ALTと課題
ALTクラスには、生きた英語を学べたり、外国人とふれあいの時間を持てるといったメリットがありますが、課題も少なからずあります。ここでは、どのような課題があるのかを紹介します。
来校数が少ない
(参照元:ALTがいる授業、子どもたちには人気? 親は……!?|ベネッセ 教育情報サイト)
ベネッセが、2012年3月7日~2012年03月13日の間に小5~高3の子供を持つ保護者を対象に行った調査によると、ALTが子供の学校の授業に来る頻度は「週1回以上」「週1回程度」と回答した保護者が3割前後を占めました。中には「来ていない」という学校や、3ヶ月に1回1時間の授業を学校全体で受ける学校もあるようです。子供からは「ALTの先生はあんまり授業に来てくれないから、仲良くなりたくてもなれない」といった不満の声も上がっているようです。
小学校では外国語活動として、5・6年生を中心に英語の授業が行われています。現在の小学5・6年生が習っている内容を、小学3年生から始めようという動きがあり、文部科学省は2020年からは小学3年生から英語を必修化、小学5・6年生にいたっては教科化すると発表しました。そのため、今のALTの来校頻度では不十分であり、担任が1人で英語の授業を行わなくてはならない状況になることが予想されます。
小学校の先生は英語の専門ではないため、英語を教えることに自信がなかったり、不安を抱えている先生も少なくはありません。理想はALTの増員ですが、さらなるALTの雇用は経済的に大きな負担になるのではと懸念されています。
質の問題
ALTによってはTESL(Teaching English as a Second Language)や TEFL(Teaching Enlgish as a Foreign Language)、TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)といった英語が母国語でない人たちに英語を教えるための資格を保持している人もいます。しかし、ALTは母国語が英語、またはそれと同等のレベルであり、大学卒業程度の学歴があれば、特別な資格がなくてもなることができるものです。ALTに関する基準が何もないため、能力が不適当であるということも起こっています。
ALTと資格のほかにも、ALTの日本語能力も問題視されています。ALTの中にはほとんど日本語が話せず、担任や担当教員をはじめ、そのほかの教職員や児童生徒と意思の疎通がまったくできないという人もいるようです。特に在日歴や勤務歴の短いALTに多いとされています。
不安定な雇用
ALTの中には契約年度内に中途退職したり、最小契約年数で退職してしまう人がおり、問題となっています。特にALTが契約期間中に中途退職してしまった場合、代わりが見つかるまで担任や担当教員が1人で授業を行わなければならず、ALT採用の狙いの1つであるチーム・ティーチングを実現させることができません。
ALT退職の背景には、役割の曖昧さや日本人教員との関係構築の困難が挙げられており、これらの問題が学校現場でのALTの孤立を産みだしていることが指摘されています。そのため、教育現場におけるALTの位置づけを明確にし、日本人教員によるALTへの支援について検討する必要性があると考えられています。
おわりに
ALTは日本語では外国人指導助手と呼ばれ、英語の授業内で担任や担当教員と共に英語を教えています。子供たちはALTと過ごすことで、生きた英語を学べ、異文化や異言語に触れることが可能です。
しかし、ALTの来校回数や質の問題など、これから向き合っていかなければならない課題もあります。子供たちの英語に対する学びの意欲を引き出すためにも、ALTの存在は欠かせないものです。課題を解決し、子供たちにより良い英語学習の場を提供していけると良いでしょう。
参考
小学校・中学校・高等学校におけるALT の実態に関する大規模アンケート調査研究|上智大学
別紙) 文部科学省が一般的に考える外国語指導助手(ALT)とのティーム・ティーチングにおけるALTの役割|文部科学省
外国語青年招致事業|Wikipedia
ALT(外国語指導助手)ってどういう仕事?|グローバス採用ナビ
英語、小3に前倒し プログラミング必修化|毎日新聞
ALTがいる授業、子どもたちには人気? 親は……!?|ベネッセ教育情報サイト
退職を選んだ外国人指導助手(ALT)が語るティームティーチングの課題 : アクティブ・インタビューを用いて|大阪大学学術情報庫