イエナプラン教育「20の原則」〜イタリア・オランダ オルタナティブ教育視察レポート第3回〜

イエナプラン教育「20の原則」

次はイエナプラン教育を見ていきたいと思います。

今回オランダで訪問したのは、以下の2校のイエナプラン小学校です。
■「Jenaplein」

オランダ、ズウォレ市内にあるイエナプラン校。レンガ調の建物と裏庭・中庭のある敷地が特徴的。生徒数は350人ほど。
■「Zonne Wereld」

オランダ、ユトレヒト市内にあるイエナプラン校。建物のうちの3階部分が学校で、その他は市の施設となっている。生徒数は400人ほど。


Zonne Wereld 外観


Jeneplein 外観

それでは、ここからはイエナプランの基本的な考え方や、両校の共通点として見えてきたことを以下にまとめていきたいと思います。

「20の原則」が示す人間・社会・学校のあり方

イエナプラン教育は、ドイツのイエナ大学の教育学教授であったペーター・ペーターゼンが、1924年に同大学の実験校で始めた教育手法のことをさします。

生まれはドイツですが、イエナプラン教育はオランダで大きな発展を遂げました。オランダは憲法で教育の自由を保障しているため、他国の教育手法であっても自由に取り入れることができ、オランダで1960年代に初めてイエナプラン校が設立されて以来急速に普及してきました。現在オランダにある学校(6000校)の うち約10%がオルタナティブ教育を実施しており、そのうち約3割に該当する200校近く(オランダ全体の3%)が、イエナプランを取り入れています。

イエナプラン教育では「20の原則」と呼ばれる指針を基に、学校運営がなされています。20の原則では、まず人間の価値と権利について、また人間の生きていく社会のあり方について、そしてそのような人間や社会をつくっていくための学校のあり方についてのコンセプトが明文化されています。教育がどうあるべきかを、人間と社会のあり方を明確に定めた上で言及している点が非常に優れています。

今回の訪問では二校のイエナプラン校を見学することができましたが、レッジョエミリアと同様に、学校ごとに取り組みが異なること、また20の原則の解釈にも多少の相違があることをご理解いただき、今回紹介する小学校がイエナプランの全てではないことを踏まえた上でお読みいただきたいと思います。

それでは、イエナプランのコンセプトである20の原則を紹介します

(K ・ボットとK ・フロイデンヒル 1992 年/リヒテルズ直子日本語訳)

■人間について

1〜5番の「人間について」では人間の持つ価値と権利について記されています。一人ひとりがユニークな存在であること、そして成長し変化していく権利を持っていること、そして自分以外の存在と関係についての、イエナプランの根底となる考え方です。

1.どんな人も、世界にたった一人しかいない人です。つまり、どの子どももどの大人も一人ひとりがほかの人や物によっては取り換えることのできない、かけがえのない価値を持っています。
2.どの人も自分らしく成長していく権利を持っています。自分らしく成長する、というのは、次のようなことを前提にしています。つまり、誰からも影響を受けずに独立していること、自分自身で自分の頭を使って物事について判断する気持ちを持てること、創造的な態度、人と人との関係について正しいものを求めようとする姿勢です。自分らしく成長して行く権利は、人種や国籍、性別、(同性愛であるとか異性愛であるなどの)その人が持っている性的な傾向、生まれつきの社会的な背景、宗教や信条、または、何らかの障害を持っているかどうかなどによって絶対に左右されるものであってはなりません。
3.どの人も自分らしく成長するためには、次のようなものと、その人だけにしかない特別の関係を持っています。つまり、ほかの人々との関係、自然や文化について実際に感じたり触れたりすることのできるものとの関係、また、感じたり触れたりすることはできないけれども現実であると認めるものとの関係です。
4.どの人も、いつも、その人だけに独特のひとまとまりの人格を持った人間として受け入れられ、できる限りそれに応じて待遇され、話しかけられなければなりません。
5.どの人も文化の担い手として、また、文化の改革者として受け入れられ、できる限りそれに応じて待遇され、話しかけられなければなりません。

