高校生を悩ませる課題の1つである読書感想文。「何を書けばいいのか分からない」「文章を書くのが苦手」などと頭を悩ませたり、本のあらすじで原稿用紙を埋めたりしている子供も多いのではないでしょうか。当記事では、高校生向けに読書感想文の書き方とそのコツを例文を交えてご紹介します。
もくじ
読書感想文を書くための本の読み方
ただ本を読んでいきなり読書感想文を書くのは、普段から読書感想文を書いていない限りはなかなか難しいものです。「この本を読んでみたい!」と思わせる読書感想文を書くためには、本の読み方にもコツが必要です。ここでご紹介する2つのコツをぜひ子供に伝えてみてください。
メモを取る
本を読みながらメモを取りましょう。メモ帳やノート、付箋など、自分にとって書きやすく分かりやすいものであれば何でもかまいません。メモを取っておけば、本の内容や読書中に感じたこと、心を動かされた場面などを見直しやすくなります。メモを取るポイントは以下の通りです。
- 内容の要約
- 好きな場面
- 感動したことや共感したこととその理由
- 気になったことなどとその理由
内容の要約をする場合は、著者の言葉をそのまま書き写すのではなく、なるべく自分の言葉で言い換える「パラフレーズ」をしてみましょう。自分の言葉を用いることで、読書感想文の質をより高めることができます。
本に線を引く
自分の本であれば、読みながら本に直接線を引きます。初めて読む本は1度読んだだけではなかなか理解しづらいものです。線を引いて本のポイントを把握しましょう。線を引いておくといいのは以下の5つです。
- 好きなセリフ
- 分からない部分
- 読み返したい場所
- 著者がこの本を通して伝えたいこと
- この本のテーマとなる部分
このほかにも気になる部分があれば線を引きましょう。「好きなセリフは赤」「本のテーマとなる部分は青」などとカラーペンを使って色分けしておけば、後で見返したときに分かりやすいでしょう。疑問符(?)や感嘆符(!)を書き込むのもいいことです。自由に工夫するようアドバイスしてみてください。
高校生の読書感想文の構成
文章を書く上で大切なのは構成を考えることです。構成を考えておけば、文章を書くのが苦手だったり特別な才能がなくても、内容に一貫性のある読書感想文を書くことができます。これから挙げる①〜⑤の項目を埋めていけば、文字数・原稿用紙の枚数ともに過不足なく、内容ある読書感想文を書けるでしょう。
①読書感想文のタイトル
タイトルは読書感想文の内容全体を表す重要な部分です。人に「読んでみたい!」と思わせる印象的なタイトルをつけるのが理想と言えます。内容から大きくかけ離れることなく、簡潔に書きましょう。
タイトルをつけるときは、以下の点を意識するよう子供にアドバイスしてあげてください。
- 『(本のタイトル)』を読んで
- 『(本のタイトル)』から私が得たこと
- 『(本のタイトル)』で感銘したこと
- 『(本のタイトル)』を読んで感じたこと
シンプルに「『(本のタイトル)』を読んで」や「『(本のタイトル)』から私が得たこと」としたり、登場人物の名前や著者名を入れたり、本のテーマを含めたりするのもいいことです。また、タイトルは読書感想文の本文を書き終えてから考えるのも手です。内容とタイトルによりつながりを持たせることができるでしょう。
例文①
『光に向かって100の花束』を読んで
(引用元:金賞『光に向かって100の花束』を読んで|1万年堂出版)
シンプルな題名がつけられています。
例文②
「白磁の人になる」
(引用元:内閣総理大臣賞 第63回高等学校の部 最優秀作品「白磁の人になる」|読書感想文全国コンクール公式サイト)
本のタイトルに自分の思いをつけ足して読書感想文のタイトルとしています。
②この本を読んだ理由・きっかけ
本を読もうと思った理由やきっかけを考えます。「なぜこの本を選んだのか?」「何がきっかけでこの本を読もうと思ったのか?」と問いかけてみてください。「先生に勧められたから」「興味・関心のある分野だから」「今話題の本だから」などが理由として挙がるでしょう。
ただ何となく選んだ場合でも、「本屋でこの本のタイトルが目に留まり、手に取ってみたのがきっかけでした」といったように書き、興味を持ったポイントや、読んでみようと思った点を含めるとうまくまとめられます。
例文①
新しく出版された魅力的な本もたくさんあるが、今年の私をつかんで離さないのが、また『光に向かって100の花束』なのである。
(引用元:金賞『光に向かって100の花束』を読んで|1万年堂出版)
例文②
私はこの本の題名を初めて見た時、純白の磁器という意味の言葉である「白磁」に例えられた人とは、一体どのような人なのだろうと思った。また、「白磁」に込められている意味が何か気になった。
(引用元:内閣総理大臣賞 第63回高等学校の部 最優秀作品「白磁の人になる」|読書感想文全国コンクール公式サイト)
③本のあらすじや内容
