裁判官になるにはどうするの?仕事内容や必要な資格を解説! - cocoiro career (ココイロ・キャリア)

静まりかえった法廷で「判決を言い渡す」というセリフを裁判官が口にするシーンはドラマでは見慣れた光景です。テレビの裁判官は、悪に正義の裁きを下す法の番人といった雰囲気で、「かっこいい」と憧れを抱く子供もいるでしょう。今回はその裁判官について、仕事の内容やなり方、裁判官に向いている子供の特徴をご紹介したいと思います。

詳しく教えて!裁判官の仕事内容

裁判官の仕事を簡単に説明すると、裁判所に持ち込まれた事件について事実関係を明らかにし、その結果として誰がどのような責任を負うのか、どういう対処を行うのかなどを判断する仕事です。

それではどのような事件が裁判所に持ち込まれるのでしょうか。裁判所に持ち込まれる事件には大きく、民事事件と刑事事件の2種類に分かれます。刑事事件や民事事件とは何か、身近な例で考えてみましょう。

刑事事件とは

例えば、鞄に入れていたお財布を盗まれた、友達に殴られてけがをしたというトラブルに巻き込まれた経験は子供にもあるかもしれません。このような「人のものを盗む」、「人に暴力を振るう」といった行為は「やってはいけないこと」として刑法に定められており、これに違反すると刑事事件になります。刑事事件では、裁判官は「誰がなぜものを盗んだのか」、「誰がどうして暴力をふるったのか」といった事実を明らかにし、犯人がどのような刑罰を受けるのが妥当かを判断します。

民事事件とは

一方、民事事件とはどのようなものでしょうか。「くまのぬいぐるみをA君とB君がお互いに自分のものだと言ってきかない」といったようにお互いの主張が衝突したり、「お菓子を買うためにお金を貸したのに返してくれない」といったように約束が破られたり、人と人の間で生まれた争いを民事事件と定義します。このような場合、例えば「借りた3,000円を返しなさい」、「くまのぬいぐるみはB君のものです」といった最終的な判断を裁判官が下すことになります。

裁判官の仕事はこれだけではありません。例えば、よくテレビドラマで警察官が取り出す「捜査令状」を許可するのも裁判官の仕事です。このように裁判官の仕事は非常に多岐にわたっており、そのため必要となる知識も幅広くなると言えるでしょう。

裁判官になるにはどうすればいいの?

それでは具体的にはどのような方法で裁判官になればいいのでしょうか。裁判官には司法試験を合格してすぐに裁判官になる場合と弁護士を経験してから裁判官になる場合の大きく2つのパターンがあります。

司法試験を合格してすぐに裁判官になる

裁判官になるにはまず司法試験に合格する必要があります。そして、最初の関門である司法試験を受験するためには、大学卒業後に法科大学院に通うか、予備試験と呼ばれる司法試験を受けるための試験を通過しなければなりません。この条件をクリアして初めて、ようやく司法試験を受験することができるようになります。

司法試験は短答式と呼ばれる選択式の試験と記述式の論文試験から構成され、非常に広範囲かつ深い法的知識を問う問題が出題されます。法務省によると2018年の司法試験は受験者5,811人のうち合格者は1,525人だったそうです。これはつまり、法科大学院生や司法試験の予備試験に受かった法律について高い知識を持つ人でも26%程度しか合格できないほど、難しい試験であるということを示しています。

また、裁判官や検事、弁護士といった仕事に就くためには、この司法試験に合格した後、1年間の司法修習を受ける必要があります。司法修習では現役で活用する弁護士、検事、裁判官から実際の実務などを学ぶことができます。司法修習では最後に試験が行われ、これに合格するとついに弁護士や検事、裁判官といった職業に就くことができるようになります。