■社会について

6〜10番の「社会について」においては、社会のあり方、そしてそのような社会づくりへの参加の必要性が記されています。

6.わたしたちはみな、それぞれの人が持っている、かけがえのない価値を尊重し合う社会をつくっていかなくてはなりません。
7.わたしたちはみな、それぞれの人の固有の性質(アイデンティティ)を伸ばすための場や、そのための刺激が与えられるような社会をつくっていかなくてはなりません。
8.わたしたちはみな、公正と平和と建設性を高めるという立場から、人と人との間の違いやそれぞれの人が成長したり変化したりしていくことを、受け入れる社会をつくっていかなくてはなりません。
9.わたしたちはみな、地球と世界とを大事にし、また、注意深く守っていく社会を作っていかなくてはなりません。
10.わたしたちはみな、自然の恵みや文化の恵みを、未来に生きる人たちのために、責任を持って使うような社会を作っていかなくてはなりません。

■学校について

最後に、11〜20番の「学校について」では学校の役割について記されています。そしてイエナプランの特徴である4つの基本活動や、異年齢学級、ワールドオリエンテーションなど、具体的な学校での取り組みについても言及されています。

11.学びの場(学校)とは、そこに関わっている人たち全てにとって、独立した、しかも共同してつくる組織です。学びの場(学校)は、社会からの影響も受けますが、それと同時に、社会に対しても影響を与えるものです。
12.学びの場(学校)で働く大人たちは、1から10までの原則を子供たちの学びの出発点として仕事をします。
13.学びの場(学校)で教えられる教育の内容は、子供たちが実際に生きている暮らしの世界と、(知識や感情を通じて得られる)経験の世界とから、そしてまた、<人々>と<社会>の発展にとって大切な手段であると考えられる、わたしたちの社会が持っている大切な文化の恵みの中から引き出されます。
14.学びの場(学校)では、教育活動は、教育学的によく考えられた道具を用いて、教育学的によく考えられた環境を用意した上で行います。
15.学びの場(学校)では、教育活動は、対話・遊び・仕事(学習)・催しという4つの基本的な活動が、交互にリズミカルに表れるという形で行います。
16.学びの場(学校)では、子供たちがお互いに学び合ったり助け合ったりすることができるように、年齢や発達の程度の違いのある子供たちを慎重に検討して組み合わせたグループを作ります。
17.学びの場(学校)では、子供が一人でやれる遊びや学習と、グループリーダー(担任教員)が指示したり指導したりする学習とがお互いに補い合うように交互に行われます。グループリーダー(担任教員)が指示したり指導したりする学習は、特に、レベルの向上を目的としています。一人でやる学習でも、グループリーダー(担任教員)から指示や指導を受けて行う学習でも、何よりも、子供自身の学びへの意欲が重要な役割を果たします。
18.学びの場(学校)では、学習の基本である、経験すること、発見すること、探究することなどとともに、ワールドオリエンテーションという活動が中心的な位置を占めます。
19.学びの場(学校)では、子供の行動や成績について評価をする時には、できるだけ、それぞれの子供の成長の過程がどうであるかという観点から、また、それぞれの子供自身と話し合いをするという形で行われます。
20.学びの場(学校)では、何かを変えたりより良いものにしたりする、というのは、常日頃からいつでも続けて行わなければならないことです。そのためには、実際にやってみるということと、それについてよく考えてみることを、いつも交互に繰り返すという態度を持っていなくてはなりません。

第3回ではイエナプランの「20の原則」を紹介しました。第4回では、それを実践している学校の様子をお届けします。

イエナプラン教育を支える仕組み 〜イタリア・オランダ オルタナティブ教育視察レポート第4回〜

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cocoiro編集部

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