読書感想文の読み手が本の内容を知っているとは限りません。そこで主人公の性格や特徴、出来事、そのほかの登場人物などを含め、本のあらすじを書きましょう。あらすじは文字数を稼ぐことができる手段ではありますが、長すぎると本を要約しただけの文になってしまいます。短く簡潔にまとめるようにしましょう。
「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって・どのように」を意識して書くようアドバイスしてあげてください。本の内容から得た印象も書くといいでしょう。あらすじを書くことに苦労しているようであれば、ネット上の本の紹介文や本のあとがき、書評などを参考にすることをおすすめします。
例文
浅川は、朝鮮にいる兄からの手紙の「朝鮮には不思議な温かさのある焼き物があり、それを見ると、無性にお前に会いたくなる。」という言葉に惹かれ、(中略)だが、浅川は、価値が全くないと世間が見向きもしない白磁の美しさに一目ぼれし、白磁の世界にのめりこんでいく。
(引用元:内閣総理大臣賞 第63回高等学校の部 最優秀作品「白磁の人になる」|読書感想文全国コンクール公式サイト)
④特に印象に残っている点とその理由
次に、本を読んで特に印象に残っている点や感銘を受けた点を、その理由とともに2つほどご紹介します。ここは読書感想文の中でも重要なところです。「なぜ印象に残ったのか?」「なぜ感銘を受けたのか?」と問いかけ、読書中に取ったメモや本の線が引いている部分を見返しながら書きましょう。
登場人物のセリフや感動・共感した場面を一部引用したり、自分の意見や経験談、気持ちの変化、実社会の事例などを織り交ぜながら書けば、質が高い読書感想文を書くことができます。
例文①
そんな時には数を数えよと『花束』には書いてある。焼け野原でひとり泣きたくなければ、無用に感情をむき出しにしないように努めなければならない。6年前に習得したはずの落ち着くすべを私は実践できずにいたのだ。
(引用元:金賞『光に向かって100の花束』を読んで|1万年堂出版)
例文②
最も印象に残った言葉がある。浅川の人柄に影響を与えたと考えられ、浅川がまだ幼い頃に祖父に言われた次の言葉である。
(引用元:内閣総理大臣賞 第63回高等学校の部 最優秀作品「白磁の人になる」|読書感想文全国コンクール公式サイト)
⑤本を読んで得たことや今後に生かしたいこと
最後に、この本を読んで得たことを書きましょう。新たについた知識や気づき、本から受けた影響、今後に役立ちそうなことなどを書きます。これからの自分の課題や目標なども含めてまとめましょう。
例文①
相手がわかってくれないと嘆くのではなく、自分から行動を起こすこと。どんな出来事であっても考え方一つで結果は大きく変わってくること。(中略)過去は変えられないが、現在、未来を光に満ち溢れたものにするために。
(引用元:金賞『光に向かって100の花束』を読んで|1万年堂出版)
例文②
偏見や先入観を持たず、誰に対しても分け隔てなく接すれば、きっと信頼される人になれ、自分の心も穏やかになると思う。(中略)そして、浅川のように、見つけた夢を実現するために、辛いことがあってもくじけずに乗り越えたい。
(引用元:内閣総理大臣賞 第63回高等学校の部 最優秀作品「白磁の人になる」|読書感想文全国コンクール公式サイト)
完成度の高い読書感想文を書くためのコツ
読書感想文の完成度を高めるために、書き終えた感想文を読み直しましょう。書いた直後はもちろん、しばらく後にまた読み直すことをおすすめします。違和感のある部分や不十分な箇所などが浮き上がってくるでしょう。誤字・脱字や文法、言葉遣いの誤りも同時に確認します。
また、読み直すときはぜひ音読してみてください。音読して息が続かないようであれば、その文章は長すぎの傾向にあり意味が通じにくくなっている場合が多いものです。
読書感想文は、本をしっかり読むことも重要です。読書の時間を決め、時間をかけて読みましょう。少なくとも3日は時間をかけ、読書に1日、原稿を寝かせるのに1日、完成に1日かけるのが理想です。
まとめ
読書感想文は要約文や意見文、作文とも異るものです。本の内容の一部を自分の経験と比較し、自分との違いや意見を述べ、本を読む前と後の自己の成長が提示されたものは質の高い読書感想文とされます。読書感想文が課題として出され際は、当記事でご紹介した書き方をぜひアドバイスしてあげてください。
参考
読書感想文の書き出しから結論まで!構成必勝ルール|All About 暮らし
高校生の読書感想文の書き方|タイトルのつけ方やコツは?|トレンドインフォメーション
これなら書ける!山本貴光先生に聞いた、読書感想文のコツ|スタディサプリ 進路
読書感想文の書き方と例!高校生からの構成編|雑学サイト エトセトラ
金賞『光に向かって100の花束』を読んで|1万年堂出版
内閣総理大臣賞 第63回高等学校の部 最優秀作品「白磁の人になる」|読書感想文全国コンクール公式サイト