心理教育のプログラム内容
ここまでは、統合失調症を例に心理教育にはどのような形式があるのかをご紹介しました。最後は、「ひきこもり」「うつ病」「統合失調症」の3つの症状ごとの具体的なプログラム内容をご紹介します。
ひきこもりへのプログラム
内閣府が2018年に行った調査によると、ひきこもり状態の人は40~64歳で61万3千人、15~39歳で54万1千人に上るとされ、総数は100万人を超えています。なお、ひきこもりは病気ではなく1つの「状態像」と定義されています。
心理教育のひきこもりプログラムの目的は、ひきこもりに対する正しい知識を持つことや子供の「生きづらさ」の背景にある問題を理解すること、適切な対応方法を学び子供との関係を改善すること、相談機関の利用を促進しライフプランを考えることなどが挙げられています。プログラムはこれらの目的に合わせて、オリエンテーション、情報提供、質疑応答、振り返りという流れで進められます。
参考
うつ病へのプログラム
うつ病へのプログラムでは、気分が落ち込んだり、不安な気持ちになったりする時の思考パターンに焦点を当てていきます。
うつ思考といわれるマイナス思考のパターンは3つあります。自分のことをマイナスに考え過ぎること、周りの人やものごとをマイナスに考え過ぎること、今後のことを前向きに考えられないことです。これらのマイナス思考を視点を変えて見たり、事実に基づいて考えてみたりすることで、気分の変化を起こしていきます。自分の心に寄り添っていくようなプログラムになります。
具体的には、マイナス思考の感情の割合がどの程度なのかをメーターで示して客観的に見たり、1日の中でどんなときにマイナス思考になるのかをスケジュール表に記載したりします。
統合失調症へのプログラム
統合失調症へのプログラムは、薬の効果やストレスへの対処法をグループで学ぶ方法を取ります。グループでお互いの体験を共有することで、自分の病気の理解を進めます。また、段階にもよりますが、病気と上手に付き合いながら生活していくコツを学習していきます。この場合は、「生活のしづらさ」に焦点を当ててそこからどのように解決していくかを考えます。
このほかにも、アルコール回復プログラムやパニック障害、摂食障害などにおいても、心理教育プログラムが行われています。心の病気は目に見えないものであるだけに、どのプログラムでもまずは「知ること」から始まっているのが心理教育の1つの特徴といえるでしょう。
まとめ
心理教育は、病気を正しく理解することから始めます。病名を聞いただけで先入観を持ってしまったり、実際に当事者と生活をしていく中で、自己効力感が低くなってしまったりすることもあります。だからこそ、正しい情報を得て、困難を解決するためにはどのように行動したらいいのか? 誰に相談したらいいのか? どのような専門機関があるのか? など、選択肢を広げていきます。身近に困難を抱えている人がいるようでしたら、まずは正しくその困難、困難の背景にあるものを理解することから始めてみてはいかがでしょうか。
参考
心理教育とは|心理教育・家族教室ネットワーク
5 心理教育|新潟大学医学部
実録・家族療法 3人のセラピストによる家族面接ドキュメント|YouTube
心理教育を中心とした心理社会的援助プログラムガイドライン|厚生労働省精神・神経疾患研究委託費13指2 統合失調症の治療およびリハビリテーションのガイドライン作成とその実証的研究
家族心理教育プログラムに参加した長期ひきこもり者の家族の心理的プロセス|日本セーフティプロモーション学会誌
心理教育プログラム|草津病院
心理教育ってなんだ?|公益財団法人住吉偕成会 住吉病院
こころ塾 心理教育(病気を知る)|あいクリニック神田