教育を受ける権利は誰のもの?受けさせる権利・義務教育との違い ( 2 )

教育を受けさせる権利との違いは?

教育を受ける権利について考えるために、憲法や法律の規定をあらためて読んでみると、教育を受ける権利は、本人が自分のために教育を受けることを想定しています。それでは、親などの保護者が自分が育てている子供に教育を受けさせることに権利はあるのでしょうか。

「義務」教育と教育を受けさせる「権利」

繰り返しになってしまいますが、日本国憲法第二十六条2項をもう一度見てみましょう。

2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

(引用元:日本国憲法(条文抜粋) | 文部科学省

憲法では、国民は「保護する子女」に普通教育を受けさせる義務が規定されています。その教育がいわゆる「義務教育」です。義務教育の種類や年限などは、教育基本法や学校教育法によって細かく定められています。

義務教育が子供の義務ではなく保護者の義務であるということは比較的よく知られているのではないでしょうか。しかし、教育を受ける権利もまた国民一人ひとりが持っていることを前提にして考えると、教育を受けさせる義務は教育を受けさせる権利なのではないか、と提言する人たちもいます。

義務というと押し付けがましく、堅苦しい印象を与えがちです。しかし、大人が子供に与えられる教育というものは、未来をより力強く生きていくための力であるべきなのではないか、という考え方です。

日本国外に居住する場合の教育を受けさせる権利

教育を受けさせる義務と権利について考えるときに例として挙げられるのが、日本国外に居住した場合の義務教育についてです。

この権利は子どもが日本国内にいるときにだけ認められるもので、国境の外に出た場合は権利が保障されていません。おおざっぱにいうと、国外に出た日本の子どもの三分の一は「日本人学校」という私塾に通い、三分の一は現地校に通い、三分の一は自宅学習です。ちなみに、フランスなどは、国外にいる子どもにも公教育を受ける機会を与えようとして、大使館、領事館の中に公立の学校を設置しています。

(引用元:資料 教育を受けさせる権利と教育を受ける権利の関係 (3)| 市民立憲フォーラム

現在の日本では、教育に関する権利も義務も、日本人が日本国内に居住しているときのみ成立します。海外に居住した場合、日本国籍で義務教育課程の年齢の子供であっても日本の公教育を受ける権利を行使することはできません。

保護者も義務を負いません。義務がない一方、日本の公教育を受けさせたいと考えてもその権利を主張することもできないということになります。

義務教育の問題点が論じられることもありますが、一定の質を保った教育を無償で受けられるというのはやはり重要なことです。仕事の都合などで海外に居住することになり、子供の教育について悩む親は少なくありません。教育を受けることが権利なら、教育を受けさせることも義務だけでなく権利として捉えられないかという模索が始まっています。

教育を受ける権利を持つのは誰?

教育を受ける権利と、教育を受けさせる義務・権利。これらの違いについて考えてきました。すでにお気づきかもしれませんが、必ずしも誰もがこれらの権利・義務の対象になるわけではありません。

憲法の規定は「国民」

憲法の条文をもう一度思い出してみましょう。平等原則を記した第十四条や、教育を受ける権利についての第二十六条は「すべて国民は」という書き出しで始まっています。つまり、憲法の定めに従って権利が保護されたり、義務を課されたりするのは、日本国籍を持つ国民のみとなります。

外国人の場合はどうなる?

それでは、日本国籍を持たない外国人は日本の公教育を受けることはできないのでしょうか。先ほど考えた教育を受けさせる権利と同様のことが日本国内でも起こっています。権利も義務も持たない外国人をどのように受け入れるのか、あるいは受け入れないのかということです。

 憲法及び教育基本法は、国民はその保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負うものとしていることから、普通教育を受けさせる義務は、我が国の国籍を有する者に課されたものであり、外国人には課せられないと解される。しかしながら国際人権規約等の規定を踏まえ、公立の小学校、中学校等では入学を希望する外国人の子どもを無償で受け入れる等の措置を講じており、これらの取組により、外国人の子どもの教育を受ける権利を保障している。

(引用元:外国人児童生徒教育の充実方策について(報告)3 外国人の子どもに対する就学支援について | 文部科学省

結論から言うと、日本では日本国籍を持たない外国人であっても教育を受ける権利を保障する方向に動いています。日本が批准している「世界人権宣言」や「児童の権利に関する条約」に基づくと、国籍にかかわらず子供の教育を受ける権利を保障するべきだと考えられているからです。

参考

中央教育審議会初等中等教育分科会(第25回)議事次第[資料2] | 文部科学省

第36号 教育を受ける権利、およびその機会の保障について | 伊藤塾

まとめ

教育を受ける権利は、子供を育てていく上で非常に大切なものです。普段は当然のように考えてしまいがちな義務教育や進学も、この権利がなければ難しくなります。教育を受ける権利の基本的な考え方と現代的な問題提起について、概観を解説しました。

現代では、子供の学校に外国人の子供が入学したり、仕事の関係で子供を連れて海外に居住することになったりと、思わぬきっかけで今まで当然と思っていた環境が変化することがありえます。こんなときどうする? 権利と義務についてはどう考えればいいの? といった疑問を解決するための材料となれば幸いです。

参考

日本国憲法(条文抜粋) | 文部科学省

教育を受ける権利に関する基礎的資料  | 衆議院

資料 教育を受けさせる権利と教育を受ける権利の関係 | 市民立憲フォーラム

教育基本法 | 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

外国人児童生徒教育の充実方策について(報告)3 外国人の子どもに対する就学支援について | 文部科学省

この記事をかいた人

akahoshitomoka

piggiesagogoクロシェター・ライター。 オリジナルの編み物作品の作り方を販売しながらライターもしています。守備範囲はハンドメイドから不動産まで。三浦半島が好きです。