そのほかにどのような費用がかかっている?
続いては、無償の範囲外で、何にどのくらいの費用がかかっているのか見ていきましょう。文科省の調査を基に、3つのカテゴリに分けてご紹介します。
学校教育費
修学旅行・遠足・見学費 | 6,738 |
学校納付金等 | 10,135 |
図書・学用品・実習材料費等 | 19,049 |
教科外活動費 | 2,714 |
通学関係費 | 17,574 |
総額 | 60,043 |
(単位:円)
(結果の概要-平成28年度子供の学習費調査 2.調査結果の概要 |文部科学省 9ページより筆者作成 )
こちらは、平均で1人の子供を1年間、公立小学校に通わせるときにかかる教育関係の費用の平均です。私立学校の場合は授業料が入ってきてしまうので、公立学校の結果をまとめています。
修学旅行や遠足などは学校行事として行うので欠席するのが難しいものですが、有償になっています。また、図書・学用品・実習材料費等も2万円近くかかっています。
算数セット、習字道具や裁縫道具、実習で使う材料などは、細かく内容が決まっている上に学校が取りまとめて発注するため、買わないという選択ができません。費用がかかっている現状を無償と呼んでいいのかと疑問を呈している専門家も少なくありません。
学校給食費
公立小学校での学校給食費の年間平均は4万4,441円となっています。子供は昼食を食べるために帰宅することができないので、給食も学校に通うための必要経費と言えます。
参考
結果の概要-平成28年度子供の学習費調査 2.調査結果の概要 |文部科学省 1ページ
学校外活動費
総額 | 補助学習費 | その他の学校外活動費 | |
男 | 210,486 | 80,390 | 130,096 |
女 | 225,550 | 85,774 | 139,776 |
(結果の概要-平成28年度子供の学習費調査 2.調査結果の概要 |文部科学省 12ページより筆者作成 )
学校外活動費とは、学校の外で、教育の目的で親が子供に使う費用のことです。「補助学習費」には塾や参考書代など、「その他の学校外活動費」には習い事や地域のスポーツ少年団などが含まれます。こちらも年間の平均を表しています。
これは必ずしも義務教育に必須な費用ではありませんが、この金額を捻出できる家庭とできない家庭があり、子供が享受できる教育に差が出てしまっているのは事実です。
就学援助制度とは
上記のような「義務教育にかかる費用で無償の対象とならないもの」が負担できない家庭のために、各自治体が就学援助制度というものを設けています。この制度について見てみましょう。
制度の概要
学校教育法第19条において,「経済的理由によって,就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては,市町村は,必要な援助を与えなければならない。」とされています。
(引用元:就学援助制度について(就学援助ポータルサイト)| 文部科学省)
就学援助制度は、学校教育法によって定められたものです。具体的な支援は市町村が行いますが、財源は最大で半分国から出されます。
実際に受けられる支援と対象者
実際に支援を受けることができる家庭にはどのような条件があるのでしょうか。主なものを列挙します。
- 生活保護法に基づく保護の停止または廃止
- 生活保護の基準額に一定の計数をかけたもの(主に生活保護基準の1.2倍を超え,1.3倍以下)
- 児童扶養手当の支給
- 市町村民税の非課税
- 市町村民税の減免
- 国民健康保険法の保険料の減免または徴収の猶予
- 国民年金保険料の免除
(就学援助の実施状況 平成29年度に実施した調査 | 文部科学省 より筆者作成)
このような条件に当てはまっている家庭は、就学援助制度の対象となる可能性が高いです。子供の通っている学校や、お住まいの自治体に相談されることをお勧めします。
以下は小学生のいる家庭に対して、各自治体が1年間に支出した費用の平均です。
学用品費 | 11,819円 |
新入学児童生徒
学用品費等 |
34,495円 |
通学費 | 35,848円 |
修学旅行費 | 21,221円 |
(就学援助の実施状況 平成29年度に実施した調査 | 文部科学省 より筆者作成)
「子供の学習費調査」と項目が異なっているため少々分かりづらくなっていますが、学用品や修学旅行などまとまった費用がかかるものにそれなりの援助がされていることが分かります。
また、給食費なども市町村の支援の対象となります。家庭の負担をできるだけ軽くして子供の可能性を伸ばしてあげるためにも、必要な家庭はこの制度の活用をぜひ検討してください。
参考
小中義務教育学校における就学援助費|つくば市公式ウェブサイト
まとめ
無償といいつつ、何かと費用がかかる義務教育。1947年に作られた法律が現在でもそのまま運用されているため、制度面での見直しをするべきという意見も少なくありません。就学前教育が無償化されるなどの動きがある現在、これからの公教育をどうしていくべきかは大人世代がしっかり考えるべき課題かもしれません。
参考
日本国憲法 | 衆議院
第4条 (義務教育) | 文部科学省
教科書無償給与制度 | 文部科学省
義務教育公立学校における無償の範囲 | 文部科学省
就学援助制度について(就学援助ポータルサイト)| 文部科学省