子供のニーズから考えるネグレクトの種類。もしかしてと思ったら?

子供に暴力を加えるのではなく、「必要なものを与えず、放置する」種類の虐待が「ネグレクト」です。なんとなく想像はできるものの、もう少し具体的な定義が知りたい。そう思った人のために、ネグレクトの種類や、ネグレクトの状態にある子供を見つけるためのサインをご紹介します。

ネグレクトの種類

ネグレクトは、いくつかの種類に分類することができます。まず最初に大まかな定義を確認しておきましょう。

総論としては子供に必要なものを与えないこと

小児に対するネグレクトとは、小児の成長に欠かせないものを与えないことです。小児虐待とは、小児に危害を加えることです。

(引用元:小児に対するネグレクトと虐待の概要 – 23. 小児の健康上の問題 | MSDマニュアル家庭版

ネグレクトの総論については、上記の「MSDマニュアル家庭版」は簡潔にまとまっており、参考になります。食事・衣服・住居・教育・医療など、日常的に生活していく上で子供に必要なものを適切に与えるないことがネグレクトです。

積極的ネグレクトと消極的ネグレクト

ネグレクトは「積極的ネグレクト」と「消極的ネグレクト」に分けることができます。積極的ネグレクトとは、親に十分な経済的な余裕があり、子供の養育に必要なものが何か、把握しているのにネグレクトをすること。「分かっているのに適切な子育てをしない」ことです。

一方、消極的ネグレクトとは、親が経済的に困窮している、知的障害がある、子育てに関する知識がないなどの理由で、子育てが結果的にネグレクトになってしまうことです。どちらの場合も、結果的には子供にとって良い環境を提供できていないことになります。

子供のニーズから見たネグレクトの種類

上記とは別に、子供のニーズ別にネグレクトを分類する方法もあります。事例として報告されることが多いものをご紹介します。ネグレクトではないかと疑われるサインも確認してみてください。

身体的ネグレクト

身体的ネグレクトには、食事を与えない(栄養が偏った食事しか与えないことも含む)・衣服を用意しない・洗濯をしない・子供を風呂に入れてあげないなど、体に関わるさまざまなニーズを満たさないことを指します。食事の問題は外部からは見えにくいですが、毎日同じ服装をしている、なんとなく服装などが汚れているなど、子供の外見からネグレクトが発覚することもあります。

小学校1年生の娘を持つ専業主婦が出会ったケース。娘の友だちが家に遊びに来た際、男の子が勝手についてきて家に上がりこんだ。

さらに、目を離した隙に勝手に引き出しや冷蔵庫を開けて、おもしろそうなものや食べ物をあさった。注意すると、「ママから、『どこかに行って、だれか親切なおばちゃんにでも食べさせてもらいなさい』って言われた」と答えたという。

(引用元:勝手に家に入る…「放置子」が親元に帰らないワケ : 深読み | 読売新聞オンライン

上記の事例のように、いつも1人で外にいて、食事時など多くの子供が帰宅する時間になっても帰らない子供もネグレクトの状態にある可能性があります。こちらは勝手に家に上がり込む子供の事例ですが、公園などで長い間1人で過ごしている子供もいます。

身体的ネグレクトが疑われるサイン

  • 毎日同じ服を着ている
  • 外見が汚れている
  • サイズが合わない服を着ている
  • 食事時になっても家に帰らない

情緒的ネグレクト

子供がもっと親と過ごしたい、甘えたいと思っているのに放置するのが情調的ネグレクトです。愛情を与えない虐待とも言えます。ノンフィクション作家の石井光太さんが取材した事例では、母親が子供より自分の恋愛を優先した生活を続けた結果、子供が愛着障害になったのではないかと分析しています。

参考

母のネグレクトと兄からの性的虐待…「愛着障害」になった女の一生(石井 光太) | 現代ビジネス  講談社(1/4)

情緒的ネグレクトが疑われるサイン

  • 特定の人にとても甘えてくる
  • 逆に特定の人に対して非常に攻撃的になる

医療ネグレクト

必要な医療を受けさせないのが医療ネグレクトです。

①子どもが医療行為を必要等する状態にある

②その医療行為をしない場合、子どもの生命・身体・精神に重大な被害が生じる可能性が高い(重大な被害とは、死亡、身体的後遺症、自傷、他害を意味する)

③その医療行為の有効性と成功率の高さがその時点の医療水準で認められている

④(該当する場合)子どもの状態に対して、保護者が要望する治療方法・対処方法の有効性が保障されていない

⑤通常であれば理解できる方法と内容で子どもの状態と医療行為について保護者に説明がされている。

(引用元:医療ネグレクトの定義 | 厚生労働省

上記は厚生労働省による医療ネグレクトの定義です。医療ネグレクトは、経済的に困窮している場合だけでなく、思想信条などからも発生し得ます。親が代替医療を優先したために、アトピー性皮膚炎から重篤な感染症に罹患させ、子供が死亡した事例などが報告されています。

参考

ネグレクト(こどもに適切な医療を与えない)について2(児童虐待防止連絡会) | 社会福祉法人 千代田町社会福祉協議会

医療ネグレクトが疑われるサイン

  • 風邪などを長くこじらせている
  • 怪我をしても手当てをした形跡がない
  • 虫歯を治療していない

教育的ネグレクト

子供が学校に行きたがっているのにもかかわらず、通わせないのが教育的ネグレクトです。教師などが家庭訪問しても、「本人が学校に行きたくないと言っている」など、不登校を装うような受け答えをする親もいます。

父と母は、交通事故の後遺症などで通院し、生活保護を受けている。長女は、学校にはほとんど登校していない。

長女の担任の教師が家庭訪問したところ、両親は不在。長女は、中にいるようだが出てこない。家の中は、脱いだ衣服やマンガ本、食べかけの物などが散らかっていた。

別の日に、学校で長男に様子を聞いたところ、両親はパチンコ屋に出かけていることが多く、長女は3歳の子どもの面倒を見ているとのこと。

(引用元:Ⅶ 事例(参考) | 埼玉県 39ページ)

このように家庭訪問をしても子供に会うことができない場合は、虐待しているのではと疑ったほうがいいかもしれません。ただし、本当に不登校だった場合、学校そのものがトラウマになっている子供に、学校関係者が無理に会おうとすると逆効果を示すこともあります。保護者とよく話し合うことが必要です。

教育的ネグレクトが疑われるサイン

  • 学校に行かず、かつ自宅に行っても本人に会えない
  • 保護者と話し合おうとしても避けられる

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