読書感想文の書き方とは?子供がどう読んだかが大切
ポイントに沿ってリストアップしてみよう
おもしろかったところは?
『人間失格』でおもしろいと感じる場面はなかなか見つからないかもしれません。葉蔵が周囲を笑わせるために道化るエピソードはいくつか挿入されていますが、人間への恐怖に裏付けられている行動だと知ってしまっている読者には痛々しく映るかもしれません。
心に残っているところは?
主に人との関係性の難しさを感じている子供は、葉蔵の心の動きに共感できるかもしれません。また、葉蔵の以下のような気づきは、大人でもハッとするかもしれません。
(それは世間が、ゆるさない)
(世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)
(そんなことをすると、世間からひどいめに逢うぞ)
(世間じゃない。あなたでしょう?)
(引用元:太宰治『人間失格』|青空文庫)
繊細すぎるが故に人を恐れていた葉蔵ですが、この気づき以降そこまで他人のことが気にならなくなっていきます。
おもしろくなかったところは?
全体的に沈鬱な印象を受ける作品です。子供によっては、読んでいる間中まったくピンとこなかった、という感想を持つこともあるかもしれません。どうしておもしろく感じなかったのかという理由を探ってみると、その子らしい感想文が書けるかもしれません。
よく分からなかったところは?
「人間失格」とは一体なんだったのかが、読者に残される大きな疑問です。また、それ以外にも「なぜ葉蔵はすぐに女の人に頼ったり逃げたりするのか」「なぜアルコールをやめることができないのか」「そもそもなぜそんなに他人を恐れるのか」など、よく分からないなと感じるであろうポイントはいくつもあるでしょう。そのような疑問は書き留めておきましょう。
共感できなかったことも素直に。感想文の柱を決めて書こう
『人間失格』は、自分の弱さに向き合いきれなかった若者の物語とも読むことができます。旧制高校進学のために上京して以降、葉蔵のこういった傾向が悪化していきます。これは、思春期から青年期を過ごした大人には、少なからず経験があることではないでしょうか。
一方、読書感想文を書く年代の子供たちは、まだ「自分のことが自分でままならない」という感覚を強く持つ年代ではないかもしれません。そのため、葉蔵に対する感想が批判的になったり、嫌悪感を持ったりする子供もいるでしょう。それはその子供のその年齢なりの読み方なので、親はあまり口を出さずに見守ってあげると良いのではないでしょうか。
まとめ
共感する人は非常に共感する一方、難解でもある『人間失格』。10代にはまだ少し実感がわかない題材かもしれませんが、読むことへの挑戦をサポートしてあげたいものです。
参考
「書くこと」指導への一提言:読書感想文指導を中心に|鈴木恵|新潟大学学術リポジトリ Nuar
読書感想文再考 :「感想」文指導で何を指導するか(国語科)|成家 雅史|東京学芸大学リポジトリ
「人間失格」とは・・・ 表彰式小中学生読書感想文コンクール|向日市立図書館