ホームエデュケーションは、近代以前からある教育の形で、学校に通わず家をベースに教育を行うことです。ただ、ホームエデュケーションは、学校に行かずにずっと家にいることとは意味が異なります。今回の記事では、ホームエデュケーションの基本的な考え方と海外のホームエデュケーション事情をご紹介します。お子さんに最適な教育を与える選択肢として参考にしてください。
もくじ
ホームエデュケーションとは?
ホームエデュケーションは、家庭を拠点として学習することです。学校と関係が良くないわけではなく、学習方法の選択肢の一つと考えられています。ここでは、ホームエデュケーションの本質と、日本でホームエデュケーションができるかを解説していきます。
本質は、子供中心の学び
ホームエデュケーションは、日本語に直訳すると「家庭教育」です。そのため、家庭でずっと学習している姿をイメージする人もいるかもしれません。しかし、ホームエデュケーションの本質は、「家庭で学ぶ」ということではなく、「子供中心の学び」にあるのです。
学校で、子供の興味に沿って学習を進めようと思うと、時間的制約や人員的制約などがあり、限界があります。しかし、ホームエデュケーションであれば、子供の興味に合わせて一つのことを一日中してもいいですし、博物館や美術館に出かけるのも自由です。つまり、ホームエデュケーションは、子供中心の学びをするために高い自由度を持たせることができるのです。
日本では違法か合法か?
ホームエデュケーションは日本でも取り組むことができます。ホームエデュケーションに関して記した法律は2019年11月時点ではなく、あるのは憲法第26条と教育基本法第4条の記述です。
第二十六条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2.すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
(引用元:1.憲法(第26条)、教育基本法|文部科学省)
義務教育
国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
2.国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。
(引用元:1.憲法(第26条)、教育基本法|文部科学省)
勘違いされやすいのは、「義務教育」の考え方です。義務教育の「義務」とは、子供を持つ保護者が9年間の普通教育を受けさせる「義務」です。子供が学校に行く「義務」ではありません。
ただ、ホームエデュケーションができるのは、子供がそれを希望した場合に限ります。また、日本でホームエデュケーションがどのように認識されているかは、実際にホームエデュケーションに取り組んでいる方のブログを見ると深く読み取れます。
不登校がすでに容認されている日本国内において、ホームスクールが認められない、ということはないということだ。本人が不登校を希望しており、家庭で学習を進める環境が確立できるのであれば、胸を張ってホームスクールを行うことができる。
(引用元:日本でホームスクーリングをするために知っておきたい最低限のコト|ホームスクールジャパン)
なお「ホームスクールジャパン」のブログによると、学校と協力関係を持つことは非常に大切であるとしており、学校と対立関係になることを避ける努力をするべきだとしています。
ホームエデュケーションを考えたらするべきこと
ホームエデュケーションを検討している場合は、「他の選択肢がないか」「教育委員会や学校の理解は得られるか」「ホームエデュケーションに取り組んでいる仲間とつながりを作れるか」という3つのことを考えていきましょう。
さまざまな教育スタイルを検討する
ホームエデュケーションは、学習形態の一つにすぎません。日本では、公立の小学校に通う子供が約98.1%(令和元年速報)で、公立の中学校に通う子供が約91.6%と圧倒的多数ですが、国立、私立の学校も選択肢としてはあります。
また、オルタナティブスクールと呼ばれる、公教育とは全く違った新しい理念・方針を持っている学校もあります。例えば、スクール・ミーティングで児童生徒とスタッフが民主的に学校を運営するサドベリースクールが存在。また、芸術や音楽教育が特徴的なシュタイナー教育、自分が経験したことを作文にする自由作文があるフレネ教育、公教育でも取り入れられる動きがあるイエナプラン教育など、多様な教育手法を取り入れている学校があります。
学校の立地や費用などにもよりますが、ホームエデュケーションと同じ天秤にかけて一度検討する価値はあるでしょう。
参考
令和元年度学校基本調査(速報値)の公表について|文部科学省,p1
教育委員会・学校に相談する
各自治体の教育委員会は住民基本台帳から、子供が居住する地域の学校を指定します。そして、居住する地域の子供の学習状況の把握は、その地域を管轄する教育委員会と学校にあります。
日本の学校制度では、公立小学校に入学しない場合は、教育委員会に届け出る必要があります。ホームエデュケーションの場合は、公立小学校以外の学校に入学するわけではないため、届け出る必要はありませんが、教育委員会や学校とコミュニケーションを取る必要があります。どのような対応になるかは分かりませんが、何もしなければ親の都合による長期欠席とされ、「就学督促」が行われることになります。
また、学校と敵対関係になってもメリットはありません。それよりも、学校が協力してくれる関係を築けた方がいいでしょう。
ホームエデュケーションのネットワークにつながる
「ホームエデュケーション」をネットで検索しても分かるように、日本ではまだまだ実践している家庭は少なく、情報も不足しています。だからこそ、SNSやブログなどを活用して、ホームエデュケーションを行っている方の発信する情報を積極的に取りに行くようにしましょう。家庭の状況や居住地域によって違いはありますが、勉強になることは多いはずです。