病院でステロイド剤が処方されるのはどんなとき?
日本皮膚科学会は急性炎症期の炎症性皮疹ステロイド剤の使用について推奨していませんが、ステロイド剤を治療に用いることが絶対にないわけではありません。では、どんな症状のニキビに対してステロイド剤であるリンデロンが処方されるのでしょうか。
症例1:赤紫色になっているニキビ
日本皮膚科学会のガイドラインでは、炎症を伴う囊腫にステロイド剤の使用を推奨しています。
炎症を伴う囊腫に,囊腫内へのステロイド局所注射を推奨する.
(引用元:尋常性痤瘡治療ガイドライン2017|日本皮膚科学会ガイドライン,P1288 CQ26:炎症を伴う囊腫/硬結にステロイド局所注射は有効か?)
皮膚の囊腫とはどのような症状かは、MSDマニュアル家庭版の説明を見てみましょう。
皮膚嚢腫は、徐々に大きくなっていく隆起した腫瘍で、よくみられます。表皮封入嚢腫には、皮膚の分泌物からなる悪臭を伴うチーズ状の物質が入っています。
(引用元:皮膚嚢腫|MSDマニュアル家庭版)
炎症を伴う嚢腫の治療についてマルホ皮膚セミナーでは、粉瘤とほぼ同一のものと考えて、以下のようなステロイド剤による治療方法を説明しています。
炎症が比較的軽度で、明らかな感染症状を伴わない場合などは、抗炎症作用を期待したステロイドの嚢腫内注入を考慮して良いと考えられます。
(引用元:「第114回日本皮膚科学会総会(11) 教育講演32-4 粉瘤の治療を考える -早く、きれいに、少ない痛みで治すために―」(2015年12月24日放送)|マルホ皮膚科セミナー)
症例2:ケロイド状になっているニキビ跡
日本皮膚科学会のガイドラインでは、痤瘡の肥厚性瘢痕にステロイド剤の使用を選択肢の1つとして推奨しています。
痤瘡の肥厚性瘢痕に,ステロイド局所注射を選択肢の一つとして推奨する.
(引用元:尋常性痤瘡治療ガイドライン2017|日本皮膚科学会ガイドライン,P1290 CQ31:痤瘡の肥厚性瘢痕にステロイド局所注射は有効か?)
痤瘡の肥厚性瘢痕とは、日本創傷外科学会で分かりやすく説明しています。
肥厚性瘢痕は炎症がなかなか引かないキズあと、と考えるとよろしいかと思います。
(中略)
ケロイドは特に意識しないような小さなキズ、たとえばざ瘡(ニキビ)や毛嚢炎などからもでき、何もない場所に突然できたように思えるものもあります。
(引用元:傷跡の治療について|一般社団法人日本創傷外科学会)
そんなケロイド状になっている創傷を治療する方法の1つとして、NPO法人創傷治癒センターでステロイド注射やステロイド軟膏を使用する治療法を説明していますので下記を参考になさってください。
参考
傷と治療の知識 肥厚性瘢痕とケロイドの原因とその治療|NPO法人創傷治癒センター
まとめ/薬は用法用量を守って正しく使おう
ステロイド剤は副作用がある薬です。しかし、ステロイド剤自体が問題のある薬なのではありません。
ステロイドは正しい使い方さえすれば、とても優れた効果のある薬です。ステロイドの作用をよく理解し、正しい知識を得たうえで、医師、薬剤師と相談しながら上手に使用しましょう。
(引用元:ステロイドの塗り方|社会医療法人財団聖フランシスコ会 姫路聖マリア病院)
皮膚科でリンデロンを処方された場合は、受診した皮膚疾患の治療に必要と判断したわけです。そのため、受診したときとは別の皮膚疾患の治療に、自己診断で安易にリンデロンを使用するのは危険です。
一般社団法人くすりの適正使用協議会は薬を正しく理解し使用するための「くすりの知識10ヵ条」をまとめています。以下の参考を読まれて、薬の正しい使い方についての知識を深めておきましょう。
参考
くすりの知識10ヵ条|一般社団法人くすりの適正使用協議会
化膿したニキビ、吹き出物の治し方とは?自分でできる対策と秘訣|Kracie
尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)について|メディカルノート
皮膚科で受診しよう!|ニキビ一緒に治そうProject|製薬会社のマルホ
リンデロン-VG軟膏0.12%|くすりのしおり
ニキビ治療にステロイドは有効か?|ニキビケアのプロアクティブ
尋常性痤瘡治療ガイドライン2017|日本皮膚科学会ガイドライン
皮膚嚢腫|MSDマニュアル家庭版
「第114回日本皮膚科学会総会(11) 教育講演32-4 粉瘤の治療を考える -早く、きれいに、少ない痛みで治すために―」(2015年12月24日放送)|マルホ皮膚科セミナー
傷跡の治療について|一般社団法人日本創傷外科学会
ステロイドの塗り方|社会医療法人財団聖フランシスコ会 姫路聖マリア病院