ファシリテーションとは?必要なスキルと教育での生かし方

会議やワークショップなどで「ファシリテーション」という手法に触れたことのある人は多いのではないでしょうか。「司会」や「リーダー」とはどう違うのか? ファシリテーションを取り入れることでどんな良いことがあるのか? という疑問や、ファシリテーションを授業や教育の現場で実践した例について解説します。

ファシリテーションとは

まずは、ファシリテーションとはどのようなものなのかを知りましょう。NPO法人日本ファシリテーション協会が分かりやすい解説を公開しています。

グループで活動するときの「舵取り」のこと

ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。

(引用元:ファシリテーションとは|特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会

複数の人が協力して何かを行う場合、何かしらの取りまとめをする役割が必要になります。ほかの人たちに指示を出して、結果を出すために常に先頭に立って働く人なら「リーダー」と呼ばれるでしょう。

一方、「ファシリテーター」は周囲をサポートしたり、調整したりする役割を求められます。リーダー的な指導者ではなく、「縁の下の力持ち」的なポジションだと理解することもできそうです。

結果に向かうときのプロセスを大切にする

目的を持ったグループ活動では結果がもちろん大切です。しかし、ファシリテーションを行う際には結果に至るまでのプロセスも大切にする必要があります。ファシリテーションを行うファシリテーターは、「どうしてグループ活動を行うのか?」「グループで行う意義は何か?」といったことを常に自身や周囲に問いかけながら活動を進めていきます。

リーダーであれば、自身の達成したい目的のために部下を働かせ、その結果を評価します。一方、ファシリテーターは結果よりもグループで取り組むということを重視します。場合によっては、想定していたようなゴールとは違う方向にグループ活動が進んでいくことがあるかもしれません。そのようなときにも柔軟に対応できる力が求められます。

ファシリテーションに必要なものとは

ファシリテーションには、リーダーシップとはまた違うスキルや考え方が必要だということが分かりました。ファシリテーションを実際に行う際に重要なものとして提唱されている「4つのスキル」と「4つのデザイン」をご紹介します。

ファシリテーションの4つのスキル

場のデザイン

学校のクラスについて考えてみましょう。クラス替えで新学期が始まったばかりのころは、たまたま同じクラスになった子供たちの集まりでしかありません。しかし、毎日の生活や行事などを通じて、クラスとしてのまとまりや仲間意識、役割分担といったものが徐々に形成されていきます。

同じように、ファシリテーションが必要な場には「たまたま集まった」他人同士が居合わせることが多くあります。連帯感を共有しない人同士がチームとして目的を持って活動するには、そのための働きかけが欠かせません。ファシリテーターは、まず目的意識を共有し、活動のための段取りを行い、集まった人たちが主体的にそれらに取り組めるような「場」をつくっていく必要があります。

対人関係

自分の目的のために人を動かすリーダーとは異なり、ファシリテーターは参加者が自ら目的意識を持って活動するように働きかけます。そのためには、1人1人が発言しやすい、コミュニケーションがとりやすい環境をつくらなくてはなりません。

人間は、自分のものと大きく違う意見を即座には受け入れられないことがあります。違いを受け入れられないままではコミュニケーションもままなりませんから、そこでファシリテーターの働きが求められます。

話をまずはしっかりと聞く「傾聴」、「私は○○だと思います」という意見について「あなたは○○だと思うんですね」と繰り返す「復唱」、相手の意見を深掘りするための「質問」、相手の論点をまとめる「主張」、言葉にはなっていないものの、顔の表情や言いよどみなどから言いたいことを推察する「非言語メッセージの解読」などが具体的なスキルとして挙げられます。

参考

ファシリテーションとは|特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会

構造化

コミュニケーションによりさまざまな意見を出してもらった後は、チームとしての方向性をまとめていきます。ブレインストーミングやワークショップなどで、付箋にたくさんのアイデアを書き出すという作業を行ったことがある人もいるでしょう。それらをどのようにまとめることができるのかを見抜く力が、構造化のスキルには欠かせません。

ファシリテーターのものの見方によってある程度構造化できる場合もありますが、参加者から異を唱えられることもあるでしょう。そういった意見にも柔軟に対応しつつ分かりやすくまとめていくスキルが求められます。場合によっては図式化したり、表にしたりと、視覚的に分かりやすい形にまとめていく手法も効果的です。

合意形成

意見はどれだけまとめても対立するものが出てきます。グループ活動の場合、アイデアとしては良いけれども今回はどれか1つに絞らなければならない、といった事態も十分あり得ます。

このようなときに、どれを取捨選択していくのか、それに対する納得できる理由は何かを考えていくのが合意形成のスキルです。しっかりとした目的意識を持っている人ほど、持論と違うものにはなかなか合意できないということもあります。その場を取りまとめて、チームの意識を同じ方向性へ向けていくスキルがファシリテーターには求められます。

ファシリテーションの4つのデザイン

場のデザイン

上記の「4つのスキル」は主にファシリテーターとしての素質やスキルに着目したものですが、スキルを基にどのように運営していくかを考えるためには「4つのデザイン」が参考になります。

1つ目は4つのスキルでも挙げられた「場のデザイン」です。まずは、グループとして取り組むという雰囲気や環境を整えることが大切です。

参考

事実を科学に高める中学校理科の学習指導 - 教師のファシリテーションを通して -|福岡教育大学学術情報リポジトリ

学び合いのデザイン

「対人関係のスキル」によりデザインしたいのは「学び合い」です。コミュニケーションによって各人の関係性がより良くなることはもちろん、発言し合い、聞き合うことで各人の考えをより深めることも期待できます。

ファシリテーターがそのための役割を果たすことはもちろん大切です。それに加えて、学び合うための働きかけを参加者が互いに行うことができれば、よりグループ活動としての意義が深まっていくでしょう。

モニターのデザイン

全体を観察することを「モニタリング」と呼びます。モニターのデザインは構造化を行うときに欠かせません。全体を俯瞰的に見て、自分の考えがどのような枠組みの中にあるのかや、対立する意見が何なのかを知ることができるからです。

付箋に書いたアイデアをグループ分けするときにも、誰か1人が分けたもので決定してしまうのか、いったん分けたものをベースにグループで考えていくのかでは結果が違ってくるでしょう。意見の対立による混乱を避けつつ、グループで構造化を行えるようになればモニターのデザインは成功しているといえそうです。

成長のデザイン

合意形成はグループ全員の落とし所を探るという意味合いもありますが、それによって目指す結果の質が落ちてしまうのはもったいないものです。グループとして目指せるより良い結果を導きつつ、異なる意見同士をどこで妥協させるのかが大切になります。

ファシリテーションは潤滑油的な働きをしつつ、参加者同士が自ら歩み寄るような仕掛けを作っていけるのが理想的です。これを「成長のデザイン」と呼ぶのは、参加者1人ひとりが自分の成長を実感できることもグループワークとして大切だという考え方に基づきます。