割り算の九九っていったい何?最も有名な八算やその他の方法を紹介 - cocoiro(ココイロ)

九九は小学校で覚え、大人になっても実生活の中でも活用できる計算方法です。しかし、九九の割り算のバージョンである「割り算九九」があるのをご存じでしょうか? 今回の記事では、学校では習うことがない割り算九九の内容や歴史的背景、割り算九九の種類をご紹介します。暗唱することができたら、割り算の計算が早くできるようになるかもしれません。

割り算九九の概要

割り算九九には、いくつか種類がありますが、その中でも代表的な「八算(はっさん)」を中心に、内容や活用されていた時代、そろばんとの関係をご紹介します。

割り算九九のやり方

割り算九九の一つである八算をこれから表で紹介します。一の段がないのは、「1」で割っても、答えが変わらないからです。そのため、ここで扱う割り算は二の段から九の段までとなり、「八算」と呼んでいます。計算する方法を4つに分けて見ていきましょう。

(わる数)(わられる数)(天or倍)(作)(商の値)

二の段の「二一天作五」の意味は、文字通り読むと「わる数の2、わられる数の10、わった結果の5」というもので、すなわち「10÷2=5」のことを指しています。文字の並びの法則は、下記の通りです。わりきれる数なので、わる数が2で割り切れる偶数の段で出てきます。

(わられる数)(進)(商の値)(十)

「二進一十」は、「20÷2=10」のことを指しています。ちなみに、「二進も三進もいかない」ということわざは、八算の2でも3でも割り切れないことに由来しているとされています。

(わる数)(わられる数の十の位の値)(加)(下)(あまり)

「六一加下四」は、「10÷6=1あまり4」のことを指しています。10を6で割ると、4あまるということが分かります。

(わる数)(わられる数の十の位の値)(商)(十)(あまり)

「三一三十一」は、「10÷3=3あまり1」のことを指しています。10を3で割ると、3あまり1になることが分かります。

二の段 二一天作五 にいちてんさくのご
二進一十 にしんがいんじゅう
三の段 三一三十一 さんいちさんじゅうのいち
三二六十二 さにろくじゅうのに
三進一十 さんしんがいんじゅう
四の段 四一二十二 しいちにじゅうのに
四二天作五 しにてんさくのご
四三七十二 しさんななじゅうのに
四進一十 よんしんがいんじゅう
五の段 五一加一 ごいちかいち
五二加二 ごにかに
五三加三 ごさんかさん
五四加四 ごしかし
五進一十 ごしんがいんじゅう
六の段 六一加下四 ろくいちかかし
六ニ三十二 ろくにかかに
六三天作五 ろくさんてんさくのご
六四六十四 ろくしろくじゅうのし
六五八十二 ろくごはちじゅうのに
六進一十 ろくしんがいんじゅう
七の段 七一加下三 しちいちかかさん
七二加下六 しちにかかろく
七三四十二 しちさんしじゅうのに
七四五十五 しちしごじゅうのご
七五七十一 しちごななじゅうのいち
七六八十四 しちろくはちじゅうのし
七進一十 ななしんがいんじゅう
八の段 八一加下二 はちいちかかに
八二加下四 はちにかかし
八三加下六 はちさんかかろく
八四天作五 はちしてんさくのご
八五六十二 はちごろくじゅうのに
八六七十四 はちろくしちじゅうのし
八七八十六 はちしちはちじゅうのろく
八進一十 はっしんがいんじゅう
九の段 九一加下一 くいちかかいち
九二加下二 くにかかに
九三加下三 くさんかかさん
九四加下四 くしかかし
九五加下五 くごかかご
九六加下六 くろくかかろく
九七加下七 くしちかかしち
九八加下八 くはちかかはち
九進一十 きゅうしんがいちじゅう

九九|Wikipedia,割算九(割声)|旭速算研究塾 より筆者作成)

割り算九九を習っていた時代

割り算九九は、江戸時代の算術所のベストセラーである『塵劫記』には必ず載っていました。『塵劫記』が出版されたのは、江戸時代の初期に当たります。

『塵劫記』の上巻に乗除の計算が収録されており、中巻・下巻には、田畑の面積計算や川や堀の土木工事に関する問題、碁石で行う遊戯の継子(ままこ)立てなど、ていねいな解説や図説付きの多様な問題が収録されており、和算家だけでなく、民衆にも普及していきました。

また、明治9年発行の冊子「師範学校改正小学教授方法」にも、八算が記載されていました。このことから、江戸時代から明治時代にかけて、割り算九九は広がり、明治初期には割り算九九を小学校で習っていたことが分かります。その後、割り算九九は少しずつ使われなくなり、かけ算九九だけが残っていきました。

参考
第6回―九九は九九でも割り算九九!?|Word-Wise Web

割り算九九とそろばんの関係

日本珠算連盟によると、1570年代ごろの日本風土記に、日本語の算盤の発音が「そおはん」であると記載があります。1592年には、前田利家が陣中でそろばんを使っており、これが日本最古のそろばんとされています。

また、割り算九九は、そろばんを使った計算と相性が良かったことから、そろばんが広がると同時に割り算九九も広がったと言われています。そろばんが本格的に日本で使われ始めたのが16世紀後半で、割り算九九の説明がある『塵劫記』は17世紀前半に出版されていますので、世間に広まった時期もほぼ同じと考えていいでしょう。