いじめ、虐待、体罰など、社会では他者の人権を踏みにじるような悲しい事件が多く起こっています。人が社会で生活していくうえでとても重要な概念が人権です。今回は人権とは何か、学校では人権についてどのような教育が行われているか、また、家庭でできることはあるのかを解説していきます。
もくじ
子供と一緒に考えたい!人権とはそもそも何か
人権とはそもそも何か、考えてみたことはありますか。人権とは人が享受する権利です。具体的には、神奈川県人権啓発ネットワークの言葉を参考にしましょう。
「すべての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」あるいは「人間が人間らしく生きる権利で、生まれながらに持っている権利」であって、だれにとっても大切なもの、日常の思いやりの心によって守られなければならないものです。
(引用元:人権とはなんですか | 神奈川県人権啓発ネットワーク)
つまり、肌の色や容姿や生まれ、性別などのようなもので、差別されることなく、人間らしく、幸せを追及する権利が人権なのです。
人権教育 学校では何を教わるの?
人権は誰しも不当に侵害することは許されないもので、他者の人権を尊重することが求められます。それでは、子供たちは学校でどのような人権教育を受けているのでしょうか。
人権教育の目的
人権教育は学校でどのような目的で行われているのでしょうか。文部科学省は人権教育の目標を以下のように掲げています。
一人一人の児童生徒がその発達段階に応じ、人権の意義・内容や重要性について理解し、[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるようになり、それが様々な場面や状況下での具体的な態度や行動に現れるとともに、人権が尊重される社会づくりに向けた行動につながるようにすること
(引用元:2.学校における人権教育 | 文部科学省)
簡単に言うならば、相手の立場に立って、思いやることのできる子供に育てるということが人権教育の目的といえるでしょう。人は一人では生きていくことはできません。社会で人と関わって生きていくためには人権教育はまさに、重要な教育といえるでしょう。
人権教育で身につける能力・資質
それでは、人権教育では具体的にどのような能力や資質を身につけることができるのでしょうか。文部科学省によると、知識的側面、価値的・態度的側面、技能的側面の3つがあるそうです。この3つについて、どのような能力・資質なのかをご紹介しましょう。
まず、人権教育で必要となる知識的側面です。人権教育においては、なぜ人権を尊重するか必要があるのかといった意義や人権の歴史、人権に関わる法律といったものから、自分の人権を守り、他人の人権を尊重するために必要な実践的知識まで幅広い知識が必要となります。
次に、価値的・態度的側面です。文科省の記述を参考にしましょう。
個人の尊厳をはじめ、自他の人権を尊重することの意義や必要性に対する肯定的な評価と受容、責任感や共感性・連帯性、人権擁護の実現を目指す意欲や態度
(引用元:第2章第2節 1人権教育の内容構成 | 文部科学省)
つまり、知識で知っているだけではなく、その知識が個人の価値観や具体的な態度に結びつける必要があるということです。
最後に技能的側面についてご説明します。人権について知識だけあっても十分ではありません 。実際に起こっている事象が差別なのか判断する能力や問題を解決するための能力が必要となります。つまり、技能的側面とは文部科学省の言葉を借りると、次のようになります。
知的諸技能と社会的諸技能などが含まれる。前者の例としては、コミュニケーション技能、合理的・分析的に思考する技能、偏見や差別を見きわめる技能などが挙げられる。また後者の例としては、相違を認めて受容する技能、協力的、建設的に問題解決に取り組む技能、責任を負う技能などが含まれる
(引用元:第2章第2節 1人権教育の内容構成 | 文部科学省)
学校ではどのような教育が行われるの?
それでは、実際に学校でどのような教育が行われるのでしょうか。
人権教育は、学校で行われるさまざまな教育と結びつけ、行われることが望ましいと考えられています。一方で学校教育で行われる各科目には、各科目の達成目標や目的があります。人権教育を他の教育とも結びつけて総合的に指導していくために、学校教育ではさまざまな工夫が施されます。
例えば、社会科の教育であれば次のようなことを意識します。
人権に関わる題材を扱う際に、児童生徒が自分自身に直接関わる問題を提示し、合理的・分析的な思考を行い、人権に関わる知識の内容を知的及び共感的に理解し、内面化することを促すような幅広い内容構成
(引用元:第2章第2節 1人権教育の内容構成 | 文部科学省)
ロールプレイング、シミュレーション、ディスカッションなどの、いわゆる体験的な手法を用いていきます。
学校における人権教育取り組み事例
それでは具体的にどのような人権教育が行われているのか、特色のある取り組みをしている学校教育についてご紹介しましょう。
北海道足寄高等学校の取り組み
北海道足寄高等学校では学校の行事を通じた人権教育に力を入れています。例えば、防災避難訓練や交通安全教育では命の尊さについて学ぶ、カナダ研修・ホームステイでは、国際交流をトオシテお互いの文化の違い理解した上で、受け入れる力を醸成するといったような取り組みが行われています。
参考
台東区立千束小学校の取り組み
台東区立千束小学校では障害に対する知識を深め、偏見や差別をなくす取り組みが行われています。具体的には、特別支援学校との交流を通して、どのようなことに配慮する必要があるのか、障害のある人、ない人がともによりよく生きていくために自身がどうあるべきか考えさせる教育内容になっているそうです。
参考