日本における教育の目的とは?教育基本法と学校教育法を解説!

教育の目的は、時代や住んでいる国や地域などによって異なります。また、人によっていろいろな考え方があるのも当然でしょう。なので、いろいろな教育の目的があるのが自然です。ただ、日本における教育の目的を把握している方は意外と少ないのではないでしょうか? 今回の記事では、日本における教育の目的を教育基本法や学校教育法をもとに解説していきます。

教育の目的とは?

『学問のすすめ』の著者として有名な福沢諭吉は、教育の目的を自身の著書の中で下記のように述べています。

教育の目的は、人生を発達して極度に導くにあり。そのこれを導くは何のためにするやと尋ぬれば、人類をして至大の幸福を得せしめんがためなり。

(引用元:福沢諭吉(2015年3月)『福沢諭吉作品集・44作品⇒1冊』福沢諭吉作品集・出版委員会)

少し乱暴な言い方でまとめると、人類が幸せに生きるためと捉えることができます。そのために、教育が行われていると福沢諭吉は述べています。

また、『武士道』の著者で、国際連合事務次長も務めた新渡戸稲造は、下記のように述べています。

今日世界各国の人の学問の目的とする所には種々あるが、普通一般最も広く世界に行われている目的は、各自の職業に能く上達するにある。マア職業教育とでも言おうか。あるいはモウ一層狭くいうと、実務教育というのが、能くその趣意を貫いているようである。

(引用元:新渡戸稲造(2015年5月)『新渡戸稲造作品集・21作品⇒1冊』新渡戸稲造作品集・出版委員会)

新渡戸稲造によると、職業を求めるところに教育の目的があるとしています。では、日本が国として定めている教育の目的はどのようなものなのでしょうか? 教育基本法と学校教育法の2つから読み解いていきたいと思います。

「人格の完成」をめざす教育基本法

教育基本法は、1947年に公布された日本の教育における基本方針を示した法律です。2006年に改訂が行われ、4章立ての全18条から成っています。教育基本法の第1章第1条には、教育の目的が記されています。

教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。

(引用元:第1条(教育の目的)|文部科学省

ここでは、どのような国民を育てるかが規定されており、「人格の完成」をめざすことと、「平和的な国家及び社会の形成者として、心身ともに健康な国民」を育成することが目的になっています。

また、第2条では、教育の目標が規定され、第3条では生涯学習の理念、第4条では教育の機会均等が明示されています。

小学校では「普通教育のうち基礎的なものを施す」

子供たちの教育の根幹をなすのが学校教育です。学校教育法は、学校教育のそれぞれの校種について定めている法律です。ここでは、初等教育と中等教育を中心に、教育の目的を確認していきます。

小学校では、発達の段階に応じた教育をすることが求められています。また、身近な日常生活から、社会や文化への理解を深めていくことを目標にしています。

小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。

(引用元:学校教育法第四章第二十九条|電子政府の総合窓口

これだけでは、あまりにも抽象的なので、教育の目的を達成するための目標の部分も確認していきましょう。

義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

  1. 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
  2. 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
  3. 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
  4. 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
  5. 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
  6. 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
  7. 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
  8. 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
  9. 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
  10. 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

(引用元:学校教育法第一章第二十一条|電子政府の総合窓口

目標は、10個設けられており、個人の内面的な発達だけでなく、進路を選択する能力を養うなど、将来を見据えた目標が掲げられていることが分かります。

中学校の目的は小学校とは大差はない

中学校になっても、教育の目的に大きな変化はありません。下記が中学校の教育の目的です。

中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする。

(引用元:学校教育法第五章第四十五条|電子政府の総合窓口

義務教育の後半に当たる中学校では、小学校での教育に基づいて教育が行われていることがわかります。また、目標に関しては小学校と同じ総則に上げられている10個の目標が掲げられています。

高等学校では「高度な普通教育及び専門教育を施す」

高等学校になると、中学校の教育から発展した専門的な技術や高い教養を施すことが目的になります。

高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。

(引用元:学校教育法第六章第五十条|電子政府の総合窓口

また、目的を達成するために、中学校での教育成果を発展拡充させることや、個性に応じた将来の進路を決定すること、個性の確立に努めることなどが挙げられてます。

特別支援学校は「自立を図るために必要な知識技能を授けること」

特別な支援が必要になる特別支援学校の目的は、小学校や中学校とは少し異なっています。

特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。

(引用元:学校教育法第八章第七十二条|電子政府の総合窓口

上記の文章からも分かる通り、社会での自立を促すことが大きな目的になっているという特徴があります。

幼稚園の目的は「心身の発達を助長する」

幼稚園では、適当な環境を与えることも教育の目的の文章に盛り込まれています。

幼稚園は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする。

(引用元:学校教育法第三章第二十二条|電子政府の総合窓口

目的を達成するためには、身体諸機能の発達を図ったり、集団生活を経験させたり、身近な社会生活を正しく理解させたり、言葉や童話、絵本への興味を養ったり、音楽・遊戯・絵画活動などを通して創造的表現への興味を養うことなどが挙げられています。