過剰摂取には要注意
ビタミンAが不足すると健康にさまざまな影響を及ぼしますが、一方で摂り過ぎることによる弊害もあります。以下、見ていきましょう。
吐き気や頭痛などの症状が出ることがある
ビタミンAは肝臓に蓄えられますが、摂り過ぎてしまうと肝臓にたどりつくまでに体に悪影響を及ぼします。吐き気や頭痛、発疹、下痢、めまい、昏睡などの症状が現れることがあります。
極端に偏った食生活でない限り、普段の食事からビタミンAを過剰に摂ってしまう心配はありませんが、サプリメントやビタミン剤を摂取する場合には、摂り過ぎに注意してください。
妊婦の過剰摂取は特に注意が必要
ビタミンAの過剰摂取を特に注意しなければならないのは、妊娠中の(または妊娠の可能性のある)女性です。ビタミンAを過剰に摂取することによる胎児への悪影響が報告されています。
このため、妊娠中の女性に対して高用量のビタミンAサプリメントの摂取は推奨されていません。通常の食事から摂取する分にはそれほど神経質になる必要はありませんが、サプリメントなどを日常的に使用している場合には注意してください。
過剰摂取を防ぐにはβ-カロテンとしての摂取が有効
β-カロテン(ベータカロテン)は人の体内でビタミンAに変化するプロビタミンAと呼ばれる物質です。人参などの緑黄色野菜に多く含まれています。
β-カロテンは体内に蓄積されないため、たくさん摂っても人体に有害ではありません。ですから、ビタミンAの過剰摂取が心配な方は、β-カロテンを豊富に含む緑黄色野菜から摂るのがおすすめです。
ビタミンAの摂取基準量を示す値と計算式
ビタミンAの摂取基準は厚生労働省によって定められており、レチノール活性当量(RAE)という値で示されます。レチノール活性当量とは、ビタミンAの主要成分であるレチノールとβ-カロテンなどのビタミンAの前駆体(※)を合計したものです。
※ビタミンAの前駆体とは、β-カロテンなど、人間の体内でビタミンAに変換される物質のことです。これらは「プロビタミンA」とも呼ばれます。
レチノール活性当量を算出する式は下記の通りです。
レチノール活性当量(μgRAE)=レチノール(μg)+ β-カロテン(μg)× 1/12+α-カロテン(μg)×1/24 + β-クリプトキサンチン(μg)× 1/24 + その他のプロビタミンAカロテノイド(μg)× 1/24
(引用元:日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会 各論 ビタミン(脂溶性ビタミン)|厚生労働省, P165)
上記の式は難解に見えるかもしれませんが、簡潔に言うとレチノール活性当量とは、「体内でビタミンAとして作用する値の合計」ということになります。
下記に掲載するビタミンA摂取基準と食品別のレチノール活性当量を参照して、普段の食事によって摂取されるビタミンAの量をイメージしてください。
【年齢別】ビタミンAの摂取基準(1日当たり)
性別 | 女性 | 男性 | ||
年齢 | 推奨量
(μgRAE/日) |
耐容
上限量 (μgRAE/日) |
推奨量
(μgRAE/日) |
耐容
上限量 (μgRAE/日) |
1〜2歳 | 350 | 600 | 400 | 600 |
3〜5歳 | 400 | 700 | 500 | 700 |
6〜7歳 | 400 | 900 | 450 | 900 |
8〜9歳 | 500 | 1,200 | 500 | 1,200 |
10〜11歳 | 600 | 1,500 | 600 | 1,500 |
12〜14歳 | 700 | 2,100 | 800 | 2,100 |
15〜17歳 | 650 | 2,600 | 900 | 2,600 |
18〜29歳 | 650 | 2,700 | 850 | 2,700 |
30〜49歳 | 700 | 2,700 | 900 | 2,700 |
50〜69歳 | 700 | 2,700 | 850 | 2,700 |
70歳以上 | 650 | 2,700 | 800 | 2,700 |
妊婦(付加量)
初期 |
+0 | – | – | – |
妊婦(付加量)
中期 |
+0 | – | – | – |
妊婦(付加量)
後期 |
+80 | – | – | – |
授乳期(付加量) | +450 | – | – | – |
(日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要|厚生労働省 ,P16より筆者作成)
上の表について、下記の点に留意してください。
- 推奨量および上限量は、レチノール活性当量(μgRAE/日)で示しています。
- 推奨量には、プロビタミンAカロテノイド(体内でビタミンAに変化する物質)を含みます。
- 耐容上限量には、プロビタミンAカロテノイドを含みません。
- 妊娠後期または授乳期の女性は、推奨されるビタミンAの量が増えます(+80〜450)。
- 妊娠中または授乳期の女性の耐容上限量が示されていませんが、上限がないということではありません。通常時の上限量を参考にして、過剰摂取に注意してください。
ビタミンAが多く含まれる食品
ビタミンAは肉・魚などの動物性食品のほか野菜・果物など、多くの食品に含まれています。以下、ビタミンAを多く摂取できる食品をピックアップしました。
食品 | レチノール活性当量
(μgRAE) |
レバー(牛・生・100g) | 1,100 |
ししゃも(生・100g) | 100 |
ゆで卵(全卵) | 140 |
牛乳(普通牛乳・100ml) | 38 |
人参(生・100g) | 760 |
ほうれん草(ゆで・100g) | 450 |
ブロッコリー(ゆで・100g) | 64 |
トマト(100g) | 45 |
乾燥プルーン(100g) | 110 |
(香川芳子監修(2008年12月)『食品成分表2009 本表編』女子栄養大学出版部より筆者作成)
おわりに
ビタミンAの効果や働き、摂取量の目安、欠乏や過剰摂取の弊害などについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。ビタミンAには、皮膚や粘膜を健康に保ち、細菌やウイルスに対する免疫力を維持する効果があります。過剰摂取による弊害はありますが、サプリメントなどで大量に摂取しない限りは、特別心配する必要はありません。この記事が、お子さんの健康維持や食育のお役に立てば幸いです。
参考
日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会 各論 ビタミン(脂溶性ビタミン)|厚生労働省
香川芳子監修(2008年12月)『食品成分表2009 資料編』女子栄養大学出版部
香川芳子監修(2008年12月)『食品成分表2009 本表編』女子栄養大学出版部