最新版・田中ビネー知能検査V(ファイブ)の改善点とは?
田中ビネー式知能検査は何回か改訂が行われ、最新版の田中ビネー式知能検査Vは2003年に最新版として出されました。以前の田中ビネー式知能検査とは何が異なり、どのような点が改善されたのでしょうか?
成人の知能を分析的に測定できる
成人の知能分析は複雑かつ多岐にわたります。そのため従来のように一般知識の質を測るのではなく、得意・不得意が分かるよう分析的に測定できるように改訂されました。
成人の領域は以下の4つに分類されます。
- 結晶性領域
- 流動性領域
- 記憶領域
- 論理推理領域
検査結果も領域ごとの評価点などで表されます。この測定方法を用いることで、知能の特徴を分かりやすく分析できるようになりました。
発達状態をチェックできる項目がある
被検者の発達状態をより分かりやすくする目的で、1歳級以下の子供への指標項目が追加されています。1歳級の問題に取り組むことが難しい場合や発達が遅れている部分についても、目安が分かるようになりました。
子供の変化や時代の動きに対応している
子供は時代に合わせて発達に変化が見られます。1987年の改訂時よりも子供の発達のスピードが増しているといわれているため、現代の子供の得意なところ、苦手なところを調査した試験内容に改訂されました。
生活様式も変化しているため、現代の子供が分かる内容になっています。
検査用具の改訂
図版のカラー化や用具の大型化など、小さい子供が抵抗なく、親しみやすい教材に改訂されました。緊張せずに喜んでこともが取り組める工夫がされており、より実態に近い分析ができるように改訂されています。
アセスメントシートの改訂
知能検査後に行われるケースカンファレンス(検討会議)で使用する際に、より分かりやすくなるよう見開き1ページの様式に変更されました。知能発達の分析に役立つアセスメントシートを採用しています。
知能検査の必要性とは?
田中ビネー式知能検査についてご紹介しましたが、そもそも知能検査がどんな目的で行われ、何に役立てることができるのかをご紹介します。
障がいの有無の判定ではない
知能検査というと、LD・ADHD・高機能自閉症など、子供の障がいがクローズアップされてしまうのではと思いがちですが、知能検査の目的は障害の有無を判定することではありません。
保護者にとっては知能検査の結果が子供の障がいを特定されてしまうという意識が生まれる可能性もありますが、それは違います。子供がどんなことが得意でどんなことが苦手なのか、どこまで発達しどこまで成長しているのかという点を客観的に判断するための手段と考えましょう。
個人内差を知るため
個人内差とは、子供の能力の発達やバランスのことです。個性という枠組みで捉えればいいものなのか、別の形で指導が必要なものなのかを知るために知能検査は行われています。幼稚園や保育園、学校という公共の場に子供が入るときなどに、どのような点に注意すればいいかを確かめる指標になるのです。
最も適切な指導の方向性を考えるため
子供が家庭から何らかの集団(幼稚園・保育園・学校・企業など)へ属するのは、年齢を重ねるにしたがって当たり前になってきます。その中で客観的な実態把握ができていると、支援の方法や指導の方向性を話し合い、周囲が協力し合って支援を行うことができます。学習や生活上でのつまずきを理解してあげることで、より子供の発達段階に合った指導ができるだけではなく、カンファレンスなどで医師・カウンセラーなど専門家の助言を受けることもできます。
単に知能指数を測るためのものではないと理解することが大切です。
まとめ
知能検査というと保護者としては何となく構えてしまいがちですが、漠然とした不安や心配を客観的に判断できる材料と捉えれば、その目的や結果にも納得することができるはずです。
専門家のアドバイスや指導を受けることで、より子供が自分らしく生きることができるようにするための手段と考えましょう。
参考
各障害に関する知識(LD・ADHD・高機能自閉症)主な知能検査とその特徴|国立特別支援教育総合研究所
田中ビネー知能検査とは?田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)の概要、受診方法、費用について紹介します|LITALICO発達ナビ
田中ビネー知能検査| フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
知能検査一覧 | サクセス・ベル株式会社 -心理検査・学力検査・適性検査・箱庭療法・コミュニケーションツール等の販売-
知能検査とは?知能検査の種類、受診方法など|【LITALICO発達ナビ】