エリクソンの発達理論とは、人間の成長を8段階に分け、段階ごとの成長具合や、どこで発達がつまずいているのかなどを分かりやすく説明したものです。子育てにおいても大変参考になるもので、保育の現場でも指標として使われています。
エリクソンの発達理論の中でも22歳ごろからは「成人期」といわれる段階に入りますが、その頃の発達課題がクリアできていないのでは? と悩む大人は少なくありません。そこで当記事では、エリクソンの8つの発達段階と、発達課題がクリアできていないときの対処法をご紹介します。
もくじ
エリクソンの「心理社会的発達理論」による8つの発達段階
段階 | 時期 | 要素 | 心理的課題
(ポジティブ VS ネガティブ) |
第1段階 | 乳児期
【0歳~1歳半ごろ】 |
希望 | 基本的信頼
VS 不信 |
第2段階 | 幼児期初期
【1歳半~3歳ごろ】 |
意思 | 自律性
VS 恥・疑惑 |
第3段階 | 幼児期後期
【3~6歳】 |
目的 | 積極性
VS 罪悪感 |
第4段階 | 学童期
【6~13歳ごろ】 |
有能感 | 勤勉性
VS 劣等感 |
第5段階 | 思春期・青年期
【13~22歳ごろ】 |
忠誠心や帰属感 | 同一性(アイデンティティ)の確立
VS 同一性(アイデンティティ)の拡散 |
第6段階 | 成人期初期
【22~40歳ごろ】 |
幸福感・
愛 |
親密性
VS 孤独 |
第7段階 | 成人期後期
【40~65歳半ごろ】 |
世話 | 生殖・世代性
VS 自己没頭 |
第8段階 | 老年期
【65歳~】 |
賢さ | 自己統合
VS 絶望 |
参考
ライフサイクル|武蔵浦和メンタルクリニック
発達課題|Wikipedia
あなたは大丈夫?エリクソンの発達課題は実は大人になってからも続いている!|はぴまむ
発達課題とは、ブリタニカ国際大百科事典によると
人が年齢に応じた発達段階において達成すべき課題。
のことを指します。
当記事でご紹介するエリクソンの「心理社会的発達理論」による8つの発達段階とは、精神分析学者エリク・H・エリクソンが提唱した発達課題の概念です。
エリクソンの「心理社会的発達理論」による発達段階の特徴は、
- 人生を8段階に分けて段階ごとに課題を設定
- その課題が成功(ポジティブ)または不成功(ネガティブ)かで、その人の成長具合を判断する
- 不成功(ネガティブ)より成功(ポジティブ)が勝ると、その段階の要素につながる
- 成功(ポジティブ)だけではなく、不成功(ネガティブ)も体験することで学びを得られる
- 結果的に成功(ポジティブ)が不成功(ネガティブ)よりも勝ることが大切
というものがあります。なかでも、ポジティブとネガティブは常に拮抗している関係で、100%ポジティブであることはあり得ません。常にポジティブとネガティブのバランスが大切で、「ポジティブ>ネガティブ=発達課題クリア」ということになります。
次からはそれぞれの段階について詳しくご紹介します。
乳児期(0歳~1歳半ごろ)
- 導かれる要素:希望
- 心理的課題:基本的信頼 VS不信
0歳~1歳半ごろは乳児期といわれています。この時期の赤ちゃんは自分で身の回りのことを何もできないので、授乳やオムツ替え・着替えなど、生きていくために必要なことは母親や家族などの助けを借りて生きています。
しかしながら、いつも赤ちゃんの理想どおりにお世話をしてもらえるとは限らず、時には周囲の人の対応が遅れることもあります。そのようなときに赤ちゃんは、自分の欲求が満たされないことで「不信感」を抱くようになります。
逆に、母親や家族に世話をしてもらって自分の欲求が満たされると、「他人を信じても大丈夫なのだ」ということを学び、他者や社会に対して「信頼感」を持つようになります。
このことから、乳児期の心理的課題はポジティブな要素である「基本的信頼」とネガティブな要素である「不信」に設定されています。この時期には不信に感じることを経験しつつも、信頼感が勝ったという体験をすることが大切です。
こうして、赤ちゃんはその後の人生において「希望」を感じることができ、人生を生きていく土台を作ることができます。
乳児期初期(1歳半~3歳ごろ)
- 導かれる要素:意思
- 心理的課題:自律性 VS恥や疑惑
この時期の子供は少しずつ言葉を話し始めます。同時に「私がやりたい!」「これは嫌い!」といった自己主張も出てきます。
しかし、子供がやりたいと思ったことがいつもうまくいくわけではありません。失敗をして周囲の大人から注意されたり、怒られたりすることもあるでしょう。
このような、「やりたい!」と思うポジティブな気持ち「自律性」に対して、失敗してしまうかもしれない、怒られるかもしれないといったネガティブな気持ち「恥や疑惑」がこの時期の心理的課題です。
この時期には、子供がやりたい! と思う気持ちを尊重し、積極的にやらせてあげることが大切です。同時にうまくできたときに褒めてあげれば「自分一人でやってできた!」という成功体験を積むことができます。
加えて、失敗したときには「何がいけなかったのか?」の注意を適切に受けることも大切。これにより失敗から気づきを得ることができ、「いつも成功するとは限らない」といった注意深さを学ぶことができます。
時に失敗しながらも成功体験をたくさんすることで、ポジティブな要素である「自律性」が勝る経験をできると良いでしょう。これにより、今後の人生をよりよく生きていこう! と思える「意思」が芽生えます。