少子化が進み過保護や甘やかしが子供を精神的に弱くしストレスを生んでいるという指摘もありますが、子供がストレスを抱える原因はそれだけではありません。そこで、子供のストレスの原因やストレスによって引き起こされる症状、子供のストレスをチェックする方法などについて解説します。
もくじ
ストレスによって引き起こされる子供の症状
昔から「病は気から」と言われるように、心や精神の状態が体に及ぼす影響には計り知れないものがあるとされています。大人でも嫌なことがあると食欲がなくなったり、やる気がそがれたりすることがありますが、まだ精神的な強さを持ち合わせていない子供は、さらに顕著でさまざまな症状となって出てくることがあります。
大人からみれば取るに足らないことであっても、子供は深く悩みそれがストレスとなって体や心をむしばまれることも考えられます。ストレスが子供に影響する症状には具体的にどんなものがあるのでしょうか。
発熱、腹痛、下痢
子供に発熱があり風邪かと思って病院を受診しても風邪ではない、しかし、微熱が何日も続くということがあります。慢性的なストレス状態が続いていることが考えられ、体内に炎症が起こって発する熱ではないため、解熱剤や抗生剤などを服用しても効果はありません。
ストレスによる身体的症状として最も多い症状に腹痛、下痢があります。大切な試験や試合の前にお腹を下すという一時的なものとは違い、慢性的なストレスの場合は、毎日その状態が続くことになります。回復のためにはストレスの根本原因を解消することが一番です。
咳、嘔吐
吐き気、嘔吐は、暴飲暴食や食中毒のみでなくストレスが原因となることがあり、心因性嘔吐と呼ばれています。実際に吐くことはなくても吐き気だけがずっと続くこともあり、子供にとってはとても辛い状態となります。
吐き気と同時に咳が出る場合は、自律神経失調症も疑われます。子供は自律神経の調節機能が未発達であるため、自律神経が乱れやすくそれにストレスが重なると深刻な状況になることも考えられます。環境の変化やイベント前など、過度のストレスが負担となって現れる症状のひとつであると言えるでしょう。
アレルギーや蕁麻疹
蕁麻疹は、食物や薬物、ハウスダストや花粉などのアレルゲンが原因となって起こるものと、それ以外のものに分かれます。ストレスが原因で皮膚に異常が起こる蕁麻疹は心因性蕁麻疹と呼ばれるもので、アレルゲンもないのに皮膚に湿疹や肌荒れが生じることがあります。子供に発疹ができるとすぐにアレルギーを疑いがちですが、ストレスでも発症するということを理解しておきましょう。
赤い膨らみに痒みを伴い、ストレスを感じる度に発疹ができる場合は心因性のものであると言えるでしょう。塗布薬を塗ってもなかなか改善されないことが多く、ストレスの軽減を図ることで自然に治癒することもあります。
眠れない・起きられない
大人でもストレスによって不眠やなかなか起きられないという状態に悩まされることがあります。ストレスは自律神経やホルモンバランス、血流などを乱すので体が一般的なサイクルに沿って休むということができなくなることがあります。
子供にとって睡眠中は成長ホルモンが活発に分泌される大切な時間です。また、眠れないから起きられないという悪循環が続くことによって不登校になり、深刻な状態になると引きこもりやうつ症状に移行することもあります。夜更かしや就寝直前の食事をさせずに、軽い運動をさせること、朝日を浴びさせることなどを心掛けましょう。
子供のストレスとなる原因
家庭や幼稚園、保育園でのんびりと過ごしていた子供は、小学校、中学校と進級を重ねるにつれて、成績、教師や友人との関係、クラブ活動、学校行事、などさまざまなことがストレスの原因となることが考えられます。また、家庭環境などの学校以外で悩むことも少なくありません。
大人にとってはたわいものないことであっても当事者である子供にとってはとても辛い状況が続き、慢性的にストレスを抱える状態となることもあります。子供のストレスの兆候を見逃さないことと同時にどんなことがストレスの原因として考えられるのかについても理解しておくといいでしょう。
友達、先生との関係
学校は子供にとって大人の職場に匹敵する立派な社会です。好き放題言い合える家族とは違って、本音と建て前を使い分けたり、場面ごとに仮面をかぶらくてはならなかったりすることもあります。いつも仲のいい友達ともちょっとした意見の食い違いでけんかして険悪な状態が続くことがあり、大きなストレスとして抱え込んでしまうことがあります。
また、担任やクラブ活動の顧問の先生との関係が崩れると毎日とても辛い状態が続くことになります。友達との関係では話を聞いて自力で解決できるようにサポートしてあげることが基本となりますが、いじめは別問題なので毅然とした態度で臨むことが大切です。
親の不仲、離婚
子供のストレスは家庭外のことばかりではありません。親は気づいていないのに学校の先生から「最近家で何かありましたか」と問い合わせを受けることもあります。子供にとって親は絶対的な存在であり、仲良くしていることで精神状態が安定するものです。
