割り算九九の種類
割り算九九は、中国から伝わった九帰法が基になっています。割り算九九と相性の良いそろばんも中国から伝わったものですが、日本に伝わることで形を変え、数種類に分かれていきました。ここでは、八算を含めた5つの割り算九九についてご紹介します。
八算
八算は、先ほどご紹介した通り2~9の数字をわる数として割り算を暗算でする方法です。割り算九九の中で、最もスタンダードな計算の仕方です。
見一
そろばんで2桁以上の割り算をするときに用いられる計算方法です。「けんいち」と読みます。
見一無頭作九一 | けんいちむとうさっきゅうのいち | 一を見合わせて、九をつくり、その下桁に一を足す |
見二無頭作九二 | けんにむとうさっきゅうのに | 二を見合わせて、九をつくり、その下桁に二を足す |
見三無頭作九三 | けんさんむとうさっきゅうのさん | 三を見合わせて、九をつくり、その下桁に三を足す |
見四無頭作九四 | けんしむとうさっきゅうのし | 四を見合わせて、九をつくり、その下桁に四を足す |
見五無頭作九五 | けんごむとうさっきゅうのご | 五を見合わせて、九をつくり、その下桁に五を足す |
見六無頭作九六 | けんろくむとうさっきゅうのろく | 六を見合わせて、九をつくり、その下桁に六を足す |
見七無頭作九七 | けんしちむとうさっきゅうのしち | 七を見合わせて、九をつくり、その下桁に七を足す |
見八無頭作九八 | けんはちむとうさっきゅうのはち | 八を見合わせて、九をつくり、その下桁に八を足す |
見九無頭作九九 | けんくむとうさっきゅうのいく | 九を見合わせて、九をつくり、その下桁に九を足す |
(九九|Wikipedia より筆者作成)
唐目十六割
小一斤とも呼ばれる、16で割る場合の割り算九九です。小一斤は16両のことを指しており、主に薬などを計量する際に用いられた重さの単位です。
一引六二五 | いちひくろくにご | 1÷16=0.0625 |
二一二五 | にいちにご | 2÷16=0.125 |
三一八七五 | さんいちはちしちご | 3÷16=0.1875 |
四二五 | しにご | 4÷16=0.25 |
五三一二五 | ごさんいちにご | 5÷16=0.3125 |
六三七五 | ろくさんしちご | 6÷16=0.375 |
七四三七五 | しちしさんしちご | 7÷16=0.4375 |
八作五 | はっさくのご | 8÷16=0.5 |
九五六二五 | くごろくにご | 9÷16=0.5625 |
(九九|Wikipedia より筆者作成)
四十三割・四十四割
43で割る場合の割り算九九と、44で割る場合の割り算九九です。かつて銀の単位が四十三匁であったことと、金の単位が四十四匁であったために普及しました。
【四十三割】
一二加下十四 | いちにかかのじゅうし | 100÷43=2…14 |
二四加下二十八 | にしかかのにじゅうはち | 200÷43=4…28 |
三六加下四十二 | さんろくかかのしじゅうに | 300÷43=6…42 |
四九加下十三 | しくかかのじゅうさん | 400÷43=9…13 |
逢四十三進一十 | しじゅうさんしんいちじゅう | 43÷43=1 |
【四十四割】
一二加下十二 | いちにかかのじゅうに | 100÷44=2…12 |
二四加下二十四 | にしかかのにじゅうし | 200÷44=4…24 |
三六加下三十六 | さんろくかかのさんじゅうろく | 300÷44=6…36 |
四九加下四 | しくかかのし | 400÷44=9…4 |
逢四十四進一十 | しじゅうししんいちじゅう | 44÷44=1 |
(九九|Wikipedia より筆者作成)
まとめ
割り算九九は、江戸時代の単位の計算が現代よりも複雑だったことから、分かりやすくしようと普及した計算方法です。昭和時代ころからは、そろばんでも割り算九九は使われず、その存在を知る人すら少なくなっています。インドでは、かけ算を2桁まで暗記すると言われますが、日本の江戸時代や明治時代を生きた人々は複雑な割り算を暗算ですることができました。忘れられた先人の知恵を思い返して、身につけるのもいいかもしれません。
参考
そろばんの歴史|日本珠算連盟
昔は全部覚えていた! 割り算にも「九九」があるってほんと?|マイナビ
忘れられた八算:「九九」より使われていた割り算版「九九」|考える科学
1 塵劫記|江戸の数学