義務教育はいつから始まった?日本・世界の歴史と現代の制度について - cocoiro(ココイロ)

小学校、中学校は義務教育と日本ではなっています。しかし、そもそも義務教育とは何か、どのように根付いているかご存知の方は多くはないのではないでしょうか。
今回は、各国の義務教育制度が成立した経緯を紹介することを通して「そもそも義務教育とは?」という疑問にお答えしていきます。

日本の義務教育の歴史。いつから始まった?

まずは日本の義務教育の歴史を見ていきましょう。現代に続く多くの諸制度と同様、義務教育も大政奉還後の明治時代から始まっていきます。

明治

学制

日本の義務教育が始まる起源は1872年に発布された「学制」でした。学制に関する項目のうちの一つは以下のようになっています。

厚クカヲ小学校ニ可用事

(引用元:三 学制の実施 | 文部科学省

「あつくちからを小学校にもちうべきこと」と読みます。それまでに存在しなかった義務教育を、まず小学校から整える制度でした。

発布からすぐに小学校が整備されていったわけではなく、全国に行きわたるには実際には数年がかかりました。それまで働き手だった子供を学校に通わせる義務を国民に負わせるだけでなく、授業料も徴収するという仕組みだったため反発はとても強かったそうです。

小学校の修業年限は、下等小学校4年、上等小学校4年の計8年でした。

教育令

学制への反発が強かったこともあり、1879年には「教育令」が発布されて義務教育制度が刷新されます。修業年限は変わらず8年間とされていましたが、通学させる下限として「最短で16ヶ月」というものが別に設けられました。子供も働かないと生活が成り立たないという家庭に配慮した形です。

しかしこの教育令は翌年には改正されます。「最短で16ヶ月」があまりにも短すぎたためか、下限を「3年(毎年32週通学の場合)」また、3年経過後も「相当の理由のない限り毎年16週以上通学させる」と規定されました。

参考
我が国の義務教育制度の変遷 | 文部科学省

小学校令

1886年の「小学校令」で、初めて「義務教育」という言葉が使われるようになります。法制度や校舎・教員・教材などのインフラが整ってきて、ようやく強制力を前面に出して教育を進めることができるようになった時期と言えるでしょう。

最初の小学校令では、義務教育期間は3〜4年とされました。これは「尋常小学校」(学制の下等小学校に当たる)卒業までの年限です。尋常小学校の上には「高等小学校」が設けられました。

この小学校令は複数回改正され、1907年の改正では尋常小学校の年限が6年になりました。これが現在まで続く6年制小学校の始まりとなっています。尋常小学校の年限が伸びるごとに、高等小学校の年限が短くなっていきました。

参考
小学校令 | Wikipedia
高等小学校 | Wikipedia

昭和

国民学校令

太平洋戦争が激化し、アメリカと開戦する直前の1941年に「国民学校令」が発布され、尋常小学校・高等小学校は国民学校初等科・高等科(もしくは旧制中学)に改組されます。修業年限はそれぞれ6年・2年とされ、この8年間が義務教育となりました。しかし戦時下の特例で高等科は終戦まで実施されませんでした。

ちなみに、戦前の旧制中学校は大学や師範学校など、当時の高等教育に進むための学校でした。中等教育が特進コースと一般コースに分かれていたと考えると分かりやすいかもしれません。

高等教育を希望する子供は尋常小学校(もしくは国民学校初等科)を修了すると特進コースである旧制中学に進学し、義務教育修了後は働くという子供たちは一般コースである高等小学校に進んでいました。

参考
国民学校 | Wikipedia

教育基本法・学校教育法

終戦後の1947年、現在まで続く法律である「教育基本法」「学校教育法」が制定されて義務教育が現在の小学校6年・中学校3年となります。戦前までは、一貫して「小学校=義務教育」という捉え方だったのが、ここで変わります。