幼稚園のお受験のメリット・デメリット
幼稚園のお受験のために努力している家庭はまだまだ少数派です。そのため、幼稚園のお受験対策に取り組み始めると、祖父・祖母や親族、また友人の家族から「そこまでしなくてもいいのではないか」と反対されることもあるかもしれません。
そのようなとき、幼稚園お受験のメリット、デメリットをはっきり知っており、どちらも分かった上で選択しているのは非常に重要です。
メリットは大きい
エスカレーター式の名門幼稚園のお受験には内部進学ができるというメリットがあります。
株式会社イオレの『受験に関するアンケート調査』によると、子供の受験を決めた理由に関する設問で29.6%の親が「内部進学ができる」というメリットを挙げています。親にとっては、年々過熱化していく受験戦争から子供を守ってあげる一つの方法として、早い時期の受験を考えていることが分かります。
(参照元:0歳から小学6年生のお子様を持つ親に『受験に関するアンケート調査』を実施|株式会社イオレ)
小学校受験に有利になる
エスカレータ式の名門幼稚園に入ることができれば、小学校受験などに煩わされることなく名門小学校に入学させることができます。
幼稚園のお受験とは異なり、小学校受験は子供にも大きな負荷がかかります。幼稚園のお受験では、子供は自分が受験している自覚がほとんどありません。しかし、小学校受験ではすでに相当の勉強をしなくてはならず、ストレスを抱えることもあります。
難関の小学校受験を考えているなら、幼児教室に通わせ、毎日勉強をさせ、模試を受けさせなければなりません。また、小学校受験で不合格になる可能性もあるでしょう。幼いうちから挫折感を味わわせてしまうこともあるかもしれません。
かけがえのない小学校前の時代を伸び伸びと過ごさせてあげつつも、将来の進学などを考えた時に、幼稚園のお受験が最適だと判断する親は少なくないのです。
中学校受験のストレスを減らせる
小学校受験も子供に受験ストレスを与えますが、中学校受験なら、その勉強量の多さからより大きなストレスが加わることも考えられます。中学校受験の準備期間は長く、一般的には小学3年の2月に塾に入る子が多く、数年の受験勉強が必要です。小学校の高学年になると、ホルモンバランスも変わり、体、精神ともに大いに変化を経験する時期であり、子供のストレスは限界に達することもあります。
中学校受験のために勉強に没頭してきた子供たちの中には、遊びや趣味などの余裕を失ってしまい、子供時代だからこそできる経験を積む機会を逃してしまう子もいるのも事実です。親が覚悟を決めて幼稚園のお受験に挑むのは、将来の受験ストレスを軽減するための一つの方法なのです。
デメリットも考えておこう
幼稚園のお受験にデメリットがないわけではありません。費用や、子供の将来への不安は尽きないことでしょう。どんな問題を経験する可能性があるかを理解したうえで、幼稚園のお受験を考えることをおすすめします。
受験が自分の子供に合っているか不安
幼稚園お受験のデメリットの最たるものは、早すぎる進路決定が子供に及ぼす影響です。その決定が、将来どうなるかは正確には分からないのです。
株式会社イオレが実施した『受験に関するアンケート調査』によると、受験に対しての不安や悩みに関する設問で59.5%の親が「受験が自分の子供に合っているか不安」という悩みを答えています。
エスカレータ式の名門幼稚園のお受験に成功すると、内部進学ができ、子供は小学校から大学まで不必要の受験勉強をしなくてよくなります。しかし、子供が成長するにつれて、自分の意志で別の高校・大学を受験したいという気持ちになることはないでしょうか? また、別の分野の専門学校や海外留学など、自分の幅を広げる将来に進みたいと思うかもしれません。どうしても、付属学校の校風が子供には合わなかったという可能性もあります。
幼稚園のお受験を志す3歳前後の段階で、これから十数年の将来を見越して決定を下さなければならないのは、親にとって大きなストレスになります。これは、確かに早すぎる受験のデメリットと言えるでしょう。
費用負担が大きい
名門と言われる私立幼稚園のお受験を考えるのであれば、費用がどれほどかかるかを事前に調べておく必要があります。
東京都が定期的に行っている「都内私立幼稚園入園児(4歳児)納付金調査」では、各私立幼稚園の費用内訳(入園料や保育料、施設費など)、1年間で支払った費用を調べることができます。
(参照元:「平成31年度都内私立幼稚園入園児(4歳児)納付金調査」の結果について|東京都)
平均でも50万前後、最も高額だった「青山学院幼稚園」は150万を超えました。公立系の幼稚園の場合、年間でも10万~20万円まで行かない場合が多いようです。私立幼稚園に子供を通わせる場合は、1年間にどれほどの費用がかかるかを計算しておく必要があります。
また、内部進学で子供が中学校、高校と学年を進めていくに連れてさらに費用がかかることも事実です。文部科学省が行った「平成28年度子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校まで私立に通った場合の総額が約1,170万円であるとされています。もし、幼稚園から高校までがすべて公立だった場合は、約540万円なので、その差は3.28倍となります。
(参照元:平成28年度子供の学習費調査|文部科学省 報道発表(平成29年12月22日))
これに加えて大学進学などの費用を考えなければなりません。幼稚園のお受験から、数十年にわたり、子育て・教育費用に多額の資金が必要であるという事実は知っておく必要がありそうです。
最後に
小学校受験、中学校受験、高校受験、大学受験と受験勉強の難易度は大きくなります。子供の受験ストレスも大きくなります。こうした受験と、幼稚園のお受験は大きく異なります。幼稚園のお受験で、覚悟を決めて努力しなくてはならないのは、子供ではなく親なのです。
子供の将来のために幼稚園のお受験を決めるのであれば、夫婦でメリット・デメリットをよく話し合い、費用を計算し、何よりも子供の将来のことを考えて決定したいものです。幼稚園のお受験は誰より親が試されるものとなるのです。
参考
主婦の友社(2017/5/31)「幼稚園選び必勝ガイド」株式会社主婦の友社
働くママの附属幼稚園受験 メリット・デメリット|日経DUAL
大学までエスカレータ、幼稚園受験ってすべき?|日経DUAL
「女子の受験」を襲った想定外の”3つの関門” | 中学受験のリアル | 東洋経済オンライン