子供の教育費が不足したときに、教育ローンを活用するのは有効な選択肢です。とはいえ、額も大きく返済期間も長い負債であり、必ず借りることができるとも限りませんから、選ぶ際には慎重な検討が必要。金融機関の種類別に教育ローンの特徴と内容を解説し、比較のポイントをまとめました。ご自身の家庭に適したローンを検討してみてください。
もくじ
教育ローンとは
教育資金と教育ローン
子育てに関わる費用で大きな割合を占めるのが教育費です。特に大きな費用が発生するタイミングは、大学進学時。日本政策金融公庫「平成30年度教育費負担の実態調査」から、大学でかかる学費の平均を見てみましょう。
入学費用(入学時)※1 | 在学費用(年額)※2 | 初年度費用 | |
国公立 | 801,000 | 1,148,000 | 1,949,000 |
私立文系 | 904,000 | 1,601,000 | 2,505,000 |
私立理系 | 855,000 | 1,853,000 | 2,708,000 |
(単位:円)
※1:受験にかかる費用、入学金など学校納付金、入学しなかった学校への納付金など
※2:授業料、通学交通費、教科書・教材・学用品の購入代、参考書や学校外の学習費用など
(日本政策金融公庫『平成30年度教育費負担の実態調査』,p5-6 より筆者作成)
このデータを見ると、大学入学時に100万円近い費用を用意しなければならないこと、在学中は年間100万~200万円の費用がかかり、特に最初の年は入学費用と合わせて大きな支出が発生することが分かります。
教育費は、貯蓄や学資保険などで前もって準備しておくことが大切ですが、実際に必要となった時に、準備しておいた資金では足りないということもあり得ます。そんな時に利用可能な資金が、ひとつには学生本人が貸与を受ける奨学金。もうひとつが、親の受ける融資である教育ローンです。
教育ローンの種類
教育ローンは、取り扱っている団体の制度や金融機関の商品の特徴などによって違いがあります。融資元によって大きく分けると、国の教育ローンと民間の教育ローンに分かれます。
国の教育ローンとは、日本政策金融公庫が扱う教育一般貸付のこと。民間の教育ローンとは、銀行や信用金庫など金融機関が取り扱う教育ローンです。民間の教育ローンの中でも公共性の高いものに、営利を目的としない協同組織の金融機関である、ろうきんの教育ローンがあります。
では、日本政策金融公庫による国の教育ローン、ろうきんの教育ローン、民間金融機関の代表例として銀行の教育ローンについて、具体的な内容を見ていきましょう。
参考
教育ローンとは?ライフプランを考えたメリットとデメリットも紹介|マネタス
教育ローンは、どの金融機関を選ぶべきなのか?主要な金融機関を比較検討してみました|マネタス
国の教育ローン
概要と特徴
日本政策金融公庫は国民の生活を助け、その向上に寄与することを目的とする金融機関です。そのため、教育ローンも民間のローンに比べて、幅広い家庭が利用できるよう設計されています。
特徴は、経済的に余裕のない家庭も利用しやすい教育ローンであるということ。金利が低く設定された固定金利であり、返済期間も長期に設定されているため、余裕をもって返済できます。また幅広い世帯年収と子供の人数に対応した制度で、低年収世帯やシングル親家庭、交通遺児家庭などへは金利や返済期間の優遇措置があります。申し込みができる年収には上限がありますが、子供の人数や他の経済負担の重さに応じて緩和されるので、負担が重なり苦しい場合の助けにもなります。
申し込みのしかた
申し込み条件
幅広い世帯年収、用途に対応する融資ですが、世帯年収に上限が設けられており、最も厳しい基準だと790万円以上の年収のある人は利用することができません。ただし子供の人数が増えるごとに上限は引き上げられ、勤続年数の短さや他の経済的負担の大きさなど、年収条件を緩和する要件も定められていますから、自分がどこに該当するかは確認してみましょう。
申し込み時には連帯保証人を立てるか、(公財)教育資金融資保証基金による保証を利用する必要があります。基金の保証を受ける場合は、融資額から保証料が差し引かれます。
申し込み方法
店頭またはインターネットで申し込むことができます。店頭申し込みの場合は、住まいの近くなどの支店に行きましょう。教育ローンを扱う事業窓口は「国民生活事業」です。インターネットの申し込みは、24時間365日対応しています。申し込み後のキャンセルや内容変更も、インターネットを通じてできます。
入学時の資金は合格発表後に申し込みが集中しますが、国の教育ローンは受験前でも申し込みが可能です。入金は合格が確定してから、キャンセルも可能ですので、「入学金の振込に間に合わない……」などと慌てないよう、余裕を持って申し込んでおきましょう。また在学中に資金が必要になった時も、随時申し込みができます。
必要書類
申し込みには以下の書類が必要です。詳しくは日本政策金融公庫のサイトで確認しましょう。
- 借入申込書(インターネット申し込みの場合は不要)
- 住民票の写しまたは住民票記載事項証明書
- 運転免許証またはパスポート(持参またはコピー添付)
- 源泉徴収票または確定申告書(控え、直近のもの)
- 預金通帳(最近6ヶ月分以上)※
※住宅ローン(家賃)と公共料金の支払い状況を確認するため。コンビニ等で現金支払いの場合は領収書、クレジットカード払いの場合はカード利用明細書を用意する
申し込み完了から審査結果が出るまで、10日前後かかります。審査に通ったら契約に進み、口座に入金となります。審査結果の連絡から10日前後で、入金が完了します。合格確定前に審査結果が出たら、合格発表を待って契約手続きをしましょう。契約には次の書類が必要です。
- ご融資のお知らせ(兼借用証書)
- 印鑑証明書
- 入学を確認できる書類(入学資金の場合。合格通知書、入学許可証など)
- 在学を確認できる書類(在学資金の場合。学生証、在学証明書など)
- 使途を確認できる書類(在学資金の場合。学校案内、授業料納付通知書など)
- 預金口座振替利用届 ※自動振替による返済を希望の場合
- 送金先口座の預金通帳(コピーの場合は表紙と見開き1ページ目)
借入金額、金利と返済方法
借入金額は最高350万円、海外留学資金の場合だと最高450万円です。金利は年1.71%の固定で、年収状況やシングル親家庭など、条件によっては年1.31%の固定金利となります。
返済期間は最長で15年(条件によっては18年)。元金と金利を合わせて月々一定の額を返済していく、元利均等返済です。ボーナス月の増額返済も可能で、子供の在学期間中は元金据え置きで利息のみを返していくことも可能ですので、各家庭の状況に合わせた返済プランを組みましょう。
参考