そして、裁判官を志望する場合は、ここからさらに裁判官になるための審議を受ける必要があります。法務省によると、2017年の司法修習修了生1,563名のうち、裁判官になったのはわずか65名です。裁判官になるのは狭き門であるため、人並み外れた努力が必要と言えるでしょう。

弁護士を経験して裁判官を目指す

司法試験を合格した後そのまま裁判官になるという道を選ぶ人が多いですが、弁護士から裁判官になるという仕組みも用意されています。これを弁護士任官といいます。弁護士任官には非常勤と常勤があり、常勤は普通の裁判官と同じ扱いになります。一方、非常勤は弁護士が週のうち1日だけ裁判官として活動することができる制度です。この弁護士任官という制度を利用すると、一定以上の経験を持つ弁護士は面接などの審査を通過すれば裁判官になることができます。

裁判官になる前に弁護士を経験するというのは少し遠回りに感じてしまうかもしれません。しかし、弁護士という世界を経験してから、裁判官になることでより広い視野をもつことができるという面もあります。これは弁護士任官のメリットであると言えるでしょう。

裁判官に向いているのはどんな子供?

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難しい試験を突破して、責任ある仕事をまっとうする裁判官にはどのような子供が向いているのでしょうか。ここでは4つの特徴をご紹介します。

公正・公平である

「A君とは仲がいいけど、B君は嫌いだからB君に不利な判断をしよう」というような個人の感情を優先する裁判官に、重要な判断を任せることはできません。裁判官はいろいろな主張を聞き、証拠を見て、何が真実なのかを判断しなければならない仕事です。真実を見抜くためには、偏見にとらわれたり、誰かに肩入れしたりせずに、公正・公平な立場で判断できなくてはなりません。

法律に対する興味がある

司法試験に合格するためにはたくさん法律の勉強をする必要があります。また、裁判官になってからも社会情勢に合わせて日々変化する法律に対応するために、常に勉強することが求められます。そのため。法律といったものに興味を示すことができる子供の方が向いていると言えるでしょう。

思いやりがある

人を見下すような人に「裁判官」という重要な仕事を任せたいと思うでしょうか。実際に、司法制度改革審議会の中間報告において国民が求める裁判官像について「法廷で上から人を見下ろすのではなく、訴訟の当事者の話に熱心に耳を傾け、その心情を一生懸命理解しようと努力するような裁判官」という意見が出されました。つまり、国民も国民に寄り添って正しく判断できる、思いやりにあふれた裁判官を期待しているといえるでしょう。

人の話をきちんと聞くことができる

「ねぇねぇ!それより僕の話を聞いてよ!」と途中で友達や先生の話をさえぎって、自分の話を始めてしまうようなことはありませんか。真実を明らかにするために、裁判官はお互いの言い分をきちんと聞く必要があります。つまり、ひとの話をさえぎらずにしっかり聞いて、この人が本当にことを言っているのかほかの事実とも照らし合わせて判断する必要があるのです。そのためには、途中でお話をさえぎらずにしっかりと聞くことができる人の方が向いているでしょう。

まとめ

今回は裁判の仕事内容、なり方、向いている子供についてご紹介しました。裁判官になるには非常にたくさんの努力が必要です。また、人の一生を左右する判断を迫られる非常に責任の重いお仕事でもあります。ただし、その分やりがいもある仕事でもあります。子供が「裁判官になりたい!」という夢を持ったときには全力でサポートしてあげましょう。

参考
裁判官|最高裁判所
新司法修習について|最高裁判所
第9回 法曹養成制度改革連絡協議会資料「司法修習終了者の進路別人数の推移」|法務省
平成30年司法試験の採点結果|法務省
新司法修習について|最高裁判所
司法改革審議会 中間報告|首相官邸
裁判官の仕事|CareerGarden
裁判官|スタディサプリ
弁護士任官|日本弁護士連合会

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kotn

IT業界に在籍する傍ら、副業としてライターとして活動しています。 得意分野はITトレンド、障害者支援、法律や制度関連。