家の中で親がいつもけんかすることは心理的虐待ともとらえられる子供にはとても辛い状況となります。また、自分の存在を無視されて納得しないままに離婚が成立すると、子供の心には深い傷が刻まれてしまいます。少なくとも子供の目の前で夫婦喧嘩をすることは控えるようにしましょう。
環境の変化
子供の心やデリケートで傷つきやすいものです。特に環境の変化には敏感でそれが原因で体調を崩してしまうことも珍しくありません。親の仕事の都合や新居の完成によって、転校を余儀なくされると子供には大きなストレスとなることがあります。
また幼稚園から小学校、小学校から中学校と人間関係が広がることも大きな環境の変化となり、それがきっかけとなって不登校となることもあります。自分で乗り越えなくてはならない環境の変化もありますが、優しく見守りながら適切にサポートしてあげることが大切です。
兄弟や他人と比較される
子供だけでなく大人でも人と比較されていい気分になる人はいないでしょう。大人はそれほど意識することなく「お兄ちゃんはできたのに」「妹の方がお勉強ができる」と兄弟間で比較するような言葉をかけることがあります。
子供であってもプライドはあるので言い続けられることによってストレスが溜まるだけでなく自尊感情も低下して「自分なんか」という気持ちになってしまいます。また、勉強や運動のことなどで同年代の他の子供と比較されてもとても傷つくということを理解しておきましょう。
子供のストレスをチェックする方法
大人が心療内科などを受診すると問診表と一緒にメンタルチェックリストを記入することがあります。日常生活のなかでストレスやうつの兆候をみつけるのに有効な方法で、自分では意識していなかったことに気づくことも少なくありません。
子供は大人以上にメンタルの状態を自覚することができません。いつも一緒にいる親がストレスのサインを見逃すと不登校や無気力、引きこもりやうつなど、さまざまな深刻な状態に発展する可能性もあります。早い段階で気づくためには、具体的なストレスチェックの方法を理解しておくことが大切です。
口数が乏しくなる
中学生になると思春期に入るため急に口数が少なくなったり、反抗したりすることもあります。成長過程のひとつなので心配はいりませんが、小学生の段階で急に口数が乏しくなってきたら、何らかのサインとして見逃さないようにすることが大切です。
これまで1日の出来事を事細かく話していたのに、話題を振っても「別に」「まあまあ」「特にない」などと会話が弾まなくなってきたら要注意です。どんな話題について話したくないのかさりげなく探ってみることも大切です。それまで好きだったことにさえ興味関心を示さなくなっていたら、少し深刻な状態であると捉えた方がいいでしょう。
イライラ、癇癪が多くなる
特に原因に思い当たることはないのに、子供が急に怒り出したり、叫んだり、イライラしたり、などの状況がみてとれた時も注意が必要です。なかには言語性劣位の子供もおり感情を言葉でうまく伝えられないため癇癪を起こすこともあります。アスペルガー症候群などの発達障害でもそのような状態が認められることがあるため、幼い頃からそのような状態が続くようであれば専門機関への相談も検討した方がいいでしょう。
学校や塾、スポーツクラブなどの成績や友人関係などで悩みがある場合は、外で発散できない分家庭でストレスを爆発していることも考えられます。様子をみながら落ち着いた時を見計らってじっくりと話をきいてあげることが大切です。
食欲の低下
特に病気で体調が悪いわけでもない、ダイエットしているわけでもないのに急に食欲が落ちたら注意が必要です。友達とけんかしたり、スポーツクラブの試合で負けたり、などショックを受けることがあった際に一時的に食欲が落ちることはありますが、その状態が長く続く場合は慢性的なストレスを疑った方がいいでしょう。
深刻な状態になると拒食症で食べさせても吐いたり、極端に食が細くなったり、異食に走ったりすることも考えられます。また、胃腸の不良や疾患があることも考えられるため、しばらく様子をみた後に受診するようにしましょう。
だるそうにしている
肉体的、精神的に疲労が蓄積するような状況にないのに常にだるそうにしている場合は、体に何らかの異常があるかストレスによる慢性的な倦怠感があるかのどちらかと言えるでしょう。ストレスは元気ややる気をそぐものであり、自発的な思考や行動などの面倒なことを避けたがるようになります。
そんな時に子供は親に構われることを疎ましく思うので放っておきたくなるものですが、だるそうな状態を放置したままにすると無気力や不登校などにつながることもあります。好きな場所に連れて行って思い切り気分転換させてあげましょう。
まとめ:子供のストレスと向き合おう
ストレスは大人社会だけの問題ではなく、幼い子供にとっても体や心にさまざまな影響を与えるものです。自律神経や精神面が未熟な子供は、大きなストレスを抱えきれずに壊れてしまうことも考えられます。子供のストレスになる原因を理解しておくこととともに日々、何らかのサインを発していないか気づいてあげることが大切です。
ストレスはその根本原因を取り除くことが最善の解消法ですが、問題によってはそうもいかないこともあります。子供の心に寄り添いながら優しく見守るとともに、ストレスを発散できる場を多く設定してあげましょう。