キャリア教育とは?具体的な取り組みと現在の評価について

「キャリア教育」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。職業人向けの研修のような名称ですが、現在の小学校から高校でも行われているプログラムです。概要や具体的な取り組みについてご紹介します。

キャリア教育とは

キャリア教育は2017、2018年改訂の学習指導要領から盛り込まれたカリキュラムです。まずは概要を解説します。

キャリアを形成していくために必要な能力や態度の育成

文部科学省では、キャリア教育を以下のように定義しています。

キャリア教育は,子ども・若者がキャリアを形成していくために必要な能力や態度の育成を目標とする教育的働きかけである。そして,キャリアの形成にとって重要なのは,自らの力で生き方を選択していくことができるよう必要な能力や態度を身に付けることにある。したがって,キャリア教育は,子ども・若者一人一人のキャリア発達を支援し,それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な能力や態度を育てることを目指すものである。自分が自分として生きるために,「学び続けたい」「働き続けたい」と強く願い,それを実現させていく姿がキャリア教育の目指す子ども・若者の姿なのである。

(引用元:キャリア教育とは何か | 文部科学省 14ページ)

これまでの日本では学校での教育を受ければすぐに就職し、そのまま定年まで同じ会社で働き続けるというパターンも少なくありませんでした。しかし終身雇用制度が当たり前でなくなってきている現在、業種の選び方や雇用の形、転職など、働く人が自分で決断していかなければならないことはたくさんあります。

「なんとなく」「他の人に勧められたから」などではなく、自分自身の考えでキャリアを決めていく、というのがキャリア教育の目標です。

文科省が定義する「キャリア」とは?

さて、キャリア教育についてよりよく理解するためには、文部科学省が「キャリア」をどのように定義しているのかを確認しておく必要があります。

20世紀後半の産業構造の新たな変革期を迎え,「キャリア」は,特定の職業や組織の中での働き方にとどまらず,広く「働くこととのかかわりを通しての個人の体験のつながりとしての生き様」 を指すようになった。

本『手引き』では,「キャリア教育」の「キャリア」を「人が,生涯の中で様々な役割を果たす過程で,自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ね」ととらえることとする。

(引用元:キャリア教育とは何か | 文部科学省 15ページ)

これまでの日本社会では「キャリア官僚」「キャリアウーマン」といった言葉がよく使われてきました。この「キャリア」には一般的な同様の職種と比べて社会的地位、経済力、ときには労働時間や責任などが高い、多いという意味が込められています。

文科省が定義する「キャリア」は、これより幅広い意味合いを持ちます。「働くこと」は必ずしも賃金労働だけにとどまらず、社会との関わりという観点から無償労働なども含まれています。学校内での活動、家事労働なども含めて、自分がどのように社会と関わって生きていくのかを包括的に考えるという意味が込められています。

職業教育とはどう違う?

仕事に関する教育といえば「職業教育」がすぐに思い浮かびますが、キャリア教育とはどのように異なるのでしょうか。

「職業教育」とは、「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育」である。職業教育は、学校教育のみで完成するものではなく、生涯学習の観点を踏まえた教育の在り方を考える必要がある。

(引用元:第1章 キャリア教育・職業教育の課題と基本的方向性 | 文部科学省

文部科学省によると、職業教育はより実践的な教育であるということになっています。調理を例に取るなら、調理学校に通ったり、実際に飲食店の現場で働きながら技術を学んだりと、学校教育にとどまらないのが特徴です。

具体的にどんな能力を伸ばすの?

キャリア教育はキャリアに対する方向性や考え方をはぐくむためのものと定義されています。文部科学省はそのために以下のようなカテゴリの力を伸ばすことを目標としています。

人間関係形成能力  他者の個性を尊重し,自己の個性を発揮しなが ら,様 々 な人々とコミュニケーションを図り,協力・共同してものごとに取り組む。 自他の理解能力
コミュニケーション能力
情報活用能力  学ぶこと・働くことの意義や役割及びその多様 性 を 理 解 し,幅広く情報を活用して,自己の進路や行き方の選択に生かす。 情報収集・探索能力
職業理解能力
将来設計能力  夢 や 希 望 を持って将来の生き方や生活を考え,社会の現実を 踏 ま え な がら,前向きに自己の将来を設計する。 役割把握・認識能力
計画実行能力
意思決定能力  自らの意思と責任でよりよい選択・決定を行うとともに,その過程での課題や葛藤に積極的に取り組み克服する。 選択能力
課題解決能力

キャリア教育とは何か | 文部科学省 18ページより筆者作成)

親にとっては、これらの能力は学校生活全体の中で身につけていってほしいと考えるものですが、キャリア教育というカリキュラムに切り出し、細分化することでより重点的に対応することが学校側に求められています。