学校現場での情報化の状況
では、教育の情報化の3本の柱がどのように実践されているのでしょうか? ここからは、実際に学校でどのような取り組みが行われているかをご紹介しながら、教育の情報化についてより理解を深めていきたいと思います。
授業でのICT活用
授業でのICT活用を学習場面で分けると、一斉学習、個別学習、協働学習の3つに分けることができます。
一斉学習の場面では、教員がプロジェクタや拡大投影機を使って写真や挿絵を効果的に活用したり、デジタルテレビを活用して動画を見ることで学びを深めたりするなどの実践があります。
個別学習の場面では、タブレット端末やコンピューターを使って、子供たち一人一人のテンポに合わせた学習を行うことができます。また、調査学習では図書館の本だけでなくインターネットを活用して情報を集めることができます。
協働学習の場面では、調べたものをプロジェクタで映し出して発表するのに使ったり、遠隔地や海外の学校とオンラインでつないで交流授業を行ったりすることができます。
情報モラル教育
情報を正しく読み取り、活用するためには、インターネットを含むメディアを使うルールを理解しなければなりません。これは、インターネット上での誹謗中傷やいじめ、犯罪や違法の被害者・加害者にならないために必要なことです。また、スマートフォンなどの電子機器の急速な普及により、学校だけではなく家庭や地域とも連携して情報モラルを育成することが大切です。
情報モラル教育は、多岐にわたります。小学校の道徳の授業では、他人との関わりについて考える活動があります。メールやチャットだけでは伝わりにくいことを理解するために、ロールプレイなどを取り入れて対面して話をする場合と、そうでない場合での違いや感じ方の違いについて授業を行います。また、図画工作の授業では、クラスのみんなの作品を互いに鑑賞しながら、美術品を作った人の工夫やアイデアを尊重し、大切にするにはどうしたらいいのかを考え、著作権を学ぶ機会を作ります。
それ以外にも、責任をもって情報を発信することや情報を正しく判断する方法、ネット上のいじめについて考えるなど、さまざまな実践があります。
授業準備の情報化
教員の大切な仕事の1つが授業準備です。教員は、1つの授業を作るために、教科書の内容に合った指導書をもとにして、黒板に書く内容を考えたり、提示する教材を作ったり、子供たちの活動を考えたり、他の先生に意見をもらったりします。
小学校高学年でいえば、毎日6時間分の授業を準備していくことには大変な時間と労力がかかります。しかし、全国の先生方の優れた実践事例をインターネットを使って知ることができれば、授業準備の時間が短縮されるとともに、授業スキルの向上にもつながります。
また、実践例だけでなく、インターネット上にある資料映像や教育コンテンツを活用することで、授業準備を効率的に進めることができるようになります。
校務の情報化
校務の情報化は、教育の質を上げるためには必要不可欠です。例えば、成績処理を考えてみましょう。多くの小学校や中学校では、通知表が毎学期末に配布されます。ここには、先生のコメントが書かれていることが多いです。この成績処理を、パソコンで行うことができるだけで、先生方の校務にかかる時間は圧倒的に短縮されます。
通知表のコメントを一人一人に手書きで書くには、大変な時間がかかります。また、データとして保存もしにくいです。しかし、パソコンにデータで管理することができるのであれば、これまでの子供の学校での様子や成績も教職員間で共有することができますし、学年が変わって申し送りをする際の業務も効率的になります。
他にも、職員室でのコミュニケーションにグループウェアを活用する方法があります。職員室の黒板に、今週の予定(日程表、出張業務、提出物一覧など)を記載して、全員がそれを確認して手帳に転記して管理するのではなく、学校から支給されているコンピューターで情報を管理・確認するということが考えられます。そうすることで、情報は一瞬で共有され、効率的な業務を行うことができます。
学校の情報公開
最後は、学校の情報公開についてです。親であるなら誰しも子供の学校の様子が気になるところです。これまでは、学校通信や学年通信、学級通信といった手紙でしか学校の様子を知ることはできませんでした。
しかし、学校の情報公開が進めば、学校のホームページで年間のスケジュールをいつでも確認でき、ブログを通して学校でのイベントの様子を知ることもできます。
また、教職員にとっても、インターネットを活用して保護者や地域とのコミュニケーションをとることは、「即時性」という面でメリットがあります。さらに、毎回大量の印刷をする必要もなくなり、コスト面でもメリットがあると言えるでしょう。
まとめ
教育の情報化は、教育の質を高めるために必要であり、子供にとっても教職員にとっても保護者にとってもメリットがある取り組みです。ただ、設備のコストや新しいものを取り入れていくことへの抵抗から必ずしもスムーズに進んでいるわけではありません。学校が情報化するために、何ができるのかを学校の先生や保護者、地域の大人が考えることが大切なのではないでしょうか。
参考
教育の情報化の推進|文部科学省
学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果|文部科学省
教育の情報化の推進について|学校とICT
第1回「教育の情報化って何?」|eTeachers
教育の情報化|Wikipedia