関する最近の知見|オレオサイエンス 14 巻(2014年)12 号
ビタミンKが不足するとどうなる?
血液凝固作用や骨を丈夫に保つのを助ける働きを持つビタミンKですが、もし不足してしまうと体にはどのような影響が出てくるのでしょうか。
ビタミンKが欠乏した場合、下記のような症状が出やすくなります。
- 血液が固まるまでの時間が長くなる
- 骨粗鬆症の発症リスクが高まる
- 胃の粘膜が弱る
- 消化器関係に異常が生じ、大腸炎や下痢などの症状が出る
- 新生児の出血性疾患が起こる
このうち、最も注意しなければならないのは、新生児の出血性疾患です。
ビタミンK1は緑黄色野菜に広く含まれます。また、正常な腸管であれば、そこに生息する微生物によってメナキノン(ビタミンK2)が合成されます。このことから、通常の食生活を送っている限り、ビタミンKの欠乏症になる恐れはほとんどありません。
ただし、新生児の場合は、ビタミンK欠乏症になるリスクが高いとされています。母乳にはビタミンKが少ないことや胎盤がビタミンKを比較的通しにくいこと、新生児の腸管が生後数日の間は無菌状態であることなどがその理由です。新生児がビタミンK欠乏症に陥ると、新生児メレナ(消化管出血)や特発性乳児ビタミンK欠乏症(頭蓋内出血)を起こす可能性があります。
これら新生児の出血性疾患を予防するために有効なのが、ビタミンK2シロップです。日本の産科施設では通常、出産後と退院時、1ヶ月検診のときにビタミンK2シロップを飲ませています。
また、抗生物質を長期間服用している人や、胆汁(ビタミンKの吸収に必要)の分泌が悪くなる肝臓病などを患っている人で摂取量が不足している場合、ビタミンK欠乏症を発症することがあります。
なお、抗生物質の長期間の服用によって、メナキノン類(ビタミンK2)を生み出す腸内細菌が死滅する可能性があります。
過剰摂取しても問題はない?
ビタミンKは過剰に摂取しても問題はないのでしょうか。
通常の食生活をしている限り、ビタミンKを過剰に摂取してしまうということはありません。ただし、血栓症を患っている人や血液をさらさらにする血液抗凝固剤を服用している人は、納豆などのビタミンKを豊富に含む食品の摂取を控えるよう指導されることがあります。
参考