採用直結型インターンシップ禁止要請の意図
三省による「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」では、インターンシップはあくまで教育プログラムと位置付けています。
学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと
(引用元:2020年度就職・採用活動において特に留意をお願いしたい事項について|文部科学省,P2)
そのため、大学などがインターンシップを教育課程の一環として位置づけることが必要だとしています。教育プログラムであるという視点に立つと、政府の意図が見えてきます。
就職活動の長期化と早期化を防ぐ
意図の一つは、インターンシップが採用と直結することで、学生の就職活動の期間が長期化、早期化することを防ぐというものです。インターンシップの実施時期を学生の長期休暇の時期に合わせることを企業に要請しているように、政府は学生が安心して学業に集中できる環境を作ることを重視しています。
採用直結型のインターンシップが大学1年生や2年生の頃から行われるようになり、大学の正規教科として取り扱われていないインターンシップが増えることで、学生への負担が増えることを懸念しているのがうかがえます。
名ばかりインターンシップの抑制
また、政府は、教育効果を高めるため、大学などと連携の下、可能な限り長期間でのインターンシップの実施を呼びかけています。なぜなら、1DAYインターンシップなど、短期間で行われ、就業体験が伴わず、企業説明会の場になっているものが数多く存在しているからです。
リクルートキャリアの調査によると、企業がインターンシップを実施する期間は1日が最多で、かつ増加傾向にあります。これらの1日だけのインターンシップが採用活動と直結することを抑制したいというのは、学生のことを考えると当然のことなのかもしれません。
(参照元:『就職白書 2019』|リクルートキャリア,P16)
インターンシップの種類ごとの目的と学生側のメリット
では、インターンシップは「学生」にとってどのようなメリットがあるのでしょうか? ここでは、1DAYインターンシップ、短期インターンシップ、長期インターンシップの3つのタイプのインターンシップの実施内容とメリットをご紹介します。
1DAYインターンシップ:会社説明会型
1DAYインターンシップは、1日で完結するインターンシップです。内容は、会社説明会や職場見学、先輩社員との交流、ワークショップなどが多くなっています。「就業体験」というよりは、職場の雰囲気や社風を知るという要素が大きいでしょう。
学生にとっては、短期間で多くの企業の知るきっかけになります。企業理解や業界研究を深めるには役に立ちます。ただ、仕事内容を体験したいと思っている場合は、1DAYインターンシップはおすすめできません。
短期インターンシップ:プロジェクト型
短期インターンシップは、一般的に2日以上1ヶ月未満のインターンシップをさします。1DAYインターンシップに比べると期間が長くなるため、企業理解や仕事理解が深まりやすいです。実施内容は、グループで一つのプロジェクトを進めるようなプロジェクト型が多いようです。
また、株式会社リブセンスとHR総研の共同調査によると、文系・理系共に、最も望ましいインターンシップは「2~3日」となっており、現状では学生のニーズに適した期間のインターンシップと言えるでしょう。
(参照元:HR総研×就活会議:2021年卒学生の就職意識調査結果報告【1】|HR pro)
長期インターンシップ:職業実践型
長期インターンシップは、1ヶ月以上の長期間で行われるインターンシップをさし、長いものだと、半年や1年間行うものもあります。長期インターンシップは、有給であることが多く、働くことや会社のことを深く理解できるのがメリットです。
また、業界や企業へのミスマッチを減らすことができるので、学生にとっても企業にとってもメリットがあると言えるでしょう。場合によっては、インターンシップを続ける中でそのままインターンシップ先に就職するケースもあります。
インターンシップの内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。
https://cocoiro.me/?p=88651&preview=true
まとめ
採用直結型のインターンシップ禁止要請は、インターンシップを教育プログラムの一つとして考え、3つの省が提案しているものです。学生が安心して学業や就職活動に専念できるようにすることが目的でした。この背景を理解すると、インターンシップの位置づけや基本的な考え方が見えてくるのではないでしょうか。
参考
採用直結のインターン、政府も禁止要請へ 21年春入社|朝日新聞
2020年度以降に卒業・修了予定者の就職・採用活動時期について|文部科学省
採用直結型インターン禁止要請とは?人事の声と今後の焦点|採用GO
採用直結のインターンとは?禁止が要請されている意図を紹介|理と利
就活主戦場はインターンへ、採用激戦で学生に報酬50万円企業も|BUSINESS INSIDER
文科省「インターンと採用活動の直結は避けるべき」が波紋|JOBRASS新卒